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ヤるかヤラないか問題〜中3ver.

中3になり、アケミとはクラスが離れてしまったが、幸いなことにアケミはミッちゃん&岩田くんと同じクラスになっていた。アケミは持ち前の明るさとコミュニケーション能力で、すぐ岩田くんらと仲良くなり、一緒につるんでいたミッちゃんの情報を聞き出しては随時私に教えてくれた。
ミッちゃんは、実力と圧倒的人望で男子バスケ部のキャプテンになった。ミッちゃんのユニフォームは4番、淳一が5番、チョコを捨てた武田くんが6番だった。この3人は中2からずっとスタメンだった。

一方ダブルゆうちゃん友達にもう1人テニス部の裕子が加わり、なんとトリプルゆうこ&小雪&私の5人グループでクラスがスタートした。

当時、今でいうところの学校内カーストのてっぺんは、直美ちゃんや裕子が所属するテニス部女子、ミッちゃんや淳一が所属するバスケ部男子が“一軍メンバー″と呼ばれていた。

一軍メンバーは、どうやら一軍メンバー同士で付き合ったり別れたりしているらしい。

トリプルゆうちゃんメンバーwith小雪&私の5人のうち、3人が“彼氏持ち″になっていた。クラスが離れたアケミも当然“彼氏持ち″で相手は高校生だった。

みんないつの間に…同級生なら何となくわかるけれど、いつ、どこで、どんなタイミングで?しかも高校生とどこで知り合うんだろう…?なんて5W1Hに置き換えながら、私はボーっと考えていた。

進路希望調査で第一志望校を母や叔母が行った地元の進学校に設定し、滑り止めは隣の市の私立高校と、音楽科のあるかなり遠い女子校に定めた…ところまでは良いが、中3になると部活動を引退した運動部の男子がグッと成績を上げてくる。
そういえば、隣の中学の山手に新しくできた進学校があったな、あっちの方が現段階で設定している志望校より偏差値が5くらい低い。普通科と英語科があり、英語に力を入れてる進学校と噂で聞いていた。私の中学からは“制服がダサいし山奥″という理由だけであまり人気がないが、スレスレで第一志望校に入るより、“少し余裕を持って“山手の新設校″にしようかな…なんて考えだした。

塾では″◯◯高校進学コース″と偏差値順にクラス分けされていたので、とりあえず母と同じ高校進学コースの設定のまま塾にも通った。
塾で今までの友達は減ったが、隣の中学のバスケ部キャプテンの豊田くんが居る(ミッちゃんの応援をしに、バスケ部の練習試合をよく見に行っていたのでライバル校のメンツの顔と名前くらいは知っていた)、隣の席は相変わらず転校してきた仲村くんのままだ。
って事は、今ココに座っている塾のメンバーは同じ高校になる確率が高いって事ね、とあたりを見渡す。そしてこの中の何人かが不合格になるんだろうな。

ところが頭の中は塾から帰ると受験勉強そっちのけで、校内の“彼氏持ちの女子の人数″を念入りに数える。塾の宿題のテキストを開き、勉強するフリだけして、頭の中はそれどころではない。

次第に、トリプルゆうちゃんwith小雪&私、アケミ、同学年の女子の中から“処女卒業した″という報告や噂話を耳にするようになった。もちろん中2でサッサと済ませていた子も知っていた。だが中3になるとその人数の増え方と内容が格段に違ってきた。

例えばこんな風に、あらゆる女子から聞いた。

『最初痛くて死ぬかと思った』
『次の日も痛くて何日かガニ股で歩いた』
『血が出なかったから彼氏に処女じゃないだろって言われた、初めてだったのに!』
『全然気持ちよくない、二度とヤリたくないと思ったけど慣れたらちょっとずつ良くなってきた』
『彼氏が高校生だから中学の男子より上手かった』
『入らなくて何回目かでやっと成功した』
『彼氏が入れたらすぐイクからつまんない』
『カレシがゴムつけてくれなくなった、最悪』
『援交で20代半ばの男とヤッた』
『D組の◯◯ちゃんはテレクラで知り合った男とヤリまくってるらしい』
『D組の◯◯ちゃん、昨日は違う男に顔射されたんだって』
『E組の◯◯ちゃん、あんな大人しい顔して色んな男にヤラせるから、男子からヤリマンとかサセ子って呼ばれてる』

覚えているだけでもこれだけある。これはガールズトークの氷山の一角に過ぎない。

毎日毎日、違う情報が色んなところから耳に入ってくる。さすが放送部!どんな情報でも下ネタとなれば、どこからでも“特ダネ″が入ってくる。ただ肝心なミッちゃんが正代ちゃんとヤッてるのかどうかまでは最後まで分からなかった。

