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アパレル業界の今と未来 | 未来価値考案

*この記事は業界研究のための私的メモのようなものです。


アパレル 冬の時代?

アパレル業界の現況を見ると、
2020年は、アパレル・ファッション業界にとって、例年以上に厳しい環境となっています。

とくにここ最近、大手アパレル企業の破産のニュースが続き、その厳しい事業環境を象徴するかのようです。

2020年5月
レナウンが民事再生を申請:2019年12月決算で約65億円もの赤字
2020年5月
米衣料品大手Jクルー・グループは、破産法の適用を米裁判所に申請
2020年7月
米老舗紳士服ブランド「ブルックス・ブラザーズ」、破産法適用を申請

ここ数年は、服が売れず、「アパレルは冬の時代」とも呼ばれることがあります。さらに、2020年では全世界で外出や旅行が控えられたことで、外着の購入需要が激減してしまったのか。

しかし、「食事」同様、人が生活していく上で、「服を着る」という行為はなくならず、ある一定の需要があるはずです。その分の需要が、ファストファッションに流れているかどうか。


売上高が半分以下となったユニクロ

業界全体での売上金額や販売数量といった統計的なものがあれば、確認できるのですが、ここでは、ユニクロを運営している株式会社ファーストリテイリングの日本国内の月次販売状況を見ると、緊急事態宣言で不要不急の外出自粛があった期間では、

2020年4月:売上高 前年比43.5%、客数 前年比39.4%
2020年5月:売上高 前年比81.9%、客数 前年比68.7%
(Eコマース込みの数値で、実店舗だけの数値ではありません)

と、こちらも大変な状況です。

上数値は、実店舗以外にEコマース込みでの数値ですが、4月次の売上が半分を割っています。ファストファッション含むアパレル全体で、落ち込んでいると推測できます。ちなみに、ユニクロの場合、6月以降は、前年を上回る販売状況に持ち直してきています。

こういう局面では、資金力がないと乗り越えられず、企業の体力が重要となります。冒頭の大手アパレル企業の破産は、そのような企業の体力差が出始めている現象の一つと考えます。今までは、それなりに販売して、なんとか凌ぐことができても、購入需要が急減し、いきなりハードルが高くなり、そのハードルが乗り越えることができなくなった、そういう背景でしょうか。


日本のアパレル業界の栄枯盛衰

今回の社会情勢だけでなく、時代の流れとして、日本のアパレル業界が衰退トレンドに入っていると、見ることもできます。

下の本は、日本のアパレル業界の栄枯盛衰を描いた小説で、戦後日本が経済復活し、それに合う形でアパレル業界が急伸し、海外ブランド物の服が次々と日本に流入していったものの、バブル崩壊とともに、百貨店業態が崩れ、それに依存していた既存アパレル産業も衰退していき、とはいえ、人間が服を着るということはなくならないので、ファストファションに移行していったというような、社会の流れがよく描かれています。

パラダイムシフト的な感じの、大きな社会の変化点にいることを考えると、今後のアパレルが目指すヒントがあるようにも思います。


リサイクル1%未満のアパレル業界

もう一つの視点として、アパレル業界の抱える社会的課題。

循環型社会への提言・変革を進めている、イギリスのエレン・マッカーサー財団が発表されている資料に、こんなデータがあります。

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これによると、
世界全体で相当の量の衣服(用繊維)が毎年生産されていますが、そのうち約7割が焼却・埋立て等の処分がされ、再び衣服としてリサイクルされるのは、1%にも満たないという状況です。そして、新しい衣服(用繊維)のうち、半分がプラスチックが使われていて、石油を活用することになります。

詳細はこちらの報告書をご参照ください。
https://www.ellenmacarthurfoundation.org/assets/downloads/publications/A-New-Textiles-Economy_Full-Report.pdf


この状況は、下のドキュメント映画をみると、よくわかります。



アパレル業界が抱える社会的課題

冒頭で述べたアパレルの売れ残りも、「焼却・埋立て」となりえます。

毎年生産される衣服(用繊維)の7割を「焼却・埋立て」するために、そのコスト(資料によると推定108百万ドル/年間)が発生し、地球温暖化への影響も起こります。また、海洋プラスチック問題にも関連してきています。

そういう点で、現状のアパレル業界は、SDGsはじめ、社会的意識が高まっている時勢において、負の側面が大きくなってきています。


「全商品リサイクル活動」を行うユニクロ

ユニクロを運営している株式会社ファーストリテイリングでは、「全商品リサイクル活動」という、購入後に不要となった衣服を店舗等で回収する取り組みを、2006年から行っています。
時間軸がズレていますが、その数値的なものを拾うと、

・生産量:年間約12億枚(2017年、グループ全体)
・回収点数:9,079万点(2019年8月まで、22の国と地域)

という状況です。
回収点数が過去累計なのか、単年度なのかは不明ですが、仮に単年度だとすると、回収:0.9億枚 ÷ 生産:12億枚 → 回収率:7.5%。

なお、回収した衣類で、利用不可の衣料は、他目的の繊維として再利用し、利用可能な衣料は、難民や被災者へに贈られており、2019年8月までに寄贈点数 3,657万点(72の国と地域)という状況だそうです。

販売した数量全てを回収するまでは行っていませんが、循環型社会に向けた、環境への悪影響や負荷を下げる取り組みが進んでいると言えます。


アパレル業界の未来価値考案 ① :需要量 = 生産量 に向けて

売れ残りが発生することは、言い換えれば需要と供給のミスマッチが起こっていることになります。

アパレル業界の産業構造として、衣服の企画・製造・販売は、分業されているのが一般的です。そして、衣服の企画は、販売する数ヶ月前から始まり、必要な生地等の素材を手配し、縫製等の製造工程を経て、お店に並びます。

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事前に購入側の希望量がわかっていれば、それに合わせて生産するのが理想です。

しかし、上述のように、何ヶ月後の状況を想像した上で、生産計画を立てるので、計画と現実において、世の中の好みの変化・気候の変化などが発生したりして、ブレが生じやすくなります。


 シェアリングエコノミーによる 生産量 < 需要量

旅先で使うレンタカーのように、所有するのではなく使いたいときだけ借りるような「シェアリングエコノミー」の考え方をを持ってくれば、生産量の最小化を図ることができる可能性があります。

たとえば、日本では「aircloset(エアークローゼット)」というサービスが展開されています。

これは、「服を借りて」日常的に利用できるもので、「服を買う」という行為をなくすことができます。

服を買っても、毎日ずっとその服を着ることはないわけで、不稼働時間があります。それならば、その服を共有し合うというのは無駄が少なくなり、アパレル全体の生産量を少なくすることにつながります。

また、このairclosetのサービスは、生産量の適正化という点以外に、服の保管スペースを十分に取れない、日本の住宅事情にもマッチしています。


(つづく)