字幕翻訳家になりたかった私が文芸翻訳を選んだ話
20代の頃の私は、映画が好きすぎてフランス語の字幕翻訳家を目指していた。
翻訳学校に通って、字幕翻訳の基礎を学ぶくらいには本気で。
結局、夢は叶わず…
でも、映画ではなかったけれど翻訳の仕事には携われたし、映画好きであることを認められて有名女優の伝記を翻訳したこともあるので、結果としては悪くないかなと思っている。
それが自分が選んだ道だから。
じゃあ、なぜ字幕翻訳家になることを諦めたのか?
今回のnoteでは、字幕翻訳家から文芸翻訳家になった話をしたいと思う。
字幕翻訳家になるのはかなり狭き門だった
字幕翻訳家をめざしていたものの、最終的に文芸翻訳の道を選んだ理由。
それは字幕翻訳家として仕事をするための営業方法が分からなかったから。
若かったので社会勉強が足りなかったことも大いに起因する。
それに、有名字幕翻訳家のところに弟子入りしたり、翻訳会社に熱心に営業したりしてまで「絶対に字幕の仕事がしたい!」という情熱も足りなかったように思う。
言い訳にしかならないけど、ちょっとだけグチらせて。
当時は本業の仕事をしながら翻訳学校に通い、すでに結婚していたため家事もやっていた。家事はほぼ100%女性の仕事、そんな時代である。時間的な余裕なんてまったくなかった。
今はわからないけれど、当時は本当に狭き門だった。
携帯電話がようやく普及し始めた時代で、パソコンでYahoo!検索できるようになった時期と重なる。
もちろんクラウドソーシングなんてものはない。
だから、字幕翻訳の仕事がしたかったら、自分の足で見つけるしかなかったのだ。
翻訳学校の先生は、字幕翻訳のやり方は教えるけど、仕事は自分で見つけてね、というスタンスだった。
これは憶測でしかないけれども、翻訳学校の字幕担当の先生も、生徒に仕事を紹介するほど余裕がなかったのだろう。
というのも、その後に請け負った文芸翻訳の仕事は、翻訳学校の先生からお声がかかったのよね。
世の中の需要が関係していたのもあるかもしれない。映像翻訳の世界は、まだ黎明期だったんだと思う。
まぁ字幕翻訳の基礎が勉強できたので、それでよし。
勉強さえすれば仕事がくると思っていた、私の考えも甘かった。
そこは自分でも納得している。
字幕翻訳は翻訳スキルだけではできない
今は動画編集もアプリでできるから、字幕のやり方もかなり便利になったんじゃないかと思う。
字幕翻訳には関わっていないので、現在の字幕事情はわからない。
当時はストップウォッチ片手にセリフの秒数をはかり、そこから字幕の文字数を計算する。
そんなアナログなことをやっていた。
文字数を計算したら、翻訳に取りかかる。
この3つが字幕翻訳の絶対ルール。
いや、これが本当に泣けてくるほど難しい。
どの情報を取り込み、なにを削るか。
字数制限があるため、余計なことは訳せない。
なおかつ、ストーリーの流れを止めてはいけない。
重要な情報を選び、違和感を覚えさせずにストーリーを展開させていく。
字幕翻訳家には、語学力や日本語力だけではない特殊能力が求められていたのだ。
字幕翻訳からビジネス翻訳、そして文芸翻訳へ
翻訳学校でドラマや映画の字幕をつける作業は面白かった。勉強するだけだからね。
でも、仕事となれば話は別。
実績もない、コネもない。
営業方法も知らない、字幕の仕事を探す時間もない。
こんな「ないない尽くし」の私に仕事なんてくるわけない。
というわけで、字幕翻訳でなくてもなにか翻訳の仕事をして経験を積もう。
そこから字幕翻訳への道が開けるかもしれない。
そんな淡い期待を抱いて、知り合いの翻訳会社でビジネス翻訳の仕事をした。ありがたいことに、ビジネス翻訳の仕事はひっきりなしにあった。
でも、私には本業があったので柔軟に対応することができない。だから本業を辞めてフリーになった。
そして、いつの間にか自分が楽しいと思える文芸翻訳の道に進んでいた。
その話は、こちらのnoteに詳細を書いてあるので読んでほしい。
上記のnoteにも書いたが、文芸翻訳といってもさまざまなジャンルがある。
いろいろやってみた結果として、自分に合った翻訳の仕事を見つけたのだ。
さらにはライターになり、整理収納アドバイザーとしても活動している。これも私が選んだ道。
人生はつねになにかを選択しなければならない。
でも「選ぶ」という行為は、やったから選べるのであって、なにもしていなければ選択肢さえない。
人生100年時代。これから先も選んでいくことがたくさんあるだろう。
選ぶのは自分。自分が選んできたことに後悔はしたくない。
だから私は何歳になってもチャレンジを続けていく。
〜〜〜完〜〜〜
字幕翻訳といっても、映画寄りの話はアメブロに書いているので、よかったら読んでね。
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