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書評 176 「増えるものたちの進化生物学」

「人はなぜ生きているんだろう」
この疑問を哲学的な視点ではなく、自然科学の方法で論理立てて説明を試みた、と著者は冒頭に語る。

生物と岩石などの無生物との違いは、増えるかどうか。当たり前過ぎて考えたことがなかったが、なるほどとしか言いようが無い。この増えるという機能を最大効率化するために、生物は様々な機能を生み出し、強化してきた。
本書の半分以上はその進化の歴史が解説されていて、そこから人間の進化するための戦略と機能に展開していく。

人間の特性は生殖細胞の増加機能に過ぎない身体に高い知能が生まれ、その身体自体に価値を見出すようになったこと。そして、科学技術の発展により、進化とは別の方法で増える方法を人間は見つけつつあると言う。そこからの結論は、必ずしも種としての特性に従わなくても良いのでは、との主張。この問題提起が同種の書にはあまり見られない、本書の最大の特徴だ。

人間とは何か。一つの答をくれる一冊。


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