大谷翔平選手の活躍を楽しむための英語入門(その1)
はじめまして、アメリカで総合内科医として働いている安川康介です。2009年に渡米してから早くも15年が経ってしまいました。今日は、医学の情報ではなく、大谷翔平選手のアメリカでの大活躍をより楽しむための英語について書いていきたいと思います。
9月19日、大谷翔平選手がメジャーリーグ史上初となる「50本塁打50盗塁」という前人未到の偉業を達成しました。
同日のマイアミ・マーリンズ戦では51−51を達成するだけでなく、6打数6安打3本塁打10打点(1試合10打点はメジャーリーグ史上16人目)、2盗塁という大活躍をし、所属するドジャースもプレーオフ進出を決め、記念すべき一日となりました。
・2021年、史上初の二刀流選手としてオールスターに出場。
・メジャーリーグ史上初、2度にわたり全米野球記者協会の記者全員から満票で最優秀選手賞を受賞。
・メジャーリーグ史上最高額となる、10年7億ドル(!)でドジャースとの契約。
アメリカでの大谷翔平選手の大活躍を見ていて、「このような日本人野球選手は今後現れるのだろうか?」と思う人は多いのではないでしょうか。少なくとも自分が生きている間にこのような選手がまた現れる可能性は低いのではと思ってしまいます。
日本のメディアでも連日報道されていると思いますが、大谷選手はアメリカの野球関係者やファンからも絶賛されています。せっかくならば、英語でどのような表現がされているのか知りたいと思う方は多いのではないでしょうか。
そこで、X(旧Twitter)のタイムラインやYouTubeの動画・コメント欄で、大谷選手に対して頻繁に使われる英語表現を紹介します。今まで英語で情報をあまり読んでいなかった方を対象とした入門編といったところです。
大谷選手に限らず、世界で大活躍する日本人選手(例えば、ボクシングの井上尚弥選手など)を応援する際にも役に立つのかもしれませんので、興味のある方は是非読んでみてください。
まず、ネット上で大谷選手の活躍をリアルタイムで堪能する一つの方法として、X(旧Twitter)があります。試合で活躍するとMLB公式アカウントや野球ファンが盛り上がり、検索でohtaniと入力し、「話題」のタイムラインへ行くとエンゲージメントの高い投稿を読むことができます。
他にも、YouTube上で、「ohtani」と検索すると、大谷選手の活躍している動画が多く投稿されているのが確認できます。メジャーリーグの公式チャンネルでは大谷選手が活躍すると、驚くほど早く(数時間以内)動画を投稿しており、動画やコメント欄で多くの情報を得ることができます。
1. 必須単語である「GOAT 」
素晴らしいスポーツ選手を讃える時に使われる重要な英語、それは「GOAT」です。そのまま「ゴート」と発音されます。「ヤギ」という意味もありますが、「Greatest Of All Time」の頭文字をとった略語で、「史上最高」という意味になります。このGOATという言葉は、大谷選手に対して頻繁に使用されています。ヤギの写真や絵文字(🐐)と共に、もしくは🐐の絵文字だけで使われることがあります。
YouTubeの動画のタイトルやサムネイルで、GOATという言葉やヤギの写真が使われることがあるのはこのためです。ちなみに「Ohtani」とこの「GOAT」という言葉を合わせて、「GOATANI(ゴータニ)」と書いているファンもいます。
USA Today紙の記事と、そこで引用されているGrammarphobia.comによれば、Greatest of all timeの頭文字をとったGOATという略語が最初に使われたのは、モハメド・アリの妻が1992年に設立したGreatest of All Time社(G.O.A.T. Inc.)だとされています。その後、ヒップ・ホップの音楽で、Greatest of all timeが「ゴート」と発音されるようになり、LL Cool Jというラッパーが「G.O.A.T」というアルバムを2000年に発表したことも影響して言葉が広がっていきました。このアルバムの「The G.O.A.T」という曲では「I'm the G.O.A.T. the greatest of all time」という歌詞が繰り返されています。
GOATという言葉は、2000年以降にスポーツ選手に対しても使われるようになり、今では広く使用されています。ちなみにGOATはメリアム=ウェブスター辞書にも意味と発音がきちんと記載されています。
GOATと称されるスポーツ選手には、例えばサッカー選手のリオネル・メッシ、バスケットボール選手のマイケルジョーダン、ボクシング選手のモハメド・アリなどがいます。スーパーボウルを7回制したアメフト選手のトム・ブレイディが、大谷選手に祝福の言葉を送った動画に、メジャーリーグのアカウントが「One 🐐 in awe of another…(一人のGOATが、もう一人のGOATに敬意を表する・畏敬の念を抱く…)」といったツイートをしていました。
また、大谷選手は野球において本当にGOATなのか、ベーブ・ルースと比べてどちらがGOATなのか、全てのスポーツ界の中で誰がGOATなのか・・・といった「GOAT論争」はネットの至るところで繰り広げられており、英語で情報を収集していると、必ず熱く議論している人たちを見かけることでしょう。
もし、今まで大谷選手の情報を英語で収集していなかった人は、まずは「あ、ここにもここにもヤギがいる!」という感じで、「GOAT」「🐐」を見つけて、楽しんでみるのが良いのではないでしょうか。
2. 唯一無二を表す「One of a kind」と「One of One」
今シーズン50本目のホームランを打った時の実況中継を、まず英語でご覧ください。ちなみにこの記事では、わかりやすいように、YouTubeの動画を途中から再生するように埋め込んでいます。
記憶に残る英語のナレーションは以下の通りです。
"Triple for the cycle, homer for history.
