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「『怪と鬱』日記」 2021年10月17日(水) あるファンからのメール──愚狂人レポート(30)

味わったことのない深い眠りに就くことができました。
早朝にすっきりと目覚め、スマホの電源を入れました。
三件のメッセージが玲香から入っていました。
内容は「店長にグラスを投げつけたのが面白かった」「ボンベさんが会話をこっそり録音していた。当初警察に通報しようとしてた店長をボンベさんが音声をネタに脅して、諦めさせた」「ボンベさんは今回のオメガ訪問に物凄く満足していた」というものでした。

私は、ふぅ、と息を吐いてから、また布団に入りました。
楽に生きるとは、こういうことをいうのだろうか。身体が軽く感じられると同時に、「もう、何もしないでいい」と思える開放感を味わいました。
私は、店長にグラスを投げつけました。
私はあのような振る舞いができる人間にななれたのです。
ならば、また同じようなことがあれば、誰かにモノを投げつければいい。そうすれば、悪夢を見ないでよく眠れる。
よく眠れたあとに、何かしたかったらすればいいし、したくなかったらしなければいい。
人生とは本来、そうあるべきなのです。

しばらくの間、ベッドの上で今日は何を食べようかと考えてから、夫に「もう戻ってきていいよ、ごめんなさい」とメッセージを送りました。
起きてからはビールをゆっくりと傾けながら、アキラへメールを返したり、ネットサーフィンをしたりしました。

とても、とても静かな一日でした。
夜に夫が帰ってきて、一緒に遅めの夕食を摂りました

そして、久しぶりに寝間着を着て寝ました。
また、よく眠れました。

そんな生活を三週間ほど続ける中、もういろんな事が終わったことを実感しました。
玲香から何度かメッセージがあり、他愛のないやりとりをしました。
A子の話題で花が咲くこともありましたが、それまでの私のように、偏執的に興味を持つことはありませんでした。
これを成長と呼ぶべきなのかどうかは、わかりませんでした。
ただ、怖くなるほど穏やかな日々が続けることができていました。

そんなある日、玲香が私をとあるパーティーに誘いました。

『友達の社長さんが主催するクローズドなパーティーなんだけど、ちゃんとハコ借りてやるって。面白い人いっぱいくるよ。よかったらどう? ボンベさんもA子も来るよ〜』

私は誘いを快諾しました。
みんなで楽しく、ただ楽しくできればいい。

そんな思いでした。

(つづく) 

(30)エンディングテーマ Jürgen Paape"So Weit Wie Noch Nie"


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