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平凡な私がホストになった話④~客引き・スカウト~

私は大学4年の夏の間だけ、歌舞伎町のホストクラブで働いていた。この経験から多くのことを学んだので、忘れないうちに文字として残そうと思う。今回はその4回目、マッチングアプリやナンパでの客引きとスカウトのことを書こうと思う。


客引き

客引きとは、お客を自分の店に呼び込んだり連れてくるという意味で、昨今では、風営法による取り締まりが厳しく、新宿駅周辺での客引き行為は規制されている。そのため、ホストたちは道で声をかけるのではなく、マッチングアプリやナンパなどで知り合ってからお店に誘うことが多い。

私も例に漏れず、マッチングアプリを使ってお店に来てもらうよう努めていた。

マッチングアプリ

アプリで合うことの難しさ

マッチングアプリの世界は弱肉強食で、男性側は女性と出会うことは難しい。ホストとしてマッチングアプリをやるならなおさらだ。それもそのはず、プロフィールに「ホスト」と書いてある男に普通の感覚の人が直接会おうと思う訳がない。

一日に何時間もアプリを触り、ようやく会う約束ができても、ドタキャンされたり急に音信不通になることはざらだった。
「時間返してくれ」とよくムカついていたが、自分も女の子の立場だったら絶対同じことをする。

しかし、何度もドタキャンされたりすることで気づいたこともある。ホストと知りながら会ってくれる人や、普段当たり前のように会ってくれる友人達が、当たり前の存在でないことに気づき、「会ってくれてありがとう」と心から思うようになった。

お店に来てもらうまで

アプリの人と合流できた後は、ホストクラブ近くの居酒屋に入り、しばらく喋った後にお店に誘う。

「出勤しないといけないけどまだ一緒にいたい」などと何かしら理由を付けてお店に誘うが、それを言っているときの気分は完全にマルチ勧誘だ。

しかし、何度もそれを経験するうちに感覚が麻痺してきて、本気でお店に来てほしいと思うようになった。きっとマルチ勧誘する人も本気でそれが良いと思って勧誘するんだろうな。
だとしてもマルチ勧誘はダメ。絶対。

ホストの存在価値

マッチングアプリからお店に来てくれた人の中に、印象的な言葉を言っていた人がいた。

その方はお風呂屋さん(ソープ嬢)として働いていて
「おじさんをイケメンで上書きするためにホストや女性用風俗に行く」
と言っていた。

将来おじさんになる身としては少し複雑だったが、ホストの存在意義に疑問を持っていた私は少し腑に落ちた気がした。
こんな風に上手にホストを使ってくれる人だけだったらいいのにな。

ナンパ

マッチングアプリ以外にも、ナンパからお店に来てもらうよう努めることもあった。新宿駅周辺でのナンパは店が禁止していたが、それ以外の場所ではむしろ推奨された。私は個人的に1人で行ったことはないが、先輩命令でよく戦場に立たされた。

クラブでのナンパ

営業後、深夜25時くらいになると、その日アフターのない下っ端ホスト達は、先輩に無理やり渋谷のクラブに連れていかれる。

クラブ会場に入る前に、各々がコンビニで買ったお酒を一気飲みする。私はナンパが嫌すぎるあまり、ワンカップ大関を飲んでいた。ワンカップ大関は安く酔えるから最高だ。

クラブ会場では何人かと連絡先を交換し、次会うことに繋げる。
ある程度時間が経つと先輩から招集があり、何人と連絡先を交換したかを報告する会が開かれる。

連絡先を交換した子にこの報告会を見られて
「なんだよホストかよ!」
と怒鳴られたこともある。そりゃ怒鳴るよな。

バーベキュー場でのナンパ

バーベキュー場で懇親会が開かれたときも、ナンパを強いられた。

私は一番下っ端だったので、お酒を注いだり肉を焼いたりして一生懸命動いているアピールをしていたが、それも虚しくナンパの戦場に立たされた。

「人数分の女の子を連れてこい」
と言われ、一人で7人くらいの集団に挑み。当たり前のように敗北した。

女の子側も迷惑だし、自分もこんな惨めな思いをして誰も幸せじゃないなと思いながら席に戻っていたら、そんな情けなく敗走する私を見た他のホスト達は大喜びしていた。よかったここに幸せそうな人たちがいて。

スカウト

私の所属していた店は新店舗で、ホストの人数も少なかったため、プレイヤー自らスカウトに行くこともあった。

昼間は原宿などに行き道ゆく人に声を掛け、夜はクラブでナンパのついでにスカウトも行う。私は昼間は大学があると言って免除されていたが、その分クラブは強制参加だった。

スカウトする際

  • 話に応じてくれて時間に余裕がありそうな人

  • 最低限の清潔感がある人

  • 好奇心旺盛そうな人

の条件がそろっている人に声を掛けた。

以前「無職で垢抜けていないバカ」にスカウトは声をかけると書いたが、あながち間違いではなかった。私は結果的に「無職で垢抜けていないバカ」に声をかけていたのだ。ものは言いようすぎる。

さいごに

マッチングアプリやナンパ通して、相手に拒否される経験を沢山積めたのはかなり成長になった。しかし、営業時間以外もホストに時間を費やすことで、大学とアプリ開発の仕事が徐々に疎かになり、スケジュールの厳しさから体調も崩すようになっていた。

次は、完全に心が折れた話と出勤最終日の話を書こうかな。

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