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「フロム,ティーンエイジャー」を書き終えて。

こんにちはこんばんは、小谷です。写真は本編と関係ありません。

このところ、書いたり書かなかったり、映画を観たりアニメを観たり、小説読んだりと、それ以外なにもせず、欲望のまま生きています。やばいです。

今回は「フロム,ティーンエイジャー」の完結記録をしていきます。風のように書き散らし、記憶が薄れてしまいかけてる影の薄い作品でしたが、LINEノベルからノベマ!へ移転作業をしていくうちにものすごく愛着が湧きました。本作は制作期間が12月〜2月末まででしたが、実働では2月の1ヶ月間だけでした。基本的に私の制作期間は1ヶ月なんですが、構想にかなり時間を使います。そんな暇がなかったのは12月に遊び、1月に遊び、後半に一気に追い上げて書いたものの途中でやめて書き直したからです。6万字書いた時点で「あ、これ終わらない」と思い、同時に「誰が読むのこれ」と我にかえり、それまでの原稿を捨てることにしました。無謀なことをしました。2月って28日しかないし。

「フロム〜」のプロットができたのは「透明な僕らは〜」の前でした。「透明な」でも話したことなんですが、昨年の2月から親友と連絡が取れなくなったことがきっかけで生まれた作品でもあります。親友と連絡が取れなくなってから、まず最初に考えたのは「私、何かしたかな?」でした。自分の行動を考えて、でもわからなくて、連絡をとるために母校にまで行きましたし、まぁ異常に心配になりました。先生に連絡とってもらい、とりあえず無事の確認は取れました。

そんな背景があって生まれた「フロム,ティーンエイジャー」ですが、初期プロットの段階では、高校時代の親友が突然行方不明になり、彼女を捜すためにタイムスリップするお話でした。そのテンションのままプロットを作り、書いていたのですが、ふと我にかえったんですよね。

「これ、誰が読むの?」

創作者ならわかってくれると思うんですが、作品に自分が登場することがある。それが悪いことではなく、むしろそれは自分が感じてきた「リアル」だからリアリティのあるキャラクターになるし、共感してもらえると思います。

「フロム」は書いているうちに主人公が自分味が強すぎました。そうなると、終わりが見えず、6万字書いてなお折り返しにもたどり着かず、着地点が遠くなってしまい、それなら一旦離れてしまおうと一週間考えました。このまま書き続けるか、頭から書き直すか、別のものを書くか。別に、創作するならコンテストにこだわらなくてもいいんですけど、どうせなら自分の力を試せる場所に置きたいという気持ちもありますし、書籍化はいつだって狙ってます。(コンテストの締め切りは自分をふるい起こす発火剤でもあるのです……)それが今年の1月後半。

「フロム」の原型をもとに書き直すか「21gのひと」をリメイクするかで悩み、最終的にはあみだくじをしました……二択であみだくじしてはいけないと学びました。結果「フロム」を書くことに決まりました。「21gのひと」のリメイクプロットはこの時期に出来上がったので、今冬くらいに書きたいと思います。

ここから先はネタバレになります。ご興味ある方は「フロム,ティーンエイジャー」をぜひご一読ください。

また、改稿したものもありますので、こちらも貼っておきます。タイトルが変わりまして「上書きした世界で、また巡り会えたら」です。

さて、今回は前作にリストラされたキャラクター「真琴」を召喚しなければいけませんでした。主人公、涼香の親友として生まれた子です。

元のプロットでは、この「真琴」は古本屋の娘で、おじいちゃんが引用する偉人の言葉を真似して、変な例えを言うキャラでした。

物語の序盤は、涼香は高校時代から付き合っていた優也から別れを告げられ、友達の郁音は人気バンドのベーシストとして成功しているし、一方の涼香は勤めているレストランでミスの連発だったりと散々でした。そりゃ過去にタイムスリップしたくなるわけです。そんな盛りだくさんな6万字で、タイムリープの一巡目が終わらない。すると、明が出せなくなりました。彼は同級生ではなく、涼香が勤めるレストランの取引先でした。優也と別れたあとに最終的には涼香と付き合う人でした。

結果、この草案はボツにしました。

主人公の視点を高校三年生にしたのは、読む人の顔をきちんと明確にしておきたかったからです。高校生が読んで、共感してもらえたら嬉しいし、大人が読んだら懐かしさを感じて欲しかったから。それができているのかどうかは全くわからないし、手応えはないのですが、そういう思いがありました。

