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レジンとコピルアク

どちらも彼が残したもの。そして私が捨てられないもの。

コピルアク

 「何かいい事あった時に飲む!」
食器棚の引き出しにあった試飲用のコピルアクのドリップパックを見つけた私が「これ飲まないの?」と尋ねた時に、彼はそう答えた。

 この連休中に彼の愛娘の結婚式がある。彼の家族が揃う日に飲んでいただこうとコピルアクを贈った。さすがに賞味期限切れの〈本物〉という訳にはいかないのでアマゾンで選んだ。

 本物の方は私が持って行く。彼と再会したときの乾杯用に。10年後?20年後?30年後だったらどうしよう。長過ぎるような気がする。いずれ必ず彼が迎えに来ると決まっている。こんなにコレを飲むのに適した日は他には無いだろう。

時間薬

 死別における時間薬の効果効能は、私には新しい解釈を発見して行くことかもしれない。
 置いていかれたとしか思えなかった日々から、必ず迎えに来てくれると気付くまで2年7ヶ月。
 コピルアクの思い出と娘さんの結婚式というイベントが結びつかなければ導き出されなかった答えであろう。娘さんの結婚式が終わったら遊びにいらっしゃいと誘ってくださった義母さんは、二人の娘さんたちが幸せな生活を始めた後に、私の存在を気にかけてくださっているのだろう。
 初めて目にする彼の仏壇、遺影、位牌、すべてに怯えている私の背中を彼が押したのかも知れない。 

 出会った頃に彼が言った。「最高の人生が約束されている」
そうだったんだ。必ず彼が迎えに来て再会が約束されている人生を過ごせばいいんだ。精一杯遊んで仕事して時間を潰そう。

レジン

 クロスステッチを完成させた私は、次のターゲットにレジンを選んだ。
興味はあったのだけれど、苦手意識が優先して手を出さずにいた。あろうことか「美術さん」と呼ばれる生業の親の元に生まれ、才能やらセンスは兄だけが受け継ぎ、私は比較対象でしかなかったので、好きな気持は常に苦手意識の下になる。

 彼はきっと釣り道具のカスタマイズでもするつもりだったのだろう。
100均で買ったクリアのレジンを1つ持っていた。そんな事もあり、100均で適当に材料を揃え、水風船と風鈴を作ってみてから彼のレジンを取り出した。未開封のレジンはボトルの中で硬化していた...。流石だな...。

上手くいかん!

 本当は海を愛した彼のレジンで作りたかった海。しかし私は空が好きだ!
空と海を作りたい。
(レジン、写真撮るの難しすぎ。ちまちま石鹸で作った雲が.…)

 チェーンを買ってネックレスにしようかな。
いがいにちょこっとしたスキマ時間で作れるので趣味にはいいかも知れない。
納得する海と空ができるまで一体幾つ出来てしまうのだろうか??
 熱中しているうちに5月も終わるだろう。来月は彼母に会いに行く。そもそも他人の家にお泊りした事がないんだよな...。余計な事を考えて心配しないように夕飯何作るか考えよう。
 





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