面接で「採っちゃいけない人を見極める」暇はあるのかを考える

2022年そうそう、採用人事界隈がホットな情報で賑わい、一旦静まったところに、燃えそうなネタを投稿してみる。
自分自身開発メンバーの採用を行っており、かつ back checkという事業の開発の立ち上げやPMをやっているという関係から、主題に関しては考えることが多い。
ここに関しての自分の考えを書いていこうと思う。

この記事で話すこと

  • 「採用選考」そのものの難しさ

  • その難しさを解消するための考え方

  • 選考プロセスのあるべき姿を考える

採用選考は解決しないといけない問題が多い

そもそも採用選考とは何のために行っているかというと、企業と求職者のマッチングのためである。
企業は自社の利益になる人を探すためで、求職者は自分のキャリアや金銭など次の職に求めるものが得られるかどうかを確認するために選考プロセスに参加している。

それぞれのステークホルダーはそれを解決するために「自分がいかに魅力的であるかの説明」と「相手に期待するものが相手にあるかを見極める」をそれぞれ行っている。
主題にあげている「取っちゃいけない人を見極める」ことは、「企業」が主語の「相手に期待するものが相手にあるかを見極める」のうちの重要なごく一部を担っている。
つまり、自分は「取っちゃいけない人を見極める」ことが不要であるという意見を述べるつもりはなく、むしろ採用選考においては必要なプロセスであるというスタンスは表明しておく。

ここでは、企業と求職者のマッチングが3つの理由から難しいことを述べる。

マッチングのパラメータは多すぎる上に定量化しづらい

一般的にマッチングはマッチングに必要なパラメータを総合的に考え、一番最適なものを出すというものである。

それぞれ採用におけるパラメータとしては

  • 採用する側

    • 業界

    • 職種

    • 所属している人

    • 部署のミッションや目標

    • 福利厚生

    • 勤務地

    • 予算、報酬

    • etc...

  • 採用される側

    • スキルセット

    • 資格

    • 法令上のコンプライアンス

    • モチベーション

    • 同僚や上司などとの相性

    • キャリアビジョン

    • 金銭面の条件

    • etc...

など上げるときりがないほどパラメータが多い。かつ、「やりたいことができれば報酬は妥協できる」や「スキルが高ければリモートOK」など、それぞれが独立しているわけではないため、パラメータのチューニングも難しい。

更にいうと、定量化可能なものもあるが、「モチベーション」や「相性」など意思決定に重要なものの多くは定量化することが難しく、かつ客観的に評価することが難しいものも含まれている。

いわゆるECでよく見る「あなたはこういうのに興味がありそう」というものも、一定の購買活動を通じて洗練されるものであるが、転職や就職はめったにあるイベントではないため、その情報も蓄積しづらい

何かしらのロジックを設けることで機械的に算出することができるかもしれないが、そもそものものとして難しいというのが、採用におけるマッチングの難しさである。

パラメータは企業求職者ともに時間によって変化するものである

更に、上記のパラメータは時間とともに変化する。
例えば転職活動をし始めのときは、さほどキャリアに対しての解像度が高くなかったが、様々な企業と面談することを通じて「あ、自分はこういうことをしていきたいのか」という発見を得ることがある。たった数週間、数ヶ月でも人は変わりうる。

また企業も(特にベンチャー企業は)様々な不確実性と日々対峙している。企業によっては戦略の見直しが四半期ごとに発生したり、そうでなくても人の出入りによって組織の文化が変わるということも往々にしてある事象なのかなと思う。

さらに言えば、採用する企業にとっては、採用される人がいないときに考えた戦略で動いているわけで、採用される人が入ったら企業側も採用された人も互いにFitするように働きかけるはずであり、そうなると現在や過去の情報で仮にマッチングを行えたとしてもそれが入社後も適応されるかというとそうではない。

採用競合の都合から時間的制約がある

候補者は転職するときに1社だけを受けるわけではなく、複数社同時に受けることが普通である。

仮にパラメータが何かしらのロジックで算出でき、採用も過去と現在の情報でマッチングができるとしても、それを検証する時間が長いと他の採用企業の採用が決定してしまうリスクが有るため、採用に力を入れている企業はリードタイムをとても大事にしている。

採用したい人であればあるほど他の企業も魅力的な人であることが多いので、いかに早く意思決定をするかが非常に大事になってくる。

面接という限られた時間では解決しきれない

今まで書いたような制約があるため、企業は

  • 限られた時間で

  • 不確定要素の多い情報を元に

意思決定しなければならない。
更に「企業が見極める」ということだけをしていても候補者の応募意欲が上がらなければ決定には至らないので「魅力を伝える」ということもしなければならない。

一般的に面接は1時間で調整されることが多い中で、ただでさえ人を評価するというのが難しいのにも関わらず、魅力づけをしながら見極めることができるのだろうか。

上述の通り、面接回数を増やすとリードタイムが伸びてしまうため、回数を増やすという解決策は取れない。効率的に解決する手段 が求められるのかなと思う。

見極めるものを過去と将来に分けて考える

ここで、今まで上げたものを過去(今も含む)と将来に分けてみる。

  • 過去

    • 企業

      • 今までの沿革

      • 今の組織構造とそうなった背景

      • 創業当初の思い

      • 今の福利厚生

      • 今までとってきた戦略

      • etc...

    • 候補者

      • 今までの職務経歴

      • 現在のスキル

      • 保有している資格

      • 今までモチベーションが上がったこと

      • 今までの働き方

      • 法令上コンプライアンス的に問題ないか

      • etc..

