30.11 積分の初歩(定積分と体積)
30.03 , 30.05 を踏まえた高校数学Ⅲの内容です。これで積分の初歩は終わりです。次回からはベクトルの話をします。
面積から体積へ
実数を定義域とする関数$${f(x)}$$があり、区間$${a\leqq x\leqq b}$$において$${f(x)\geqq 0}$$のとき
$${\displaystyle \int_{a}^bf(x)dx}$$
は、関数$${f(x)}$$のグラフと$${x}$$軸および2直線$${x=a, \: x=b}$$で囲まれた部分の面積を表しました。
この式は、囲まれた部分を$${x}$$軸に対して垂直に切断したときの切り口の高さが$${f(x)}$$なので、$${f(x)dx}$$は細かく分割したときの細長い長方形の面積を表し、これらをすべて足し合わせたものを意味していました。
根本となる発想は 面とは線を束ねたものだ ということです。これと同じ発想で 立体とは面が束なったもの と見れば体積を求めることが出来ます。
ノートや辞書は紙が束になったものです。辞書の紙はノートよりも薄い紙ですが、束となって厚い辞書を形成しています。算数で学んだ直方体や柱体の体積も基本はこの発想です。
ある立体の体積を求めたいとき、その立体に軸を1本想定し、軸に対して垂直に切断したときの切り口の面積が関数で表記できるなら、これを$${f(x)}$$として最初の式に当てはめ、定積分で求めることが出来ます。以下、例を通して見てみてみます。
三角錐の体積
例1 三角形ABCを底面とする三角錐O-ABCを考えます。
OA⊥△ABC, ∠BACは直角, OA=5, AB=4, AC=3とするとき、この三角錐の体積を積分で求めてみます。
三角錐の体積は 底面積×高さ×1/3 で求められるので
$${4\cdot 3 \cdot \dfrac{1}{\:2\:}\cdot 5\cdot \dfrac{1}{\:3\:}=10}$$
求める体積は 10 です。
積分で求める
まず軸をどのようにとるかですがOA⊥△ABC なので直線OAを軸とします。これを$${x}$$軸とし、頂点Oを原点とすれば積分区間は$${0\leqq x\leqq 5}$$ととれます。
次に区間$${0\leqq x\leqq 5}$$上の任意の点を$${a}$$とし、これを固定して点$${a}$$を通り$${x}$$軸に垂直に切断した切り口の面積$${S(a)}$$を求めます。
※ 記号$${S(a)}$$について
$${S}$$は面積を意味し、括弧$${a}$$としたのは、切断点$${a}$$によって面積が変わるからです。関数を意識したこのような表現はよく用いられます。(※0)
左図が三角錐O-ABCと$${x}$$軸です。黄色の三角形が点$${a}$$における切り口です。この黄色の面積を$${a}$$で表すには▢と△の長さが分ればいいので、それぞれを右上図、右下図のように捉えます。
▢も△も相似を利用すれば求められますね。
右上図から
$${a:5=▢:4}$$ より $${▢=\dfrac{\:4a\:}{5}.}$$
右下図から
$${a:5=△:3}$$ より $${△=\dfrac{3a}{5}.}$$
よって切り口の面積$${S(a)}$$は
$${S(a)=\dfrac{\:4a\:}{5}\cdot \dfrac{\:3a\:}{5}\cdot \dfrac{\:1\:}{2}=\dfrac{6}{\:25\:}a^2}$$
となります。最初の定積分の式の$${f(x)}$$に相当するのが$${S(x)}$$で
$${S(x)=\dfrac{6}{\:25\:}x^2}$$
です。したがって求めたい体積$${V}$$は次のように表すことが出来ます:
$${V=\displaystyle \int_{0}^5\frac{6}{\:25\:}x^2dx.}$$
これを計算してみます。
$${V=\displaystyle \int_{0}^5\frac{6}{\:25\:}x^2dx=\frac{6}{\:25\:}\Big[\frac{1}{\:3\:}x^3\Big]_{0}^5=\frac{6}{\:25\:}\cdot \frac{1}{\:3\:}\cdot 5^3=10}$$
となり、2つの結果が一致しています。▮
これで分かったことは、積分によって体積が求められそうだということと、面積と同じような考えが使えそうだということです。これを認めて話を続けます。
次は円錐の体積を考えてみます。その前に回転体について話しておきます。
長方形の一辺を中心にくるり回せば円柱が現れます。だから円柱は回転体とも呼ばれます。
一般に、平面上の曲線 (直線も含む) をある直線を中心に回転させて得られる立体を回転体、得られる曲面を回転面、中心となる直線を回転軸、または単に軸、もとの曲線を母線といいます。いま必要なのは回転体と軸だけですがついでに紹介しておきました。母線以外はそのままの呼び名なので、頭の片隅に残ると思います。
円錐の体積(回転体の体積)
例2 半径3の円を底面とする高さ5の直円錐の体積を積分で求めます。
※ 直円錐というのは、小学算数で学んだ円錐のことです。底面の円の中心と頂点を結ぶ線分が、底面の円と垂直でなくても円錐と呼ばれます。ふつうの円錐と区別するために斜円錐と呼ぶこともあります。
なお、体積の公式は変わりません(※1)。注意することは、高さが底面を含む平面に垂線を下ろしたときの長さであることです。
円錐の体積も 底面積×高さ×1/3 で求められるので
$${\pi\cdot 3^2 \cdot 5\cdot \dfrac{1}{\:3\:}=15\pi}$$
求める体積は $${15\pi}$$ です。
積分で求める
座標平面上の原点と点$${(5, 3)}$$を通る直線を$${x}$$軸の周りに1回転させると求めたい円錐が現れます。回転体は柱体よりも考えやすいのですね。
