一風堂の企業分析をしてみた(その1)
みなさん、ラーメンはどこが好きですか?
わたしは海老味噌ラーメンなら一幻、とんこつラーメンなら一風堂が好きです。
一風堂って福岡発祥のラーメンですが、いまやどこの県にもあるし、東京都内も一等地に数多く出店してますよね。海外にも出店してて大人気だと聞いています。
1杯1000円くらいのラーメンですが、世界を席巻するRAMENに進化し、世界中から愛される食文化に発展しています。
私は料理人ではないので、おいしさの秘訣は分析できませんが、一風堂がどのくらい儲かっているのかや、一風堂を買い占めるためにはいくらお金が必要かは分析ができます。
ということで、外出自粛が続き暇なので、一風堂の財務面における企業分析をやってみたいと思います。
企業分析とは
企業の分析手法は種々存在すると思いますが、今回は上場企業ならどこでも開示している「有価証券報告書」をベースとした企業分析にチャレンジしてみたいと思います。
有価証券報告書は、金融商品取引法で規定されている、事業年度ごとに作成する企業内容の外部への開示資料で、各事業年度終了後、3か月以内の金融庁への提出が義務づけられている資料になります。上場企業であればこの有価証券報告書を開示しており、誰でもHP等から参照することができます。
有価証券報告書には、
・その会社がどんな事業をおこなっているのか
・どれくらい儲けているのか
・どんな資産をもっているのか
・どういうリスクを背負っているのか
などが記載されています。
本報告書は監査法人が監視の目を光らせているので虚偽の報告はできません。
ラーメン1杯で始まった事業が現在どのように広がっているか、コロナによる影響はあるのか、そんなところを見ていきたいと思います。
一風堂ってラーメン屋ですよね? -事業セグメント編
なぜこんなことをいったかというと、一風堂がラーメン屋さんとも言い切れない可能性があったからです。
というのも、会社は、複数の事業に投資をベッドする多角経営(コングロマリット経営ともいいます)をおこなうことで経営のリスクを分散させたり、とある事業で得た知見やノウハウをテコにして他事業に乗り出し、既存事業とのシナジーを図るといった戦略をとることが常だからです。
例えば、写真や映像のイメージの強い富士フィルムはアスタリフトという化粧領域の事業もやってますし、掃除道具で有名なダスキンはドーナツで有名なミスタードーナツの商売もやってます。
さて、一風堂に話を戻すと、有価証券報告書には以下のことが書かれています。
ここからは一風堂を運営する「株式会社力の源ホールディングス」が2020年2月10日に提出した2019年10月1日〜2019年12月31日の有価証券報告書をもとに記載していきます。
株式会社力の源ホールディングスの事業セグメントは、
・国内店舗運営事業(一風堂、RAMEN EXPRESSなど)
・海外店舗運営事業(IPPUDO、IPPUDO EXPRESSなど)
・国内商品販売事業(おうちでIPPUDOシリーズなど)
・その他(因幡うどん、イチカバチカ)
の4つとの記載があります。
事業セグメント毎に売上と利益の表が以下です。
商品販売やうどん屋さんも展開しているようですが、規模の大きさや事業の類似性を考慮すると、ほぼラーメン一本でビジネスの勝負をしていることがわかります。
※ほぼ単一セグメントといえるので、会社のヒト・モノ・カネのリソースをラーメンに注げるという点では良いと思いますが、グローバル展開はしているとはいえ、一本足打法の場合はそれなりのリスクも強いられます。(例えば昨今のコロナによる休業の経営インパクトはかなり大きいと思います。)
とにかくここで言えることは、一風堂(正確には力の源ホールディングス)はラーメン屋さんであるということです。
一風堂はどれくらい儲けているの?
次に第3Qの損益計算書を見てみます。
2019年4月1日〜2019年12月31日までの売上が約223億円となっています。(セグメント毎の内訳は、国内が127億円、海外が71億円、国内商品販売が17億円、その他のうどんが1億円です)
昨年同四半期が202億円なので、10%の成長ということで堅調に成長していることが分かります。内訳を見ると、国内の売上が10億円(前年同期比7.7%増)、海外の売上が10億円(前年同期比17.4%増)増加しており、海外がより伸びていたことが分かります。
有価証券報告書には国内と海外の店舗数も載っています。
・国内は163店舗(内ライセンス契約は12店舗)
・海外はアメリカや中国等14カ国で計130店舗(内ライセンス契約は74店舗)
となっています。
国内は1店舗平均0.77億円の売上、海外は1店舗平均0.54億円の売上であることが分かります。(第3Qまでなので9ヶ月あたりの売上)
国内はラーメン文化が根強いが競合が多い
海外はラーメン文化は根強いとはいえないが競合が少ない
おそらくこんな図式が成り立つのではないかと思います。
業務オペレーションは確立していると思われ、味の調整や商習慣等によるローカライズは必要と思いますが、出店すればするほど売上が上がっていくビジネスなのではないかと考えられます。
なお、営業利益率やROEなど収益性を図る指標は以下のとおりです。
営業利益率:3.2%
原価率:29.1%
販管費率:67.7%
ROE:13%
自己資本比率:26.5%
販管費率が高く営業利益率を圧迫しているように見受けられます。前述に店舗の割合を書きましたが、293店舗中、直営店が207店舗ということで、直営率が70%を超えています。
推測になりますが、直営店が多いことから家賃等の販管費が高くついており、海外進出も多くなることから広告宣伝活動費用等も多くついているのではないかと推測します。
海外進出をしながらもライセンス契約(ロイヤリティ収入を得るビジネスモデル)店舗を増やしていくことで売上高と営業利益の確保ができるのではないでしょうか。
自己資本比率が低いのでROEは高めの13%となっています。
どんな資産をもっているのか
さて、一風堂(力の源ホールディングス)は、どんだけ資産を持っているのでしょうか。
貸借対照表を見てみましょう。
ざっくり概要をいうと、
<調達サイド>
流動負債:54億円
固定負債:66億円
純資産:47億円
<運用サイド>
流動資産:58億円
固定資産:109億円
となっています。
上記の値から経営の健全性や安定性を測る流動比率と当座比率を算出します。
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