3月18日 短歌の練習と橘さんの焦り

二歳児に読んでやるよと四歳児十年後にも言ってやがれよ
スイッチは店じまいです父を見るな君は母御を怒らせました
湯船にて湯をぶちまける吾子は七つ七回までなら全力でやれ
坂道を登る我が子を見送れる我を見守るどっかのおばば


ブラジルにマリオを飛ばした才人は道徳でたぶん優をとっていた
USJグアムフィリピンオアフ島ガイドブックは今日も増えゆく

☆ ☆ ☆

 桜の咲き始めの歌を集めている。今日は『後拾遺和歌集』。

明けばまづたづねに行かむ山桜こればかりだに人に遅れじ(83 橘元任)

 初句と二句。夜明けにスタートダッシュをかけて人に先んじたいという。花見の宴の一番乗りを目指したか。
 『後拾遺和歌集』ではこの歌より前にいくつか花見の歌が並ぶため、橘元任の歌が咲き始めではない可能性もある。

 4句の「だに」は「せめて~だけでも」の意味だ。ということは、桜一番乗り以外については人に遅れているのだろう。なんだか友人がみんな自分より偉く見えている石川啄木を思い出す。

友がみな我よりえらく見ゆる日よ花を買ひ来て妻としたしむ

 橘元任にも花見に付き合ってくれる酔狂な妻はいたのだろうか。
 いや、野辺の桜を牛車で見に行くならともかく、山桜だ。女性を伴うのは厳しいだろう。それに橘元任は、数寄者・能因法師の子だ。己の孤独なロマンに身を投じた歌だとみたい。

夜が明けたら、まず最初に
誰よりもはやく尋ねにいこう
山桜を
せめてこれだけでも
出遅れることがないようにしよう







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