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15.1 関数とグラフ(名を正す)

「関数がわからない」

というので関数を説明すると、質問の内容は違いました。"関数" は1次関数や2次関数の単元全体を指し、実際は "関数のグラフ" か "方程式とグラフの関係" のようです。
※ 扉絵は解析の基本事項を確認するときに使う本の1冊です。


きちんとした話は 15.3 以降に譲り、ここではかんたんに述べます。
関数は 英語で function なので働きを意味し、グラフのことです。中高で関数というと、"yはxの関数" である場合がほとんどすべてで、yをxの式で表した形で表現されます。そしてxは実数を動くことを想定し、yも実数をとることが前提です。グラフはxとyの関係を座標平面上に図示したものです。ここでいう実数は一般的に認識されている数と考えて問題ありません。その上の複素数を知っている人にも知らない人にも伝わるからです。

〇〇関数というのは、y=(xの式) のときのその式の形に依存します。
xの式が1次式 (y=3x, y=-2x+5 等) なら1次関数、
xの式が2次式 (y=x^2, y=3x^2-x+7 等) なら2次関数、
xの式が3次式 (y=x^3, y=x^3-4x^2+1 等) なら3次関数です。
高校数学Ⅱの範囲ですが同様に、y=(sinx, cosx, tanx の式) なら三角関数、
y=(指数の式) なら指数関数、y=(対数の式) なら対数関数です。


ではなぜ中高生の多くが関数が分からなくなるのでしょうか。

先にも書いたように多くは "関数" でなくグラフ・方程式で混乱しているのです。関数の式と方程式が一緒に扱われる(※0)のも分かりにくい理由だと思いますが、方程式の基本的な解法が身についていないこととグラフが読めないことも影響しています。
1次関数の単元では1次方程式、特に連立方程式が解けないと話になりません。2次関数の単元では2次方程式と連立方程式です(※1)。
グラフを読む基本は棒グラフです。折れ線グラフが読めるなら問題なくグラフは読めます。グラフは小学3, 4年生の知識で十分です。


私はこの他に落とし穴が2つあるとみています。1つは変数と未知数をごっちゃにして扱うところ、もう1つは "関数" の定義です。
指導要領の改訂によって "写像シャゾウ" を教えるか否かが変わります(※2)。現代数学では関数は写像のことで、"関数" という用語が使われているのは慣習です(※3)。写像を意識して教えれば「関数の定義域を求めよ」という不思議な問題はなくなります(※4)。

関数とグラフの延長上には微分積分の話があります。であれば写像を意識した書き方の方が混乱が生じません。きちんと整備された中で話を進める方がむしろ分かりやすいと思います。『数学事始め』はこちらを採用します。▢


※0 多くの場合、関数の式は方程式で表現されます。この話は15.3 以降で書きます。

※1 1次方程式、2次方程式は中学で学ぶ1元1次方程式、2元2次方程式のことで、連立方程式も中2数学の連立2元1次方程式のことです。
〇元というのは未知数(変数)の個数で、2元ならxとyの2種類です。

※2 写像であることを意識して関数を教える方がすっきりすると思っています。中学生は定義域に注意すればいいと思います。高校生では集合を学ぶのだから、このときにもう少していねいに関数 (写像は使わず) を教えればいいと思います。ただし、高校数学では深入りはしない。でも高校数学Bの数列をどう扱うかは悩みますね…関数 (写像) を意識するかどうかです。

※3 関数はライプニッツ(17世紀)から使われていて、数学的に明確になったのはディリクレ(19世紀)の定義によるそうです。現代的な表現で言えば、実数の部分集合から実数への写像を関数と定義したようです。
参考文献:三村征雄 著『微分積分学Ⅰ』(岩波全書)116ページ

AからBへの写像とは、2つの集合A, Bにおいて、任意のAの中のものに対して何らかの約束でBの中のものが唯一つ対応していることです。
部分集合は次回の15.2で紹介します。


※4 大学入試で「関数の定義域を求めよ」を出題するのは考えられません。もしも出題するなら、「yをxの関数とみる場合、定義域をどのように取れるか」になると思います。


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