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仕事のブレークスルーを生む「ピポット」の考え方

20代の転職回数が多いほど、天職に巡り会える?

20代のうちに転職を繰り返した人は、30代、40代になってから高収入を得ることができる――。全米経済研究所の研究によると、キャリアの早い時期に頻繁に転職をすることで、自分に合った「天職」が見つかる確率が上がり、働き盛りの時期に収入がアップするようです。

またスタンフォード大学経営大学院の経済学者Edward Lazearが15年以上の仕事経験を持つ人たちを調査したところ、経験した役職が2つ以下だった場合、CxOクラスの役職に入る確率は2%でしたが、経験した役職が5つ以上だった場合、CxOクラスの役職に入る確率は18%にも登りました。

「石の上にも3年」という言葉がある日本においては、一度経験した職業において、たゆまぬ努力を重ね、成果を出していく。という考えが一般的です。

しかし、人気マンガ『左利きのエレン』の著者かっぴー氏は、代理店勤務のサラリーマン時代には全く成果が残せず、漫画家に転身したことで出せる成果が変わったといいます。かっぴー氏はそのことを「出る大会を間違えていた」と表現します。

真摯に努力していて頑張っているのになかなか成果が上げられない人は、もしかしたら“出る大会”を間違えている可能性がある、ということです。
(中略)
代理店でサラリーマンをしていたときは本当に成果が出なかった。
6年在籍したのですが、ずっと自分が駄目で努力が足りないからだと思っていました。それはもちろん事実なんですが、かといって必ずしも劣っているわけではありません。“自分が出た大会”では結果を出せなかったけど、他の道を見つけることができました。
「会社員がダメなら独立してもダメ」は本当か。 仕事選択で向き合うべき「集中力の質」の正体

わたしが全く売れない営業マンだったころ

私自身、10年以上前に営業パーソンとしてキャリアをスタートさせましたが、最初の数年間は驚くほど売れませんでした。

いわゆる赤字社員の状態で、毎年の年末に年を越すのが本当に嫌だったほど。「今年も売れなかったけど、来年に入っても売れないよな・・それでも私は出社する意味があるのだろうか?」と思いながら、年末年始を過ごしていました。

しかし、営業パーソンとしてあまりにも売れなかったことで転機が訪れます。

このままだとキャリアが詰むな・・と思った私は、マーケティング担当へのジョブチェンジを当時の上長に打診します。具体的には、BtoBマーケティングに関するオウンドメディアを立ち上げて、編集長として事業の認知拡大と見込み客の獲得にコミットしたい、と申し出ました。

今でこそ、企業がコンテンツを発信するのが当たり前になりましたが、2010年前後はそんなことはなく、コンテンツを発信している企業はごく少数でした。

そして、営業としてはあれほど売れなかったのに、オウンドメディアの編集長としてコンテンツは書いた記事は一本目からバズることができ、その後、様々なカンファレンスで登壇の機会をいただいたり、寄稿・取材の依頼をいただき、事業の認知拡大と見込み客の獲得に貢献することができました。

それ以来、「コンテンツの作成・発信」の観点では、特に産みの苦しみや停滞期もなく、楽しく続けることができています。

営業パーソン時代、成果を出すために100の努力をしていたのが、コンテンツメーカーになってからは、成果を出すために必要な努力が1ぐらいになった感覚。しかも、以前よりも大きな成果を上げることができるようになりました。

ピポットによって、出す成果を変える

スタートアップや新規事業開発の世界では「ピポット」という概念があります。

立ち上げたビジネスを成功させるために「ピポット」と呼ばれる、事業や戦略の方向転換を繰り返し、PMF(Product Market Fit:顧客を満足させる製品を、正しい市場に提供している状態)やスケールを目指します。

シリコンバレーから生まれた650社のスタートアップを研究した「Startup Genome Report」によると、アイデアやビジネスを一度か二度ピポットしたスタートアップは2.5倍の資金を調達することができ、3.6倍の会員成長率があり、そしてスケールで失敗する確率が52%低いようです。

