【創作大賞感想】初めての死と夏の星空～美しい文章を添えて～
くまさんが書かれたこちらの記事を拝読しました。
～以下、勝手にあらすじ～
☆☆
くまさんが小学５年生の時のことです。祭礼のお囃子の稽古を終えて、お母さまそして妹さんと３人で公会堂から自宅までの帰り道でした。くまさんはお母さまから「おじいちゃん、もうだめかもしれない」と唐突に告げられます。いつも気丈だったお母さまの涙ぐむ姿を見て、くまさんはとても動揺されたそうです。
大好きなおじいちゃんがいなくなる不安とお母さまが泣いているという現実に押しつぶされそうになるくまさん。
思わず見上げた空にはさっきと同じ場所にいた星がぼやけていました。
お爺さまはその年の祭礼が終わった日の夜にはお亡くなりになられました。この出来事がくまさんにとって初めての”お身内の死”だったとのことです。
それから30余年。結婚して親になられたくまさんはご実家へと行くためにあの頃と同じ道を歩みます。シンとした夜道、シャッターが下りてる魚屋さん、建て替えられた公会堂。あの時とあまり変わらない道を歩いてご実家に着いたくまさんをご両親が笑顔で迎えます。シワが増え白髪が多くなったお二人に、「いつもいる、いつもあるのが当たり前ではない」と思いを馳せるくまさん。
帰り道。空をふたたび見上げると、はっきりと光輝く星がくまさんを照らし続けていました。
☆☆
お爺さまが亡くなられた夏の日の星空とそれから30余年経った現在見る星空がリンクしていてとても素敵な思い出だと思いました。
お身内の死という悲しい出来事ですが、それが悲しいだけで終わるのではなく命は続いている、続いていくのだと教えてくれているように感じました。
きっとくまさんが綴る美しい文章がそうさせてくれているのでしょう。そう、本当に美しい文章なんです。
普段からくまさんの記事を読まれている方なら共感してくれると思いますが、くまさんの書く文章は本当に美しいと思います。
もちろん記事の内容が素晴らしいのは言うまでもありませんが、言葉のチョイスやそれをどのように繋ぎ合わせるかまた切り取るのか、そして文章に情緒があり、熱も帯びている。それでいて決して難解ではなくスッと胸に落ちてくる。読んでいると心地よさを感じていつも何度も読ませてもらっています。
特に今回の【星がぼやけた日】は本当に素晴らしいと思いました。
たとえばこの場面。
「あのね、おじいちゃん、もうだめかもしれない」
私は一瞬、母親が何を言っているのか理解することができなかった。しかし、じんわりと私の中に重くことばが迫ってきた。私は母親が不意につぶやいたことが、何を意味しているのか、うっすらと手触りを感じはじめていた。
”言葉”ではなく”ことば”と表現されるのが本当にニクい。深刻な事実を伝えようとしていますが、”ことば”と柔らかく表現することでお母さまのくまさんへの配慮が読み取れるような気がします。そして「うっすらと手触りを感じはじめていた」という一文。
僕ならきっと「うっすらと感じはじめていた」くらいになっていたと思いますが、”手触り”が入る事でよりリアリティを感じます。すげえぜ。
さらにこの場面。
あの湿度を伴った夜と、お囃子のお稽古のひびきと、横笛の軽やかなメロディ、青年会の酒盛りと子供の声。指の感覚がなくなるパピコの冷たさ。電灯の影と光。
あの湿度が伴った夜！なんて綺麗な表現なんでしょう。言うのも野暮ですがお母さまやくまさんの涙を意味しているのだと思います。ホント野暮でごめんなさい。
後に続く文章たちがあの夏の日の情景をはっきりと思い起こしてくれます。
そして最後の場面。
祖父のいのちはまだ生きている。
この街の熱気はふたたび戻ってくる。
私はこの街で生きていく。
帰り道。空をふたたび見上げた。
はっきりと光輝く星が
私を照らし続けていた。
このラスト、好き過ぎます。もう何も言う事はありません。ぼやけていた星でしたが、僕の頭の中には綺麗な星空がはっきりと映し出されました。そしてそこには死んだじいちゃんが笑ってくれています。
#もちろん僕のじいちゃん
本当に美しく素敵な文章で綴られているこの記事。是非ご一読ください。拝読後頭の中に星空が浮かんだあなたは立派な※くまラーだと思います。
※くまラーとはくまさんファンの総称である
くまさん、今回は素敵な記事をありがとうございました。
お爺さま、そしてご家族との素晴らしい思い出を何度も読ませていただきました。
”死”という重いテーマにも関わらず、読み終えた後に決して暗い気持ちにならないのはくまさんの文章の力だと思っています。本当にすごい人です。
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