書評 67 「教えないスキル」
若くしてサッカー指導者を目指してスペインに渡った著者。アジア人で女性ということで差別的待遇を経験しながらも実績で対抗して、トップクラブの中にしっかりポジションを得た。そんな半生記にもなっている。
一貫して書かれているのは、教え込むのではなくて引き出すことの価値。今の時代、メンタルコーチングでは王道とされていることではあるが、技術や戦術のコーチングではできていなかったことを認識し、考え方を大きく変えて挑戦していった過程が語られる。本人だけでなく、チーム全体が舵を切ることで選手たちも変わっていく、と。
驚かされるのは、コーチのコーチという存在。技術・戦術コーチたちの思考方法を変える。選手たちとの接し方、話し方からアクションの取り方までをコーチたちに指導する「コーチたちのコーチ」。これが欧州ではとうに当たり前の存在になっている。
スポーツコーチングの世界、いまのスタンダードを知る一助となる一冊。
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