早熟な女子たち
散々な家庭生活だったが、合唱部に入部して“ゆうちゃん友だち“と遊ぶようになってから、楽しい事がまた増えた。
“ソプラノの夕ちゃん“と”アルトの優ちゃん”と私の3人は早熟な部類だったように思う。
ダブルゆうちゃんwith私の3人は、小学校の帰りに道端に落ちていたエロ本を見ながらキャーキャー騒ぎ、スーパーの二階にある本屋のプレイボーイなんかを手に取ってキャーキャー騒いだ。
ソプラノの夕ちゃんの家は、聞けば祖父母の家から徒歩10分くらいの所にあって、よく遊びに行くようになった。夕ちゃんの家にはミャーという黄色い猫がいた。何を隠そう、小さい頃から猫が大好きだった私は、何かにつけてミャーを触りに夕ちゃんの家に遊びに行った。何度も猫を飼いたいと祖父母に相談したが、うちは佳子ちゃんがいるから動物はダメ、のひと言で終わった。
高学年になると女子の方が先に色々発達してくる。夕ちゃんはとても目ざとく、◯◯ちゃんの胸って大きいよね、学年の誰と誰が付き合っていてもうBまでしたらしいよ、なんて事を話してくれる。私も興味津々、当時好きだった男子が誰を好きなのかを考えたり、クラスの男子の中で好きなランキングを勝手につけてはダブルゆうちゃんと共有した。
『レナはもうブラ買った?』と聞かれ、そういえばスポーツブラみたいなものをしているな、と考えた。
小6になると、ダブルゆうちゃんとは隣のクラスになり、お互いのクラスを行き来した。男子のグループで“通称もっこりーず“軍団とも仲良くなった。もっこりーず軍団のボス猿みたいな男子、森君は自分の息子が学年で1番デカい!と豪語していた。それが本当かどうか誰も知らないのだが、森くんは短パンになるとよく横からハミタマをしていて、それを私たちはキャーキャー言いながら騒ぎたてた。彼らと仲良くなるにつれ、ダブルゆうちゃんと私は、下ネタ大好き女子と認定されていたようだ。
変態仮面という少年ジャンプに連載されていた漫画も、もっこりーず軍団から私たちのところに回ってきた。変態仮面という漫画をご存知の方がどれくらいいるか想像がつかないのだが、変態仮面に変身する時のモノマネもよくした。
ただし!我が家は変態仮面どころか、漫画も男友だちも下ネタも全て禁止。祖父母の家のテレビでたまにドラマがかかり、ラブシーンになると即チャンネルを変えられた。
その頃光GENJI、シブガキ隊に熱をあげる女子が圧倒的に多かった。101回目のプロポーズというドラマの話題がクラス中で騒がれていたが、ドラマひとつ見せてもらえない私は皆の話題についていけなかった。
だが私はついに見つけてしまったのだ!こんなにセクシーな男がこの世に存在するのかと思うくらいの人を。
当時米米クラブやCHAGE&ASKAは小学生ではなく、少し上の中高生、いやそれよりもっと上の年代の女性の間で流行っていたのかもしれない。
年末の大晦日の日だけ特別に祖父母の家に泊まって紅白歌合戦をみることが許されていた。東京から盆正月に帰省してくる叔母夫婦もいる。その年の紅白歌合戦で、米米クラブのカールスモーキー石井さんを見て一目惚れした。真っ白なスーツに金髪の髪、ちょっと化粧をしていたその妖艶な顔とセクシーで少しキーの高い甘い声で脳が一瞬で溶けそうになった。
普段騒いでいた学年のイケてる男子とは比べものにならない、セクシーという言葉はこんな人のためにあるんだと感心した。カールスモーキー石井さんの歌う姿は強烈に印象に残り、紅白歌合戦が終わっても、行く年くる年が終わっても、布団に入っても興奮がおさまらなかった。除夜の鐘を聞いてもまだドキドキして私だけ眠れない。
あんなセクシーな男が大人になったらいるのかな…なんて考えていたら、初めて自分自身が濡れている事に気づいた。
当然のことながら、同級生の女子と話が合わない。お年玉の一部は米米クラブのCDとCHAGE&ASKAのCD(もちろんシングルのほう)に消えた。もちろん母には内緒で。母が居ない時にコッソリかけては早く大人になりたいと願った。小学6年生にしては私はかなりのマセガキであった。