見出し画像

山小屋をつくる

「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」という目的で、8月のカレンダーに「山の日」という祝日が加わったのは最近のこと。
現在、日本には1000万人近くの登山人口がいるらしい。

山に登る理由は、「ピークハント」「道中の景観を楽しむ」「トレーニング」など人それぞれだが、僕にとっては、「山小屋」の存在が大きい。

日本の山小屋のほとんどは、山頂を目指す登山道の途中にある。
登山客は、1日の山行で重くなった足を引きずって、吸い込まれるように山小屋に入る。
そして、つかの間の休息を得て、翌日の登山の続きに向けて英気を養う。

山小屋は、建築という視点でとても興味深い。
立地や構造はもちろん、細かな設備まで、その山特有の風や雲の流れ、雪の積もり方など、四季を通じて過酷な自然環境に耐えられるように考え抜かれている。

それでいて、立ち寄る人の心を癒すように、見晴らしのいい場所に食堂やベンチがあったりする。
僕は大抵、山小屋に着くとそういうベンチを見つけて腰掛けては、その山小屋をつくった人に想いを馳せる。

福島県の安達太良山(あだたらやま)に、「くろがね小屋」という名の山小屋がある。
このくろがね小屋の建設に、祖父が大工として携わったという縁があり、子供の頃からこの山小屋に特別な感情を抱いていた。
現在は休館しているが、改修を施して、2025年ごろに再オープンするそうだ。

自分の理想の山小屋はどんな建築になるだろう――。
そんなことをいつも考えていた。

例えば、建物は完全オフグリット。
汗だくの身体を流すシャワーも、水の循環システムがあれば遠慮なく使える。
断熱や気圧も繊細にコントロールして、外がどんなに悪天候でも、安心して眠れる個室がある。

レストランで出す名物料理は、万人の身体を温めてくれるポトフがいい。
夜更けに明日の天気を語らうときにはウイスキーも相棒に。

そして何より、何日も泊まれるようにしたい。
大好きな人たちや子供たちと、ゆっくり同じ景色を見て過ごしたいのだ。

さて、そんな山小屋をどこにつくろうか。
これまで滞在してきた山小屋でも祖父がつくったくろがね小屋でもない、
ADXの山小屋はどんな姿をしているだろう。
できたら日本だけではなくて、海外にも。

準備は着々と進んでいる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?