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死別後シンドローム  1


 図書館で〈他に何か面白そうな本がないかな〉と目的の本を選んだあとでたまたま目に入ってタイトルだけ見て借りてきた本ですが、この数ヶ月間で読み漁った死別関連でBEST。超絶オススメなのですが、まだ第3章までしか読めていない。
 読み終えてもいないのに超絶オススメする程に、第1章どころか、まえがき、プロローグから気持を鷲掴みにされています。

 死別後シンドローム 大切な人を亡くしたあとの心と体の病い
                精神科医 清水 加奈子 時事通信社

ざっくり説明

 2019年 WHOで「遷延性悲嘆症」という新しい診断名が承認されて2022年から運用される。それまでは〈うつ病〉と診断されていた死別後のアレコレが別の診断になる。「遷延性悲嘆症」=耳慣れない言葉だから死別後シンドロームって呼ぶわよ。

立ち直る

 かねてからの疑問。考えども答えが出なかった〈立ち直る〉とはナンゾや?という問いの答えがいきなり言語化されていた。

私たちは心の中にオリジナルな「世界」を持っているともいえる。この場合の「世界」とは、現実世界とは違い、大切な人との間で知らず知らずのうちにつくり上げている目に見えない世界である。
(略)
大切な人との死に別れとは、その人とともに築いてきた一つの「世界」が終わることでもある。
 ここで大切な人との繋がりを失わないためには、現実社会の中で作られてきた、その人との「世界」をいったん閉じ、亡くなった人との間で新たな
「世界」を 作り直していくことが必要となる。

死別後シンドローム 本編P32~33抜粋

本書では、喪のプロセスの5段階として
1.ショック期
2.感情の暴走期
3.抑うつ期
4.受け入れ期
5.立ち直り期
注:人によって、これらの段階が同時に来たり、一部がなかったりすることもある。最も多いのは、波のように各段階を行きつ戻りつし、最終的には立ち直っていくパターンである。すべての段階を終えるのに、おおむね1年はかかるが、人によって、また、亡くなった人との関係や、死の状況などによって異なる。

死別後シンドローム P35 抜粋

私のショック期

 私は、あの日から3ヶ月程がショック期だったのかと思う。残務整理+引越し+片付けで月日が流れるのが早かった。頭の中で〈やるべきこと〉を考え、忘れないようにメモをして、引越しの片付けでメモも無くしやすいのでメモを作り直したりしながらも、なんとか落ちがないように時間をやりくりして過ごしていた。
 そして、その頃は「このパニックを切り抜ければ私は大丈夫」だと思っていたし、そうしたら仕事を探して働きに行けると自分で信じていた。
〈ショック期〉が終わった自覚もあった。ただ単純に「ゴミ出しを忘れた」だけなのだが、事業所の閉鎖だというのに自家用車もなく、すべてのゴミを手で持って捨てに行くのだからゴミのスケジュールは絶対であった。
炊飯器をいつ捨てるか、何を食べるか、ほぼ食料品の買い出しも行かずに2ヶ月やりくりしてきたスケジュールの基本はゴミの日だった。

私の暴走期 

 見事にそれから感情の暴走期に入った。ごめんねが言いたくて、おかえりって言いたくて、ありがとうを伝えたくて、それらをひっくるめて、過去最大の〈大好き〉になってしまって、そこに死後にわかった浮気まで加わると「私が大好きでいるのを迷惑がられたらどうしよう」と考え、ついでに引越してしまったので、成仏してないで誰もいなくなった工場で彷徨っていたらどうしよう!まで加わっていたので〈感情の暴走期〉に新しい理由の〈ショック期〉と同時進行していた。

 ついでに月日だけは経過していくので、周囲の人を心配させないように、お礼の手紙に仕事を始めた報告ができるようにと就職を焦った。
「このまんまでは先に進めない!」とパニックになってミディアムさんに相談して落ち着きを取り戻して〈受け入れ期〉がやってきたのだが、就職先で「過去の経験はゼロだと思って」と繰り返して言われた事が、私には彼との築き上げた商売を全否定された気持ちになってしまって、すべて崩れた。

チェックリスト

次の2つのことが前提である。
1.かけがえのない人を亡くして、すくなくとも四十九日が過ぎた。

2.毎日、亡くなった人のことを考え、ふさぎ込む時間があり、その時間は日を経っても減っていかない。あるいは、思い出さないように、意図的に話題を避けている。

そして、次の3~10のうち、4つ以上の項目が当てはまる

3.亡くなったのは、自分のせいなのではないかと自分を責める思いから逃れられない。あるいは、家族など特定の人を恨んでしまう。

4.なぜ亡くならなければならなかったのか、かわいそうで居たたまれない。

5.自分は悲しみを見せたらいけないと思う。あるいは、家族や同僚、友人など身近な人に自分の悲しみを話すことができない。

6.あの人がいなければ、生きていても仕方ないと思う。

7.家事や仕事は、義務としておこなっており、以前と比べて楽しさはない。

8.以前に比べ、外出することを控えるようになった。とくに、人の多い集まりには出たくないと思う。

9.身体のどこかが痛い、ひりひりする、だるい、など不調があるが、原因がわからない。

10.亡くなってから、アルコールなどの嗜好品やギャンブルなどを常習するようになり、やめられなくなった。

死別後シンドローム 本編P81~82

このチェックリストのあとにドキッとする一文が続く

正常ならば、これらの症状が出てきても、亡き人を思い出しては悲しみ、また日常に戻ることを振り子のように行ったり来たりしながら繰り返す。そして、徐々にそれらは和らいでいき、時を経る中で立ち直っていけるだろう。しかし、死別後シンドロームであれば、この振り子は動かない。いつまでも同じ場所にとどまり続けている。そのため、この症状は和らいではいかず、次第に日常を壊していきかねない。

死別後シンドローム 本編P83

 今日まで読んできた中で、ここに書いていない事がある。〈怒り〉について。怒りを消化できないという部分にどうしても向き合えない。
というより、自分の中で〈怒り〉があるのかわからない部分がある。

浮気/情けなさ、惨めさは当然あるし、前妻の浮気で離婚した彼は「浮気されると女は相手の女に対して怒るけれど、男はパートナーに裏切られたショックのほうが大きくて◯したくなる」と言っていながら浮気するかね!と呆れる気持ちになる。---これの根本に怒りがあるのか自分でもわからない。
 相手の女性は、行為により金銭を受取る女性だったので、そんなお金を払える状況でなかったので彼とはお客さんという関係ではないのだろうけれど、そんな相手とお付き合いできる彼にも相手にも呆れている。

お金/貧乏生活は覚悟の上だったのだが、毎月せっせと払い込んでいた生命保険は当然のように遺族のものになる。彼自身も節約生活ができるひとだったので、当時はそんなストレスではなかったけれど、あれだけ貧乏して支払ってきた生命保険やら何だったんだ?というアホらしくなる気持ちもある。

そんなこんなで〈故人に対する怒り〉というものがあるのか、無自覚に蓋をしている部分なのか向き合い方がわからない。向き合って冷静に分析してみようとしても、〈呆れる/アホらしい〉としか思えない。

 とにかく、喪のプロセスを進めない限りはこのままである。場合によっては〈病い〉に進むことがあるということだけはわかった。

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