15.2 関数とグラフ(集合)
関数およびグラフの話を理解するために、集合 について少しだけ話しておきます。少しの用語とよく使う便利な記号の紹介です。
※ 扉絵は集合・位相の知識を確認したいときによく使う本です。
集合は何らかのものの集まりのことで、集合の集合というのは考えないことにします(※0)。これまでも登場し今後も繰り返し使う集合は、正の整数全体(自然数)、有理数全体、実数全体などです。他に偶数全体や素数全体も集合です。数の集合以外にも三角形全体やクラスメイト全体などを考えることもできます。
数の集合に関しては、ℤで整数全体、ℚで有理数全体、ℝで実数全体を表します。一般的に使われているので、大文字かつ太文字で書けば通じます。このように活字のときはℝやRを使います。手書きするときは、Rと書いてから縦線のすぐ横に二重線になるようにもう1本縦に書き入れます(※1)。
集合はある条件をみたす構成員で成り立っていますが、その構成員一つ一つのことを元(※2) といいます。
例えば、整数の構成員は、0, 1, 2, 3, … や-1, -2, -3, … などです。
5は整数の構成員なので、5は整数の元であることを記号で
5∊ℤ(または ℤ∍5)
のように書きます。この記号はたいへん便利です。
数の全体を用いて集合を紹介しましたが、一部分だけを考えることもできます。例えば、1桁の正の偶数全体です。この構成員は 0, 2, 4, 6, 8 だけなので、中括弧{ }を用いて
{0, 2, 4, 6, 8}
のように表現します。これは元が少ないときの表現です。
では 100以下の正の整数のように元が多い場合はどうするかというと
{100以下の正の整数},{ n∊ℤ| 0<n≦100}
もしくは (100以下の正の整数全体)
のように表現されます。いずれも簡易表現で
{ n | n∊ℤ, 0<n≦100}
がオーソドックスな表現です(※3)。実際は簡易表現が用いられることの方が多いと思います。大切なのは第三者に伝わるかどうかだからです。
{ 1, 2, 3, …, 100}
という表現も使われると思いますが、「…」はあいまいな表現であることを忘れないでください。例えば、100以下の奇素数全体は
{ 3, 5, 7, …, 97}
では伝わらないと思います。「…」が 9, 11, 13, … と考えそうです。これを
(♪) { p∊ℤ| 1≦p≦100, 奇素数 }
のように書けばどのような集合であるか伝わりますね。
記号
{ | }
の使い方は、仕切り棒の前には集めたい元を書き、仕切り棒の後ろにはどういう条件で集めたいかと書きます(※4)。なので (♪) は簡易表現です。
最後に集合の含む・含まれるについて触れておきます。
整数全体と実数全体を考えたら、整数は実数の一部なので次のような表現をします:(整数全体)⊂(実数全体)または ℤ⊂ℝ.
他に、{0, 2, 4, 6, 8}⊂ℤ のように表現できます。
全体の一部の集合を部分集合といいます。⊂は逆向きにして使っても構いません。⊂はCを長くしたものよりもUを横にしたものと考えてください。
注:部分集合という場合、全体も部分集合に含まれます。
これは集合のほんの一部の紹介ですが、しばらく困らないと思います。▢
※0 中高の数学で集合の集合を考えることはほとんどありません。あったとしても混乱のない範囲だと思います。何の話か気になるのなら、
「数学者 カントール 悩む」で検索すれば出てくると思います。
※1 数学雑談の動画では、もう何度も書いています。それくらい便利な記号です。太文字表現するときに、短いチョークを横に持って書く数学者を見たことがあります。ついでに言えば、太文字表記は数学者によって異なります。相手に伝わればいいので好みの問題なのです。
※2 ここでは元を使いますが、要素という用語を使うこともあります。どちらを使うかは好みです。いずれも元は element です。
※3 100以下の正の整数全体は
{ n∊ℤ| 1≦n≦100}, { n | n∊ℤ, 1≦n≦100}
でもいいし、文字を変えて
{ m∊ℤ| 1≦m≦100}, { k | k∊ℤ, 1≦k≦100}
と書いても構いません。n を使ったのは、整数や自然数ではnがよく使われるからです。natural number (自然数) の頭文字から来ていると思います。
※4 仕切り棒の代わりにコロン「:」やセミコロン「;」も使われます。どれを使うかは好みです。
如何がでしたか。中高の数学では書かれない内容だと思いますが、数学をするには必要なものです。
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