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【創作】プレゼント②
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
■1994年7月20日
暑さが増す7月、海沿いの小さな街のある夫婦にとても可愛い女の子が産まれました。
ずっと子供が欲しかった夫婦は涙を流して喜び、その子に『ユミ』と名前を付けました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
私は驚いた。
名前も同じだが、誕生日まで私と同じだったからだ。
私は急いでページをめくった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
■1996年3月9日
「まぐろぉー!」
ユミちゃんは初めてしゃべりました。
漁師さんのお仕事をしていたパパはこの言葉にすごく喜びました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
以前に母から「あんたが初めてしゃべった言葉は【マグロ】だったのよ」と笑いながら話された記憶がある。
その言葉に普段は寡黙な父がすごく喜んだということも、その時に聞いた。
間違いない。この本に書かれているのは私のことだ。
なぜこんな本が存在しているのか、なぜこれをあの少年が持っているのか、次々と疑問が生れる中、私は夢中でページを進めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
■1998年9月11日
今日は幼稚園の運動会。
かけっこが得意なユミちゃんはパパとママに喜んでもらおうと一生懸命走りました。
一番前を走ったまま、もう少しでゴールというところでユミちゃんは転んでしまいました。
大泣きするユミちゃんでしたが、パパとママに優しく慰めてもらい、とても嬉しく思いました。
そんなユミちゃんをパパとママはとても愛しく思いました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
■2001年4月5日
ユミちゃんは今日から小学生。
パパとママが見守る中、お友達と一緒に行進して体育館に入るユミちゃん。
ちょっと緊張してるせいか、手と足が一緒になっています。
一生懸命直そうとしますが、やっぱり一緒になってしまいます。
恥ずかしそうに俯くユミちゃんをパパとママは微笑ましく見ていました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
4年生の時にクラスメイトの木下君とケンカして泣かせてしまったこと。
6年生の時に初めてバレンタインチョコをあげたこと。
中学、高校と本人の私ですら忘れていた思い出が本には書かれていた。
そしてそこには必ず両親のことも書かれていた。
高校を卒業したところで本は終わっており、最後にこう書かれていた。
ユミちゃんはパパとママからたくさんの愛情受けて育てられました。
「フフフ…」私は自虐的に笑った。
私の人生の歯車が狂いだしたのが高校を卒業してからだった。
それを書かないで終わるなんて、何が【ユミの物語】だ。
両親からの愛情を思い出して強く生きろとでも言いたいのか知らないが、そんな正論で強くなれるのなら、とっくの昔になっている。
「馬鹿馬鹿しい…」
そう言って本を捨てようとした時、ふとあの少年の言葉が頭に浮かんだ。
「それじゃ、また明日」
私はその言葉が引っかかり捨てようとした本をそっとテーブルの上に置いた。
(つづく)
※原作:BUMP OF CHICKEN プレゼント
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ゴールデンウィーク中に完結を目指しております。
休み中のお暇つぶしになれば幸いです。
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