ただ、女子主人公で高校生で、ちょっとスレた生意気な女の子というキャラクターは「はちぼく」の真彩とかぶるのです。そもそも、女の子を主人公にあんまり書いたことがなく、真彩もほぼ初めての試みでした。涼香も真彩も、クラスメイトとわいわいやるタイプじゃないし冷めた性格ですが、書きながら思ったのは、真彩はもともと自分に自信がないタイプで、涼香は怠け者です。もっと言えば、涼香は傍若無人で自己中なんです。真彩の物語が「自信を勝ち取っていく」なら、涼香の物語は「自分を見つめて反省する」です。実は真彩よりも重たいし、ドロドロしてるような気がします。「はちぼく」は私が今までに書いたことがないくらいすっきりとした読後感を求めていたので「フロム」は私が今まで書いていた問題提起型モヤモヤ読後感(長い)の形式を取ることにしました。

涼香の傷は自分でも気づかないくらい些細なもので、それが災いして周囲の人間関係が壊れていきました。誰が悪いとか、そういうのはないんだけど、きっとゼロ番目の涼香は「私が悪いんだ」と自分を責めて壊れてしまったのかもしれません。

寺坂優也は名前の通り、優しい人です。優しすぎて困ります。誰も傷つけたくないから黙っておくタイプで、それは結局誰にも優しくないのかもしれません。ノベマ!本編で涼香がタイムリープしていく中、彼もまた涼香に感化されて変わっていきます。優也が一番化けたのは、やっぱり四章ですね。青春小説っぽいセリフを恥ずかしげもなく言うから、あれを読み返すと笑いたくなります。熱いバスケットマンです。

杉野明は本作で一番のお気に入りキャラクターです。明るくポヤポヤしている男の子なんですが、その実、腹ん中は真っ黒ですね。隙あらば優也のポジションを狙ってます。でも、本当は優也を裏切りたいわけじゃないし、そうして涼香を奪っても幸せになれるとは思ってない。理性と感情が噛み合わないので、どんどん歪んでいきました。彼があまりにも報われないので、最終話はLINEノベル版よりも活躍させてみました。

羽村美咲はぽっと出の割には憎めない可愛いキャラクターになりました。予定になかった子で、名前を与えたのは随分あとになってからです。冒頭から涼香にいい顔はしておらず、あわよくばいじめてやろうと考えていたわけですが、彼女もまた悪人にはなりきれず。優也と涼香のことを認めたいのに認められない、やきもきしている人です。まさか最終話で涼香の友人ポジションに収まるとは、私も最初は思ってませんでした。

青浪高校は比較的自由な校風で、軽音楽部「BreeZe」は校内で絶大な支持を集める名物バンドです。彼らの演奏をいかにどう表現するか、研究するためにYouTubeの「弾いてみた」動画を熱心に視聴しました。私は楽器全般が苦手で、まったくわからないのです。

BreeZeの三人は、キャラクター自体は五年くらい前から存在していました。出すところがなかったので短編で書いてみたのをきっかけに「フロム,ティーンエイジャー」と掛け合わせることにしました。このバンド演奏とタイムリープは映像化したらきっと素敵な映像になるような気がします。そんなお話があればいいのになぁ。

さて、本編の黒幕とも言える右輪こころはもともと「真琴」でした。でも、タイムリープする女の子の名前が「真琴」じゃ困ります。(「これでは某時をかける主人公と同じじゃないか!」)この一大事に気がついたのは、公開予定日の数日前でした。それまでずっと「真琴」で書いてきた原稿を一斉に違う名前に変えなくてはならず、パニックに陥った私は妹に相談しました。妹の案じゃダメなので、結局最後は自分で決めました。突然舞い降りてきた「こころ」という名前。この名前にすると、どこのシーンでもなかなか重たい一文になりそうでした。「こころがいない」とか、まるで涼香の心もなくなったような、右輪こころだけでなく涼香の心情も感じてもらえたらなと思います。

私はとあるシーンに差し掛かると、必ずと言っていいほど泣いてしまう場面があります。初稿段階で泣いた場面は、読み慣れた今ではガッツリ改稿できました。書きながら泣くのは、締め切り間に合わなくて焦ってるときでいい……

LINEノベル版から改稿し、本作は一段と良い作品になったと思います。まず私自身が報われた感じです。2月時点では「不安」しかなかった本作が、今では「自信」です。これは私が好きな作品なので、ぜひ読んでほしいです。移転先のノベマ!で全話無料で読めるので、よろしくお願いします。

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