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舞台『D.C.III~ダ・カーポIII~君と旅する時の魔法』その5 演出家合流! 加筆修正編

舞台D.C.IIIの初稿を脱稿した後は、しばし凪のような時間だった。
劇団さんとのオンライン会議を軽くしたのみで、しばらくは演出家さんも別件に関わっていたのかまだ合流していなかったので、僕自身も「あとはお任せなのかな?」みたいな感覚で、当時抱えていた別の企画に集中していた。

この期間中に決めたのは「君と旅する時の魔法」というサブタイトルくらいだ。
CIRCUSさんと話し合い、わかりやすさを重視した日本語のサブタイトルがよいということだったので、このサブタイトルに決めさせてもらった。
主題歌「ダ・カーポIII~キミにささげるあいのマホウ~」のタイトルをもじったというのもあるが、「自分視点の舞台」という部分を強調したわかりやすいタイトルになったんじゃないかと思う。

演出家の市村啓二さんという方が、以前観劇させていただいた『キューティ・ブロンド』で新田恵海さんと共演していた武者真由さんの旦那さんで、新田さんも是非、彼の演出の舞台に立ってみたかったということも、彼女が出演を決意する一因になった、ということを知るのはもうちょっと先の話。

CIRCUSさん経由で「演出の市村さんも交えた打ち合わせをしたい」という打診を受けたのは、初稿脱稿から二ヶ月弱ほどが過ぎた頃。
「舞台D.C.IIIをやります!」という公式発表がなされるちょっと前くらいだったように思う。

この段階では、まだ僕は出演者のことを知らない。
当初から聞いていた新田さん、佐々木未来さん以外に、藤邑鈴香さんも出演オファを受けてくれた、ということは耳にしていたように思うが、サラ役の髙橋麻里さんや葵役の石丸千賀さんのことを知ったのは、皆さんと同じ、発表があってからだった。

多分、誰も予想してなかった舞台化発表の第一報

市村さんは、まず初稿を読み、それからPSP版『D.C.III+~ダ・カーポIII~プラス』をちゃんと全ルート~グランドエンディングまでプレイ、そして再び初稿を読み直した上で、D.C.III初見勢ならではの意見をまとめて打ち合わせに臨んでくれた。

多分、市村さん的にもドキドキだったのではないかと思う。舞台の脚本担当が同じ立場ならともかく、今回は原作ゲームのメインライタなのだ。変更や追加を意見することで、相手側が怒ってしまったら元も子もない。

ただまあ、僕も小劇場に片足を突っ込んでいた身ではあるし、自分のテキストが「目で見ること」に特化した内容であることは自覚していた。それに、市村さんの演出したドリームステージを実際に見ているので、演出サイドからの意見はなるべく取り入れたいと思っていた。

オンラインミーティングでは、市村さんの希望や意見をどうしたら取り入れられるか判断し、設定的に不可能なこと、あるいは脚本的にもここはこのまま通したい部分などを詰めていった。脚本の細かい部分に関して二人で延々と話し合っていたので、多分、オンラインに参加していた他の方々(劇団、CIRCUS、ブシロードの方々)は手持無沙汰だったんじゃないかと思う。すみません。

市村さんからのオーダは細部に及んだが、大まかにまとめると大体次のような感じだった。
・初めて観る方に、よりわかりやすく。
・リッカルートを中軸に据えるのだからリッカさんとのドキドキシーンを増やしたい。
・盛り上がるシーンをもっと盛り上げたい。
あとは、初プレイだからこそ印象に残ったD.C.III本編のシーンをできるだけ作品に盛り込みたいようだった。その演出さんの熱意にどう応えるか、そこを総合的に判断し、僕は加筆修正することにしたわけだ。

市村さんとのオンラインミーティングは数回に及び、脚本が舞台の「稽古用台本初稿」になるまでに結果、第四稿まで改稿した。
こんなことなら、CIRCUSさんにもうちょっと原稿料、もうちょっと色を付けてもらうんだったな、とちょっとだけ後悔したことは秘密であるw

侃々諤々の話し合いの結果、初稿からの主な変更点・追加点は以下の通り。
・冒頭の夢のシーンの前に、ナレーションを追加。
・朝と放課後の間に体育のシーンと耕助によるヒロイン紹介を追加(ここで、原作のシーン「宙を舞う立夏」も再現したい)。
・風見鶏編の冒頭にもモノローグを追加。
・風見鶏編でも、二度目のヒロイン紹介をして天丼的にかぶせる。
・クリスマスパーティでのリッカとのデート部分を拡大。
・日替わりネタ(9ステ分)を追加。
・シャルルと魔女の遭遇シーンの追加。
・最終決戦、もう少しピンチ感を出して盛り上げる。
熱意あるリクエストを受けたので、僕もノリノリで追加パートを書いたように記憶している。

紹介シーンなどは、花道、というかランウェイのあるニッショーホールの特徴なども加味しての決定、というのもある。市村さんは事前に劇場に下見に行っているし、舞台美術担当の松生紘子さんと打ち合わせもしたりしているので、その辺りの意見も取り入れさせてもらった。

以下、簡単な補足。
最初の劇団さんとの話し合いで、衣装の関係もあり耕助は風見鶏編からの登場ということになっていたのだが、市村さんの希望で紹介シーンを書くことに。衣装も、原作の初音島編に習って体育のシーンにするので、体操着だけ用意してもらうことに(すみません)。
風見鶏編突入後、当初は、清隆は寮の自室で目覚め、やってきた耕助&四季の助言を受けて、シェルの使い方を習って姫乃と合流。そこからリッカを捜しにいく流れだったが、紹介パートを入れたいということで、教室で目覚めさせることに変更。この時点でリッカが登場してしまうので、「うつらうつらしていた」というエクスキューズを追加。
ゲーム本編を読み、リッカが風見鶏にやってきた動機付け(ダブルスタンダードの解消)を本作でも強調したいという希望が出たため、デートシーンに追加。ついでにデートシーンでのときめき度もアップ。
日替わりネタのシーンは、最初はリッカがアイスか何かを買って戻ってくるシーンだったのを差し替え(この時点では、サクラハッピーをエンディングで踊ることが決まっていなかったが、新田さん、佐々木さんが踊りたがっているという話をスタッフさんから聞いたので、ネタに盛り込むことに)。
清隆視点縛りということで、同時進行する「美琴パート」以外は全部、清隆の視点で統一していたため、本来はあり得なかった魔女とシャルルの邂逅だが、わかりやすさと盛り上がりの為に、前置きが欲しいということで、追加することに。

ともあれ、こんな感じで脚本は、市村さんの熱意と僕の対応でシーンが盛り盛りになっていった。多少、冗長な掛け合いのカットはしてみたものの、完成した第四稿の改良版(これを稽古初稿とすることに)は、150KB近い超大作にw

ここから稽古に突入し、実際に演出を交えながらカットしていくことになるわけだが、聞いた話では、稽古初日の顔合わせ時の本読み(立たずに台本だけで読み合わせをする)では、ゆったりやったら約三時間の作品になってしまったとか……。

そりゃ演者の方々もビビるよね。
この分量に、この長ゼリ。本当に申し訳ない。

でも、ここから削るって、どうやって……!?


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