やばい和歌1 雪量がやばい

ふる雪に 杉の青葉も 埋づもれて しるしも見えず 三輪の山もと
                 (『金葉和歌集』285 皇后宮摂津)
ふる雪で 青青しい杉の葉も すっかり埋まってしまって、
ここがそこだ、という目印も見えないよ ここ、三輪山の山麓で

 雪量がやばい。
 だって杉がすっかり埋もれているんだ。杉は大きいもので、樹高が40〜60mにも及ぶ。それが埋もれるって、積雪量何メートルだっていう。

 「しるしも見えず」で描かれる世界は一面の銀世界。目に引っ掛かりを与える何も、ない。真っ白だ。そこから第五句「三輪の山もと」で場所がようやく示される。何と三輪山、神の蛇が宿る神杉のまします三輪山だ。その山麓にいるというのに、その杉が見えない。豪雪にも程がある。

 白一面。だけど単調な世界にはならない。幻想で杉の青葉が重ねられるからだ。見えない神杉を幻視する。その存在を、脳裏に強烈に焼き付けているからこそだ。

 青を纏う幻想の巨樹。その神威が輝く白の世界。
 やばい。

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