仕事においても、いま望んだ結果が出ていない場合は思い切って「ピポット」して、出る大会を変えてみるとブレイクスルーのきっかけになるかもしれません。

以降では仕事で使える、具体的な「ピポット」の例をご紹介します。

①仕事のやり方をピポットする
まず真っ先に思いつくのは自分の仕事のやり方を変えることです(=もっと頑張る、気合を入れ直す、ではなく)。

テニスや囲碁、将棋のようなルールが決まっていて、そのルールが長い間変更されない領域では教科書が存在します。そのため、まずは基礎となる教科書で全体を把握し、それを要素分解して、一つ一つに取り組むことが有効です。

一方、ビジネスの世界ではルールが固定化されておらず、教科書にあたるものが存在しません。

こうした教科書が存在しない領域では、最高の成果を上げている人に共通するスキルを見極め、彼ら・彼女らの発言、思考、行動、感情を完璧に真似る方法が上達の近道になります。

3万人を指導してきた営業コンサルタントの方が執筆された『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』の中で紹介されているエピソードがわかりやすいです。

調子に乗った私は、大学生のとき、テレアポのアルバイトに応募しました。初日、とりあえず朝から夕方までずっとコールしていましたが、結果は0件でした。困った私は、ふと壁を眺めました。壁に貼ってあるグラフを見ると、圧倒的なアポ獲得件数を上げているアルバイトが三人いました。棒グラフが誇らしげに、大きく上に伸びています。

ちょうどそこに、件数トップの人が、マジックでグラフを書き足しに来ました。翌朝、そのトップの人を見つけると、隣りに座り、電話をかけるふりをして、横でトークを聴いてみました。「なるほど、こうやってアポを取るのか!!」ランチ後、私はそれとなく席を移動し、トップの人をそっくりまねしてコールしてみました。結果、アポが取れました。翌日、今度は件数2位の人の隣りに行って、同じように、電話をかけるふりをして、午前中はずっと横でトークを聴きました。午後はもちろん、席を替えて、「まねっこトーク」です。1位の人と2位の人、少しやり方が違っていたので、両方のアプローチをかわるがわる試してみました。さらに、アポの件数が増えました。その翌日、今度は3位の人の横に行って、同じことをしました。

②意識の向け先をピポットする
仕事のやり方に関連して、個人的にオススメしたいのが、意識の向け先を語ることです。

DeNA創業者の南場さんがある講演で「ことに向かう姿勢」と話されていますが、他人や自分にベクトルを向けるのではなく、チームや自分の目標にベクトルを向けると仕事がうまくいく、という話です。

「人や自分に向かわずに、コトに向かう」。(中略)、誰についていくとか、誰に評価されるとか、あるいは自分ができる、できない、もう少し成長していかないといけないのではないか。そういうことに意識を向けるんではなくて、純粋はチームの目標や自分の目標に向かって、それに本当に集中してみると、すごく充実した人生が送れるんじゃないかと思います。

DeNA南場智子さんの講演「ことに向かう力」がいい話だった【全文】

以前、ベクトルを過度に自分に向けて仕事をしてしまうと、本来持っているパフォーマンスを発揮できない、という話を書きました。

十分な鍛錬を積み、精一杯努力しているのに、なぜか良いアウトプットが出せない・・・という人は「自分に向いすぎずに、仕事に向かう。コトに向かう」姿勢を意識してみると良いかもしれません。

③職種をピポットする
3つ目のピポットは、職種を変える方法です。私が営業からマーケターになったことで、キャリアの道がひらけた話は既に書きましたが、職種を変えることで、今までと同じか、それ以下の努力で、いままで出せなかったパフォーマンスを発揮できるかもしれません。

一例として、私が過去の職場で一緒だった某M氏は、営業職として働いていた時は全く活躍していませんでしたが、その後、YouTuberになり大成功しています。営業職からコンテンツメーカーに職種を変えたことで、パフォーマンスが最大化した事例です。

④役職をピポットする
③の職種のピポットと近いですが、職種がマネージャーや経営層になったり、逆に経営層やマネージャーから現場メンバーになり、役職が変わることでパフォーマンスが上がるケースもあります。

