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その男、御曹司につき 第3話

 帰宅ラッシュで渋滞した道を20分ほど走り、連れて行かれたのは、市内では指折りの老舗ホテルだった。泊まったことはないが、地元のテレビ番組では何度か見たことがある。  洗練されたラグジュアリーな空間は、テレビで見たときの何十倍も、建物も調度品もキラキラと輝いて見えた。  遼一のペースに合わせて速足でロビーを突っ切り、エントランスの手前にあるエレベーターホールからガラス張りのエレベーターで最上階まで上がる。入り口に立っていたギャルソンは遼一を見るなり深々と頭を下げ、名前も聞かず

    • その男、御曹司につき 第2話

        「は〜。しかし、二十二歳で一億のマンションなぁ。俺には百回生まれ変わっても絶対無理だわ」  受付カウンターの隣の席で、鈴木さんが溜め息混じりの愚痴を零した。遼一とその婚約者が帰った後から、ずっとこの調子だ。 遼一は、俺が思っていた以上に、今回の分譲マンションの購入を以前から検討していたようだった。 『このマンションは立地、構造、セキュリティ、間取り、全て俺の希望を満たしている。施工責任者から直接話も聞いたし、自分でも竣工図を確認して、既に購入の意思は固めている』

      • その男、御曹司につき 第1話

        あらすじ 大学卒業後、地元岡山の不動産会社に就職した宮里薫は、マンション部門のモデルルームへと配属された。仕事にもようやく慣れた頃、高校の同級生で大手建設会社の御曹司でもある前田遼一が婚約者連れで来店する。薫と遼一は高校三年生の一年間、親友と言えるほど仲が良かったが、卒業後は疎遠になっていた。  遼一に食事に誘われ、慣れない高級酒に酔った薫は、翌朝、遼一の部屋で目覚める。しかもどうやら、酔っている間にとんでもない約束をしてしまったようで……!?  執着系御曹司×平凡善良庶民の

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