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「捨て案」をやめて、お土産をつくろう。

先日、X(旧Twitter ← これまだ慣れない…)にてこんな投稿をした。

とてもたくさんの好意的な反応をいただいたので、遠い記憶を探りながら当時ことをもう少し深ぼってみたくなったのでまとめてみることにした。




そもそも捨て案とは

デザイナーやその他クリエイティブな業務において、提案の際に複数案を用意することがある。
考え方は様々あると思いますが、例えば迷ったときの選択肢として、あるいは切り口を変えたコンセプト提案として、そして一案だと(提案幅的に)物足りなく感じるがゆえのいわゆる「捨て案」として。

例えば、クライアントへ以下の案を提出するとする。
・A案 … 先方の要求通りの王道案
・B案 … 要求に則りながらも少し切り口を変えた案
・C案 … 提案数を増やすために一応追加した案 ← 捨て案と呼ばれるのはコレ

A,B案は、デザイナーとして、あるいは制作会社の代表としてクライアントへの提案になるけれど、C案についてはコスト・スケジュール的にそこまで時間を使えず、やむを得ず数合わせで作った選ばれなくても良いものだったりする。作り手にとっても受け手にとってもあまりポジティブには感じない。
それとは別に、A,B案を選ばせるための布石とする場合もあるかもしれない。流石にこれは無いよね?って一見して理解しやすくするための説得材料として敢えて提出するとか。

しかしながら、極稀に捨て案が選ばれてしまって右往左往することもあるので仕方なく対応するというのが現実なのかもしれない。
実際何度か経験したし、なんならAとCの折衷案を希望されたりするとコンセプトがハチャメチャになってしまってもう目も当てられない。。。

なので本来は提案するに値しないのではないか?とも思えるものが、ここで言う「捨て案」として定義しておく。


なぜお土産と呼んだのか

これからの記述については15年以上前の淡い記憶を辿るので、若干曖昧な表現になってしまうけれどお許しを。

当時のチームはデザイナー3人、コピーライター1人という編成。
新規広告案件の案出し(アイデアを各自持ち寄って提出案を選別する会議)中、すべての提案を精査した時にどうしても提案数を絞りきれずに悩んでいたときのこと。
一人の先輩が「どうしてもこの案は作りたい。選ばれないにしても喜んでもらえるとは思う。だからお土産としてこれを持って行くのはダメかな?」的なニュアンスで提案数を増やそうと話した。
それについては全員賛成だったので、後輩である自分がその分サポートに入り何とかスケジュール調整した。

これをきっかけに、それ以降は追加案を作る時には「お土産」と言う表現を使うようになったと記憶している。
結果、捨て案など作っている時間がなくなったし、逆にモチベーション高く手を動かせた。次は自分のお土産が選ばれるようにと。


お土産の選び方

ここからは、当時の記憶と体験から導き出した持論として考えてみる。

1. つまらないものですが、を禁止する

お土産を渡す時「これはつまらないものですが、お口に合うかどうか…」って言う表現、ある程度の年代の日本人なら誰しも聞いたことがあるはず。
喜んでもらいたいのに、なぜ「つまらないもの」というのか。むしろ捨て案にこそふさわしいキャッチコピーのように思える。
あくまでも「とても良いものが出来たのでお届けに参りました!」精神で。

2. 制約を制限しすぎない

お土産と言う表現を使うようになってから、副次的な作用としてアイデアを考える際に枠を飛び越えて発想を広げる訓練になっていたと感じる。
A案やB案は当然しっかり押さえた上で、さらに想像の斜め上を行くアイデア、いわゆるクリエイティブジャンプを目指し双方がワクワクするものを。

3. 名前だけでも覚えて帰ってね、の精神で

クライアントにとっても捨て案よりお土産のほうが嬉しいだろう。
たとえ選ばれなかったとしても印象に残るプレゼンが出来るかもしれない。
これまでよりも良い関係を築くため、そしてファンになってもらいたい。
そのためのおもてなしだと考える。


お土産マインドがもたらしたもの

追加案をお土産と意識しながら提案し続けると、個人的には以下のような効果を感じられた。
・追加案がよりポジティブな提案になる
・未来的期待値コントロールが出来る
・双方にとって想像力の底上げが出来る
・コミュニケーションの架け橋になる

クライアントの業種、規模、文化によっては様々なケースがあると思いますが、制作サイドのみならずクライアントの姿勢にも何かしら変化が起こる(かもしれない)お土産提案。

お気に召したら、どうぞお持ち帰りくださいませ。

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