「名選手必ずしも名監督にあらず」など、役職が変わることで逆にパフォーマンスが下がるケースもありますが、私の知人の某氏は、上司や先輩が辞めて半ば偶発的に自身の役職が上がった結果、マネージャーとして大きな成果を残しました。

リーダーが向いている人、参謀が向いている人、現場で手を動かすのが向いている人など、役職によっても、その人が発揮できるパフォーマンスは変わってくるでしょう。

⑤職場をピポットする
次は転職して、会社を変えてしまうアプローチです。同じ業種・業界でも会社によって、社風は違い、社内で何が評価されやすいか?は異なります。

私はBtoBマーケティングの支援会社を経営していますが、同じ業種・業界の会社でも営業が評価されやすい会社とマーケターが評価されやすい会社があります。同じ職種のままでも、別の会社に転職することで、一気に仕事のブレイクスルーを達成できるかもしれません。

⑥チームをピポットする
次は、一緒に働くチームを変える選択肢です。

いま発揮している成果は、自分自身の能力や努力の結果だ、と思いたくなりますが、仕事のパフォーマンスは一緒に仕事をするチームメンバーによっても規定されます。

ハーバード・ビジネス・スクールのBoris Groysberg教授の興味深い研究があります。ウォール街の投資銀行で働く1,000人以上の花形アナリストが転職した後の様子を調査したところ、別の会社に移った後の5年間は転職前より低い成績になったようです。一方でチームごと転職した場合、花形アナリストの成績は落ちませんでした。花形アナリストが転職しても成績が落ちなかったり、むしろ上昇したケースはほぼ例外なく、 チームメンバーと一緒に移籍していました。

いま仕事で成果を出せている人は、一緒に働いている人たちに感謝し、いま仕事で成果を出せていない人は、チームを移るか、いまのチームの人たちとの人間関係・協力関係を見直すと良いかもしれません。

ピポットの成功・失敗の測り方

上記で6つほど、仕事におけるピポットの方法を紹介しましたが、最後にピポットが成功したかを測る方法をご紹介します。

①業績目標の達成率
 一番わかりやすいのは会社やチームの目標からブレイクダウンされた、自身の業務目標の達成度合いでしょう。当然、自分にフィットした仕事をできているほど、目標達成は容易になります。

②リピート率
もうひとつは、ある仕事を繰り返し依頼されるか?です。フリーランスや業務委託の人であれば、クライアント企業から何度も仕事を依頼されることですし、正社員や契約社員であれば、社内の人から繰り返し仕事を任される状態です。

③顧客の喜びの声
3つ目は、定性的な喜びの声をどれぐらいもらえているか?です。顧客、外部パートナー、社内からの感謝の声をもらえる頻度が高いものは、自分に向いている仕事かもしれません。

④NPSアンケート
最後は、少し勇気がいりますが、一緒に仕事をする人たちにNPS(ネットプロモータースコア)のアンケートに回答してもらう方法です。私の知り合いに月末になるとNPSアンケートを送って来る人がいますが、自分の仕事に対する評価を客観的に知れる良い方法でしょう。

※NPS:ある企業の商品やサービスを『友人や同僚に薦める可能性はどのくらいあるか?』という質問を通じて、顧客との関係性の強さを定量化しようとするもの

最後に

先日、たまたまサイバーエージェントの日高副社長が登壇したイベントレポートを読んでいて、今の仕事で成果が出ていなかったことが、逆に、人生の転換点になっていたと知りました。

まずその時は23歳だったので。捨てるものはないし、当時仕事もうまくいってなかったというか、自分でそういう状況を打破するきっかけを探していたということも、たぶんあったであろうし。
出典:藤田晋社長と二人三脚で歩んだ成功と失敗
サイバーエージェント日高副社長がネット広告黎明期の辛酸の日々を語る

「いまの業務で成果を出せていないことが、次の大きな飛躍のキッカケになると思うと、人生何があるかわからないな・・」と月並みな感想を抱きましたが、もっと頑張る、気合を入れ直すだけでなく、「ピポット」の考え方で仕事のやり方や取り組む仕事自体を変えると、思わぬブレークスルーがあるかもしれない、という話でした。

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