  • 将来

    • 企業

      • これからの事業戦略

      • これからの組織

      • 候補者が入った後のチーム状態

      • etc...

    • 候補者

      • 次の職場でのキャリアプラン

      • これから得られるスキル

      • 次の職場でモチベーションになること

      • これからの働き方

      • etc..

それぞれのトピックには大小の差はあれど、下記のような特徴があると思う

  • 過去

    • 客観的事実

    • いつその情報を取得しても変わらない

    • 企業、候補者がめぐりあう前から確定していたもの

  • 将来

    • 主観的な解釈

    • 今の情報が最も正確であり、将来的に変わりうる

    • 企業、候補者の関わり方いかんでいかようにも変わるもの

このようなパラメータが持つ特性に基づいて、「面接でしかできないこと」を考えてみる。

同期的に行う「面接」でしかできないこと

面接は互いの時間を拘束し、基本的に口頭のやりとりによって行われる同期的な選考プロセスである。

互いの時間を拘束するには互いの予定の都合をつけなければならず、構造上どうしても面接の実施までに時間がかかってしまう。
一方で双方向のコミュニケーションができるので、一方的な情報伝達では伝えられない、「互いに歩み寄ることによって得られる情報」を取得することができる選考プロセスと捉えられるかと思う。

前述の「過去」と「将来」の情報で分けたパラメータで考えると、過去の情報は客観的事実であるため一方的な情報の伝達で基本的には充分なはずであり、将来の情報は双方の関わり方によって如何様にも変わるので、面接でしかやり取りできない情報と考えられる。

つまり、リードタイムという非常に貴重な資源を毀損してでも執り行われる面接というものは、将来の情報を双方に取得することに100%時間を割けることが理想で、そうではないものはなるべく面接外で取得できることが理想だと考えられるかなと思う。

非同期にできることは非同期に行い、面接でしかできないことにフォーカスしよう

そうしたときに、どのようにしてその他の情報を非同期に取得すればいいのだろうか。
例えば候補者側のパラメータで言えば下記のように分類することができるかなと思う

  • 今までの職務経歴

  • 保有している資格

    • →職務経歴書、履歴書

  • 現在のスキル

    • →スキルテスト

  • 今までモチベーションが上がったこと

  • 今までの働き方

    • →本人の応募意思

    • →リファレンスチェックのような第三者からの客観的評価

  • 法令上コンプライアンス的に問題ないか

    • →信用調査など

これらは現存するサービスや選考プロセスの見直しにより、非同期に取得することが可能な状況になっている。こういったサービスを利用した上で、面接でしか取得できない情報に注力することが理想だと考える。

面接という場で

  • 見極め目的のピリピリした質問を投げかけてストレス耐性を見る

  • 過去の情報を深堀りし、過去実績から活躍できるかどうかを見抜く

というのは辞め、

  • 社会にとってどういう価値を提供していきたいか、それを企業側、候補者それぞれどのように寄り添えば実現できるか

  • 互いのやりたいことを表明しあい、互いの課題を認識しあった上でどうやって背中を預けられるか

を確認する場に面接を持っていくことが、結果双方にとって理想の選考となり、最終的にミスマッチも減っていくのではないかと考える

例) ROXX Devの採用フローとその意味づけ

ではどういう採用プロセスがいいのかというところで、まだ手探りなところはあるが、現状ROXXのエンジニアの採用は下記の様に行っている

  1. カジュアル面談(同期的)

    1. 徹底的に弊社の魅力を伝える場

    2. 基本的にこちらの情報を伝えることを主目的とし、見極め要素はなくしている

  2. スキルテスト(非同期的)

    1. 1w期日で完了できるお題を提示

    2. 時間があるときにコミットしてもらい、GitHubにpushしてもらう

    3. コードを書くときの思考プロセスを確認することを主目的とし、思考力を確認する

  3. リファレンスチェック(非同期的)

    1. 4daysの期日でback checkを依頼

    2. 「最も自分の功績を評価してくれる人」に依頼してもらうようにしている

    3. 過去の候補者の情報(強み弱みなど含め)を客観的な情報で取得することを目的としている。

  4. 2次面接(場合によりスキップ)(同期的)

    1. 候補者の上司となる人との面接

    2. 上司としてのマッチングを確認する

  5. 最終面接

    1. CTOの自分が面接する

    2. スキルテストやリファレンスの内容を踏まえ「より将来をどうやって作っていこうか」や「良いコードを書くにはどうすればよいか」をざっくばらんに議論する

    3. 議論の過程で双方のベクトルを確認することを主目的としている。

過去実績としてはカジュアル面談から最終面接後のオファーまで 1週間で完了したケースもあり、選考の質を落とさずリードタイムを短縮する事ができている採用プロセスかなと思っている。

まとめ

今回は採用選考の難しさと、採用で確認する情報の特性、それを踏まえた面接のあるべき姿を考えてみた。

今自分がPMを行っているback checkではそういった採用に寄与する非同期的な選考を実現するサービスを提供しているので、もし興味があればお問い合わせいただけると嬉しいです。

Meetyも開設してみました。ざっくばらんにお話しましょう。

また、back checkは全方面で採用を行っています。ちょっと興味がある、話聞いてみたいなどあればぜひお声がけください。

ビジネス系採用
https://herp.careers/v1/scouter/requisition-groups/84f19902-b53e-4349-a881-6ef26ee186b5

開発系採用
https://herp.careers/v1/scouter/requisition-groups/29e05866-7937-49e3-baed-9fee536e9ed7

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