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【動画有り】[癒やし]と[超絶技巧] ~アナタの知らないクラリネットの世界
クラリネットといえば日本人的には、童謡として歌われる「クラリネットをこわしちゃった」を真っ先に思い出す方も多いかもしれません。
なんとなく温和なイメージを持たれがちなクラリネットですが、実は――というか当然ではありますが――とんでもなくレンジの広い表現力を持つ楽器なんです。
今回はそのレンジの広さを体感してもらうために、対極に位置する「静」と「動」――「癒し系」と「超絶技巧」の極限を追求したようなクラリネットのための音楽とプレーヤーをご紹介してみたいと思います。まずは驚天動地の「超絶技巧編(プレーヤー)」から!
――[超絶技巧編]クラリネットってこんな楽器だったっけ? Σ(・∀・;)
1)マテ・ベカヴァック(スロヴェニア)
⇒ 1:40から、派手な展開となっていきます。
何年も前から度々インターネット上で話題になっているため、ご覧になっている方も多いかもしれません。ベカヴァックによる「カルメン幻想曲」です。
ビゼーが作曲したオペラ「カルメン」の名旋律を、サラサーテがヴァイオリン用に華やかなメドレーに仕立て直したこの作品。ベカヴァックは、更に手をいれ、驚天動地のとんでもないパフォーマンスを披露しています。百聞は一見にしかず、是非聴いてみてください。
2)マルティン・フレスト(スウェーデン)
フレストは、いま世界で最も脂が乗っているクラリネット奏者のひとりでしょう。近年、来日公演やその模様を収録したテレビなどを通して、日本での知名度も(クラシック音楽業界内限定ではありますが……)高くなりました。彼のアンコールピースのひとつ「レッツ・ビー・ハッピー」をお聴きいただきましょう。流麗なイメージの強いクラリネットから、まるでジャズのサックスのようなアクの強いサウンドを引き出すことも出来るんです!
なお、この「レッツ・ビー・ハッピー」はユダヤ人の伝統音楽のひとつ、クレズマーというジャンルの音楽です。最近は、美人チェリストの新倉瞳さん等、クラシック音楽の音楽家でもクレズマーに取り組む人が増えてきました。日本では、あまちゃんの劇中音楽としても登場したので覚えていらっしゃる方もいるかもしれませんね。
3)カリ・クリーク(フィンランド)
⇒ 5:00過ぎから演奏がはじまります。
今度は現代音楽(※ざっくり言えば、20世紀後半以降に書かれたクラシック音楽のこと)の超絶技巧を聴いてみましょう。現代音楽といっても、美しいハーモニーとクールなオーケストレーションによる音楽なのでご安心を。
ここで演奏されているM.リンドベルイ:クラリネット協奏曲は、このカリ・クリークのために作曲された作品です(このリンドベルイのクラリネット協奏曲を全編聴きたい方はコチラ)。動画で聴けるのは、主にカデンツァ(無伴奏のソロ)部分。
実は私、この曲の日本初演を聴きに行ったのですが、もう一生忘れないほどの衝撃を得ました。なんですか、このカリ・クリークって人はっ!? 人間業とは思えぬ、表現力の幅や安定した技巧、聴いたこともないようなクラリネットのサウンドにひたすらブッたまげたのでした。是非、お聴きください!
……スゴい演奏が続き、ちょっと耳が疲れたと思うので、今度は反対に「癒し系」の方向を掘り下げてみましょう。今度は演奏者ではなく、作品を中心にご紹介します。
――[癒し系編]BGMとして聴くも良し、弱音表現による極限の美…(*´ω`*)
1)フィンジ作曲:5つのバガテルより「2. ロマンス」「3. キャロル」「4. フォルラーナ」
(※レコード会社から発売されている音源なので、YouTubeではなくSpotifyにリンクを張っております。以下、同様。)
クラリネット奏者には有名な作曲家……つまりクラリネット吹き以外にはあまり知られていないイギリスの作曲家ジェラルド・フィンジの作品です。オリジナルはピアノ伴奏ですが、こちらは管弦楽伴奏にアレンジされたバージョンです。
フィンジという作曲家は、とにかく内向的な音楽を書くことに長けていた人物。クラリネットの弱音表現をこれでもかというほど、活かした極限の美を繰り広げます。
2)ライヒ作曲:ニューヨーク・カウンターポイント
今度は雰囲気を変えて、テクノなどのクラブミュージックにも大きな影響をあたえた巨匠スティーヴ・ライヒのミニマル・ミュージックです。
この「ニューヨーク・カウンターポイント」は、事前に自分で10回クラリネットを重ねた録音にあわせて演奏するという一風変わった趣向の作品。クラリネットの柔らかな部分だけでなく、どことなくクールなサウンドを活かした名曲です。
なお、本作の姉妹作に、ギターのための「エレクトリック・カウンターポイント」があり、ジャズやフュージョンのギタリスト、パット・メセニーのために書かれています。
最後は、2016年に亡くなった北欧の作曲家エイノユハニ・ラウタヴァーラのクラリネット協奏曲。クラリネット奏者にもあまり知られていない作品かもしれませんが、少ない音数で静謐な世界が描かれる第2楽章はこれまた絶美としか表現しようがない音楽です。
ちなみにラウタヴァーラの作品には「鳥とオーケストラのための協奏曲」という珍しい作品もあります。こちらも自然美を見事に描いた作品ですので、ご興味あれば是非聴いてみてください。
――本当はもっと紹介したい奏者や作品が……
……というわけで、厳選して「超絶技巧編」と「癒し系編」、それぞれ3つずつピックアップしてみました。
個人的なことをいうと、ジャズクラリネットのベニー・グッドマンと、ウディー・ハーマンが委嘱や初演をした20世紀半ばの作品に素晴らしい作品が沢山ありますし、それこそジャズのエリック・ドルフィーやらベニー・モウピン等など、まだまだご紹介したい気持ちはありつつも、本日はこのへんで。
クラリネットという楽器の魅力に、ひとりでも多くの方が開眼しますように!
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