求めたい円錐の体積の積分区間は$${0\leqq x\leqq 5}$$と考えられます。
次に区間$${0\leqq x\leqq 5}$$上の任意の点を$${a}$$とし、これを固定してこの点を通り$${x}$$軸に垂直に切断した切り口の面積$${S(a)}$$を求めます。
黄色の円が点$${a}$$における切断の切り口です。この黄色の面積を$${a}$$で表すには▢の長さが分ればいいので、上半分の三角形に着目したものが右図の△OABです。
相似を利用して
$${a:5=▢:3}$$ より $${▢=\dfrac{3a}{5}.}$$
よって切り口の面積$${S(a)}$$は
$${S(a)=\pi\cdot \Big(\dfrac{\:3a\:}{5}\Big)^2=\dfrac{9}{\:25\:}\pi a^2}$$
となります。最初の定積分の式の$${f(x)}$$に相当するのが$${S(x)}$$で
$${S(x)=\dfrac{9}{\:25\:}\pi x^2}$$
です。したがって求めたい体積$${V}$$は次のように表すことが出来ます:
$${V=\displaystyle \int_{0}^5\dfrac{9}{\:25\:}\pi x^2dx.}$$
これを計算してみます。
$${V=\displaystyle \int_{0}^5\dfrac{9}{\:25\:}\pi x^2dx=\frac{9}{\:25\:}\pi\Big[\frac{1}{\:3\:}x^3\Big]_{0}^5=\frac{9}{\:25\:}\pi\cdot \frac{1}{\:3\:}\cdot 5^3=15\pi}$$
となり、2つの結果が一致しました。▮
この考えを用いると球の体積を求めることが出来ます。
球の体積
例3 半径$${r}$$の球の体積を積分で求めます。
球の体積$${V}$$は $${V=\dfrac{4}{\:3\:}\pi r^3}$$ で、$${r}$$は半径, $${\pi}$$は円周率です。
錐体の 1/3 、球の 4/3 がどこから来たのかは積分によって判明します。錐体については例1, 2でみた通りです。
積分で求める
座標平面上に原点を中心とする半径$${r}$$を描きます。このときの円の方程式は $${x^2+y^2=r^2}$$でしたね。この円を$${x}$$軸の周りに1回転させると求めたい球が現れます。
求めたい球の体積の積分区間は$${-r\leqq x\leqq r}$$です。
次に区間$${-r\leqq x\leqq r}$$上の任意の点を$${a}$$とし、これを固定してこの点を通り$${x}$$軸に垂直に切断した切り口の面積$${S(a)}$$を求めます。
切り口の半径は$${a^2+y^2=r^2}$$を$${y}$$について解くことで得られます。半径を求めたいので$${y>0}$$の下で解きます。$${r}$$が定数であることに注意すると
$${a^2+y^2=r^2 \:\Longrightarrow\: y^2=r^2-a^2 \:\Longrightarrow\: y=\sqrt{r^2-a^2}}$$
となるので、切り口の面積$${S(a)}$$は
$${S(a)=\pi\cdot (\sqrt{r^2-a^2})^2=\pi(r^2-a^2)}$$
となります。最初の定積分の式の$${f(x)}$$に相当するのが$${S(x)}$$で
$${S(x)=\pi(r^2-x^2)}$$
です。したがって求めたい体積$${V}$$は
$${V=\displaystyle \int_{-r}^r\pi(r^2-x^2)dx}$$
を計算して
$${V=\displaystyle \int_{-r}^r\pi(r^2-x^2)dx=\displaystyle 2\pi\int_{0}^r(r^2-x^2)dx}$$ ・・・(♪)
$${=2\pi\Big[r^2x-\dfrac{1}{\:3\:}x^3\Big]_{0}^r=2\pi\big(r^2\cdot r-\dfrac{1}{\:3\:}r^3\big)}$$
$${=2\pi\cdot \dfrac{2}{\:3\:}r^3=\dfrac{4}{\:3\:}\pi r^3}$$
となり、公式と一致しました。▮
注:① (♪)の等号は図形の対称性もしくは偶関数の性質を使いました。
②計算の得意な人は、途中式で「もっと上手く計算できるだろ!」と突っ込んだかもしれませんね。
途中 $${y=\sqrt{r^2-a^2}}$$と求めていますが、点$${x}$$での切り口の半径は$${y}$$なので $${S(x)=\pi y^2}$$とし
$${V=\displaystyle \int_{-r}^r\pi y^2dx=\int_{-r}^r\pi(r^2-x^2)dx}$$
とする方がスマートです。大抵このように説明されますが、こういうのは鈍くさい方が分かりやすいのです。同じようなことを軌跡の話のときにやっています。巧みな計算はすっきりしていますが、分かり難さが伴います。最初は地道に計算するのがいいのです。
③円を描いた図の横に一部を切り取った三角形を描いてありますが、これを用いても切断した切り口の半径を求めることが出来ます。ただし図のように底辺の長さは$${|a|}$$となります。なぜか分かりますか。
区間$${-r\leqq x\leqq r}$$で考えているので$${a}$$がマイナスとなることもあるからです。でも$${|a|^2=a^2}$$によって同じ結果が得られます。▮
代表的ですが、初学者には難しい、次の問題を考えてみてください。
問題
十分な高さのある底面の半径が3の円柱を、下底面の直径を含み、底面との成す角が$${\dfrac{\:\pi\:}{4}}$$となる平面で切断したときの下側の小さい方の立体の体積を求めよ。
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