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仏Voodooに5億ユーロで買収された若年層向けSNS「BeReal」。

フランスのゲーム企業Voodooが、"盛らないSNS"として若者に人気の「BeReal」を手掛けるBeReal社を5億ユーロ(約844億円)で買収した。Voodooは、BeRealに追加投資をしながら、自社のプラットフォームや製品戦略の専門知識を提供し、BeRealの成長を加速させる方針だ。


BeRealのユニークな機能とその魅力

BeRealの最大の特徴は、1日1回、アプリから不定期なタイミングで通知が届き、通知から2分以内に写真を撮影・投稿するというユニークなルールだ。写真はスマートフォンの外側と内側のカメラで同時に撮影されるため、その瞬間のリアルな自分の姿と風景が残される。 インスタグラムのようなフィルターや加工はできず、通知のタイミングや制限時間の厳しさから「映え」を狙うのは難しい。 投稿が遅れると何分遅れたかが表示されるため、リアルさが保たれる仕組みになっている。 1日1回の投稿制限により、他のSNSと比べて長時間の利用リスクは低い。

GenZ、Gen αに人気の新SNS台頭

BeRealに代表されるように、Z世代やα世代をターゲットにした新しいSNSが次々と登場している。BeRealは2020年にフランスでリリースされ、特に日本、アメリカ、フランスのZ世代から人気を集めている。LINEリサーチの調査では、BeRealは将来流行りそうなSNSアプリの第4位にランクインした。 渋谷109 lab.のトレンドアワードのコンテンツ部門でも、人気アニメ「推しの子」に次ぐ2位の人気を獲得している。 さらにRECCOO株式会社が行ったZ世代150人へのアンケートでは、49%がBeRealを利用していると回答し、TikTokの50%とほぼ同等の利用率を示した。BeRealの特徴は、1日1回ランダムなタイミングで通知が来て、通知から2分以内に写真を撮影・投稿するというルールだ。 写真の加工はできず、通知のタイミングも制限時間も厳しいため、「盛れる」「映える」写真は狙えない。 投稿が遅れると何分遅れたかが表示されるため、リアルさが保たれる仕組みになっている。このようにBeRealは、インスタグラムやX(旧Twitter)など既存のSNSとは一線を画す特徴を持っている。 Z世代やα世代の間で、加工された非現実的な自己表現に疲れが見られる中、等身大の自分を気軽にシェアできるBeRealが支持を集めているのだ。BeRealの成功は、若い世代のSNSに対するニーズの変化を示唆している。「盛れる」「映える」ことよりも、リアルな日常や素の自分を共有することに価値を見出す傾向が強まっているのかもしれない。BeRealに続く新たなSNSの登場にも注目が集まる。

Voodooの買収戦略とその背景

Voodooは近年、積極的な買収戦略を展開している。2020年には、世界最大のハイパーカジュアルゲームパブリッシャーとして知られるVoodooのダウンロード数は、5月時点でApp StoreとGoogle Play合わせて7億回に達し、前年同期比42.8%増を記録した。今回のBeReal買収は、Voodooが消費者向けアプリへの多角化をさらに加速させることを目的としている。 Voodooは、「Helix Jump」や「Mob Control」、「Block Jam 3D」、「Wizz」といった代表的なモバイルアプリの構築と成長における10年の経験を生かし、BeRealの製品開発とユーザー成長の支援に乗り出す。Voodooは過去10年間、子会社化や株式取得を通じて、世界中のゲームIPの獲得に注力してきた。買収先は主に欧米と日韓の企業で、モバイルゲーム、PCゲーム、ゲーム関連技術など幅広い分野に及ぶ。 2019年11月までに100社以上のゲーム会社に投資しており、「リーグ・オブ・レジェンド」の開発元Riot Games、「クラッシュ・オブ・クラン」のSupercell、「アサシンクリード」のUbisoftなど、世界的ヒットタイトルの開発会社が多数含まれる。今年に入ってからは、ヨーロッパでのゲーム会社買収を活発化。1月にノルウェーのFuncomに買収オファー、2月にドイツのYagerの株式の一部を取得した。 そして今回のBeReal買収により、Voodooはゲーム以外の消費者向けアプリ市場への本格参入を果たすことになる。若者を中心に急成長するBeRealを傘下に収めることで、Voodooは次世代ユーザー層の取り込みを図る狙いがある。BeRealの4,000万人を超えるユーザーベースと高いアクティブ率を活用し、Voodoo自身のプラットフォームの強化につなげていく方針だ。