ミッちゃんの彼女の正代ちゃんは、元々違う小学校で中学から一緒になった女子だった。女子バスケ部で、勉強もでき、明るく性格の良い正統派の正代ちゃんは、生まれつき髪の毛が茶色く綺麗なストレートヘアをいつも後ろで一本に束ねていた。私がミッちゃんの大ファンである事を中1の頃から知っていたはずだが、それとは別に普段から仲良くしてくれた。
もし仮に私がミッちゃんの彼女だったら…ライバルの綾やファンクラブにヤキモチを妬き、ミッちゃんを一人占めしたくなっただろう。だが、正代ちゃんはそんな素振りすら見た事がない。いつも誰にでも公平であり、“聡明″という言葉はこんな人のためにあるのか…と初めて思った女子だった。
なので、ミッちゃんの彼女が正代ちゃんだと聞いた時、驚きはしたが悔しいとも思わなかった。むしろ、正代ちゃんの性格の良さを見習おう、彼女の真似をしたいとさえ思った。
そんな正代ちゃんを彼女に選んだミッちゃんの事も強烈に好きであった。中2の時の淳一とタイプは正反対だが、ミッちゃんも相当モテたので相手はいくらでも選べただろう。ただ顔が可愛いだけの女子や、学年でモテる一軍女子の中からではなく、堅実な正代ちゃんを彼女にしたという選択にも大いに感心した。

どうしよう…私だけ取り残されてる…でもテレクラとかで知り合った“知らない男やオッサン″と援交とかで寝るのだけは死んでもヤダ。
やっぱり“初めて″は好きな人がいい。でもこのままじゃ、エッチどころか彼氏もできない!!

焦っても仕方ない、私の女友達が、たぶんだけれど、たまたまちょっと“早い″だけなんだ、学年の大半の女子は真面目だし普通じゃん…と自分に言い聞かせる。
だが小学校高学年の頃から、ゆうちゃん友達と早熟メンバーに囲まれていた私自身も早熟だったのかもしれない。

中1の時、男子から借りたエロ本と“エルティーン″が母に見つかったけれど、その後も自分の小遣いで“エルティーン″を買っては隅から隅まで読んでいた。
その頃クラスで前の席に座っていた、授業中も休み時間もずっと喋ってくる石井という男子が、男のオナニーのやり方とやらを、筆箱を縦にして私に披露してくれた。
…なるほど、男子はこうやって1人でするのか…と一瞬目が点になったが、その後石井の筆箱を見る度に石井の手つきを思い出す。それをアケミに話したら『気持ち悪ッ、オエ〜ッ』と指を口に突っ込む仕草をしながら笑われた。

またある時、大木くんという少しだらしのない雰囲気の男子と美術室の掃除で2人きりになる事があった。大木くんは中1の頃、中2のヤンキー風の女の先輩に呼び出されては、『私の胸、触ってみる?』と言われていたと話す。『いや、いいです…って俺怖かったから断ったんだけど、あん時触らせてもらっときゃよかったー!スゲ〜後悔したわ、スイカみたいにデカい人だったのに、もったいねーと思わん?』と私に聞いてきた。私もバカ正直に『あー、あの先輩、怖いけど胸デカかったよね、確かにそんなチャンスあんまりないと思うわ…もったいなかったね!』と答えてゲラゲラ笑った。
しばらくたったある日の放課後、掃除当番でもないのに突然大木くんから美術室に呼び出された。何の用か検討もつかず、ガラッと美術室に入ったら大木くんが机の上にドカンと座り、ニヤッと笑った。『何?』と私は尋ねる。
大木くんは唐突に『お前さぁ、前から思ってたけど絶対1人でヤッてるだろ?エロいよなー。あーヤリたくなってきた…お前とヤリてぇな』と言われて驚いた。
『は?私がアンタと?ヤダよ。もーそんな事でいちいち呼びださないで!帰るよ、バイバイ』と答えて美術室を出た。

何あいつ、私とヤリたい?それより私が1人でヤッてるだと?そんな風に見えてたのか!最悪。てか何がお前とヤリてぇだ、ふざけんな!
またアケミの家でそれを話したら大爆笑された。『何それ〜?大木ってレナちゃんとヤリたかっただけじゃないん?ヤレば良かったのにー!ワハハー!』今度は手に持っていたタバコを床に落とし、アケミは手を叩いて大爆笑した。

何がショックって…私のオナニーが何故大木くんにバレてんのか?って事だ。1番の問題はそこだ。


当然トリプルゆうこ友達にもアケミにも誰にも話していない。大木くんはヤンキーではないが、中2くらいからタバコでもふかしてそうな気怠そうなオーラを放っていた。女にだらしなさそうな独特の雰囲気もあり、ある一定数の女子から何故か人気があった。



そんな彼は私の何を見抜いていたのか。


中3になって受験勉強とピアノの練習をしなくちゃいけないのに…私の悶々とした日々はつづく。



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