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オリジナリティとは?(前編)モノマネの正体

“目に映らない、他者の工程や思想を形にする力“
まずはモノマネについて模写を例に出して説明します。

以前の記事の抽象画とは?では抽象とは具象の世界から派生したものであり、深く密接に関係していることは理解されたかと思います。



絵を描く上でのスタートとして始める基礎デッサンは自身の“視点や手法を変える、発展させていく“という表現の自由を獲得する為の準備運動だと思ってください。
とにかく表現の自由を得るためには、現状の観察力、考察力のアップデートが必要不可欠です。(これはなにも絵画だけに限ったことではないですが)

それを踏まえた上で表題にあるモノマネですが、ここでは作品の表層だけをコピーしようとする行為をモノマネと呼びます。

もちろん基礎デッサンをはじめ、自身の内部から改革を行っていくような工程を踏んでいくことは容易なことでは無いかもしれません。

なのでそのような工程を端折って、既存の作品を表層的にマネることは、ある程度は可能かもしれませんが、それでは先人の作品をビジュアル上だけでなぞる事にしか過ぎないのですぐに行き詰まりを感じてしまうと思います。

この行為は非常に生産性がなく、同時に困難な行為だとも思います。
マネるは学ぶとも言いますが、考え方を間違うとただの徒労で終わってしますし、似せて描くという観点だけで考えても非常に効率が悪いです。

それを理解する上でわかりやすい例が”模写”です。
模写はよく、既存の作品を似せて描く行為と考えている方がいますが、それは間違った考え方です。
前提として模写はただ作品をマネるのではなく、巨匠の作品の意図や技術の理解を深める為に行うことです。

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参考作品:アントニオロペス・マリア


例えば上記の作品を模写する際に、描き始めから人物の目鼻口やトーンをそのまま描き写そうとするとします。
そのような場合、大抵形がぎこちなくなったり、平面的に稚拙になったりします。

しかしここでそのような結果になったことを技術不足として片付けてはいけません。

上記の例は技術不足どころか、そもそも技術を発揮する土俵から退いてしまっているのです。

例えば名店のラーメンの味を家庭で表現するのに、下味として使用されているスパイスや調理手順を読み解かず、見様見真似で同一の味を表現できるでしょうか?

いくら調理技術がある人間であっても、調理手順を無視し、感覚だけを頼りに行えば本領発揮をすることは難しいと思います。
(ラーメン作りの造詣が深く、あえて感覚に任せて作ってみるという実験性は別として)

料理に例えると非常に当たり前のことのように思えるのですが、絵画作品やイラストの模写となるとそこが抜け落ちてしまう場合が非常に多いのです。
きっと絵画が構造物というより、先に一枚のビジュアルのイメージという認識が先行してしまっているからかもしれません。

ついつい目の前の事象をそのままコピーしよう、似せようという結果のみにフォーカスした思考をしてしまうのです。

その考え方こそがモノマネの正体です。

しかし絵画も先ほどの例と同様、複雑な作業工程、考え方によって構築されているものです。

ですから模写を行おうとしている作品の完成に至るまでの工程を自ら推測し、理解して制作しなければ同一のイメージを再現することは困難なのです。

一言で述べると重要なのは目に見えないものを形する力です。

模写を行う際はこの能力が非常に強く問われます。
言うならばその能力の向上のために模写を行うと考えていただいても構いません。

きちんとした工程を踏んだ模写は、ビジュアルイメージをただマネる為だけではなく、その作家の作業工程や思想の踏襲にもなるので、それらが自身の作品制作の際にも強く生きてきます。

この目に見えないものを形にする力は、のちにモノマネから影響へ、そして自身の表現力への橋渡しとなるものです。

早くオリジナルを作ってやろう!と意気込むのはもちろん問題ではありませんが、中途半端に誰かの作品の真似事をするくらいなら、きちんと意味を理解した上で模写行った方が確実に学びになると思います。

中編ではこの前編の内容を踏まえた上で、表現方法について説明したいと思います。


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