On a 1-2 (count), Ohtani……
3塁打でサイクル、ホームランだと歴史的快挙。
1ボールー2ストライク、大谷です。
SENDS ONE IN THE AIR!! THE OTHER WAY, BACK IT GOES!! GOOOOOONNNEEE!!!!
打ち上げた!!逆方向へ(流し打ちだ)!飛んでいった!!ホームラン!!!!
ONE OF A KIND PLAYER!! ONE OF A KIND SEASON! SHOHEI OHTANI STARTS THE 50/50 CLUB!!!
唯一無二の選手!!唯一無二のシーズン!大谷翔平が50-50クラブをスタートさせました!!!
と、歴史的快挙を達成した時に使われたのがこの「One of a kind」(唯一無二である)という言葉でした。この言葉は、今回の快挙だけでなく、大谷選手を表すのに出てくる英語の表現です。
これと同じような意味がある英語表現として「One of One」があります。ドジャースのX公式アカウントも9月19日に「Shonei Ohtani, one of one.」というツイートをしています。
43-43を達成した時のメジャーリーグX公式アカウントのツイートがこちら。このツイートも「ONE OF ONE」から始まっています。
こちらのテレビでのコメントでも「He is one of one」という表現を使っています。
3. 大谷翔平、人間ではない説 「Out of this world」「He is not human」
大谷翔平選手が人間離れした活躍をするので「Out of this world(この世のものとは思えないくらい素晴らしい)」という表現が使われることがあります。
53号ソロホームランを打った時のメジャーリーグ公式アカウントのツイートがこちら。宇宙を背景に手を上げている大谷選手と共に「OUT OF THIS WORLD」と書かれています。
ちなみに、最近「大谷贔屓」のメジャーリーグ公式アカウントに対して不満を感じている人も多くいるようで、55号を打ったアーロン・ジャッジ選手との扱いの差が大きすぎて怒っているファンも見受けられました。
大谷選手は、Out of this world以外にも、「He is from another planet(他の惑星から来た)」「He is not human(人間ではない)」と表現されることもあります。
9月19日のマイアミ・マーリンズ戦で51号ホームランを打った時の実況中継を見てみましょう。
OH MY GOSH!! SHOHEI OHTANI !! THE GREATEST DAY IN BASEBALL HISTORY!!!
This is not real life!! He is not human!!!
なんということでしょう、大谷翔平!野球史上最高の日だ!!これは現実の世界じゃない!彼は人間じゃない!
ちなみにこの「This is not real life」という表現は、褒める時に使うことがある「Unreal」という言葉と関連しています。
Unrealはそのままでは「非現実の」という意味になりますが、口語では「信じられない、素晴らしい」といった意味があります。この言葉も大谷選手に対して頻繁に投げかれられる言葉なので目にすることが多いかもしれません。
例えば、バスケットボール選手のレブロン・ジェイムス選手が9月19日の試合の後に、大谷選手に対して「THIS GUY IS UNREAL!!!! WOWZERS(彼は素晴らしい!わお!🙌手を上げている絵文字)」とツイートしています。Wowzersは英語の「Wow」と同じような意味です。ちなみにアメリカでは、自分の肌の色の、顔や手の絵文字を使う人が多いです。
4. Once-in-a-lifetime talent/player
アメリカのスポーツ選手に使われる褒め言葉の一つとして「once-in-generation talent/player」という表現があります。これは「一世代に一人の才能・選手」という意味で、同じ世代の他の選手よりも優れている選手に使われることがあります。
大谷選手の場合、「once-in-generation」(数十年に一度)という表現を通り越して、「Once-in-a-lifetime」(人生に一度)という言葉が使用されます。
エンジェルズに所属していた時にテレビのコメントを聞いてみましょう。
マイク・トラウト選手 のことを「Generational player」、大谷選手のことを「Once-in-a-life time player」とコメントしています。
メジャーリーグの公式アカウントでもこのようなツイートがあります。
A once-in-a-lifetime talent? Try once in a sport.
一生に一度の才能?いや、スポーツ史上に一度だよ。
ここでは「Once-in-a-generation」を超えた「Once-in-a-lifetime」をさらに超えた「Once-in-a-sport (スポーツ史で一度の)」という表現をしています。
さて、長くなってきたので、今日はここまでにします。
もし需要があれば、また今度「その2」として大谷翔平選手の活躍をより楽しむための英語のネットスラングや野球のスラングについて紹介したいと思います。
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