BeRealの新CEOと今後の展望

VoodooによるBeReal買収に伴い、BeRealの経営体制にも変更が生じる。現在Voodooの子会社であるWizzでCEOを務めるAymeric Rofféが、BeRealの新CEOに就任することが決定した。Roffé氏は、Wizzで培った運営経験と専門知識を活かし、BeRealの更なる成長を目指す。「Voodooのリソースと専門知識は、BeRealが持続可能な成長軌道に乗るのを助け、あなたが本当に大切に思っている人々とのつながりを維持できる本物の世界を創造するという使命を果たし続けます」と、抱負を語っている。一方、BeRealの創設者兼CEOのAlexis Barreyat氏は、当面はRoffé氏やVoodooの経営陣と共にBeRealに関与し、その後は新製品開発へと移行する予定だ。Voodooは、BeRealに対して製品戦略やインフラの強化など、様々な面でサポートを提供する方針を示している。BeRealの4,000万人を超えるユーザーベースを最大限に活用しながら、オーガニック及び有料のマーケティングを通じて更なる成長を目指す。

Voodoo CEOのAlexandre Yazdi氏は、「私たちは、両チームを結びつけ、Voodooのノウハウと差別化されたテクノロジーを活用し、BeRealを本物のための象徴的なソーシャルネットワークに成長させることを大変うれしく思っています」と、BeRealの将来性に期待を寄せている。新体制の下、BeRealがどのような進化を遂げるのか注目される。Voodooの豊富なリソースを活用することで、新機能の開発やユーザー体験の向上が加速するだろう。Z世代に支持される"盛らないSNS"として、BeRealが更なる存在感を示していくことが期待される。

新興SNSの台頭と特徴

BeRealの成功を受けて、類似のコンセプトを持つ新しいSNSサービスが続々と登場している。今後の成長が期待される主なサービスは以下の通りだ。

  • Threads(アメリカ):Facebookやインスタグラムを運営するメタ社が2023年7月にリリースした、X(旧Twitter)に似た仕様のSNS。 テキストは500文字まで、画像は10枚まで、動画は5分まで無料で投稿可能。インスタグラムからの簡単な登録が特徴で、女性ユーザーが多い。

  • Bluesky(アメリカ):X(旧Twitter)の共同創業者ジャック・ドーシー氏が開発したSNS。分散型のオープンソースプロトコル「AT Protocol」を採用し、ユーザーがサーバーを自由に選べるのが特徴。 2023年5月に一般公開され、すでに100万人以上のユーザーを獲得している。

  • Spill(アメリカ):2022年11月にローンチされた、Z世代向けの新しいテキストベースSNS。匿名で気軽に「スピル(吐き出す)」ことをコンセプトに、24時間で投稿が消える仕様になっている。 すでに300万人以上のアクティブユーザーを抱える。

  • Locket(アメリカ):写真共有に特化した親密なSNS。ウィジェット機能を使って、ホーム画面上で親しい友人とライブ写真をシェアできる。 2022年1月のリリース以来、急速にユーザー数を伸ばしている。

  • TapNow(日本):日本で開発された新興のSNS。動画と写真の共有に特化し、シンプルなインターフェースでユーザーに使いやすさを提供。特に日本市場での人気が高まっている。

これらのサービスに共通するのは、既存のメジャーなSNSに対するアンチテーゼとして、よりプライベートで親密なコミュニケーションを重視している点だ。リアルな日常や等身大の自分をシェアすることに価値を見出すZ世代やα世代のニーズを的確に捉えている。BeRealをはじめとするこうした新しいSNSの台頭は、ソーシャルメディア市場の新たなトレンドを示唆している。今後もユーザー目線に立った革新的なサービスが次々と生まれ、若者の心を掴んでいくことだろう。


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