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マジックミラーに御用心

子供たちにパラリンピックの観戦機会を提供する『学校連携観戦プログラム』に「感染リスクがある」等の反対意見が出ているようでしたので、「各学校の体育館とかにでっかいモニターを設置してパブリックビューイングみたいなカタチにすれば現地に行かなくても観戦できるのにね、バカなのかな(笑)」と自信たっぷりに奥さんに提言したところ、「感染リスク全く変わってないだろ」という至極真っ当なツッコミを受けました。#バカは僕でした

こんにちは、コッシーです。


さて、うちの入居施設の食堂は全面ガラス張りになっており外を見渡せる構造になっています。

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ただ施設は道路に面しており、日中などは結構人通りがあるため、外から施設内を見られるのはあまりよろしくないということで、マジックミラーにしています。こちらから外は見れますが外からはこちらが見られない仕様になっています。

マジックミラーはミラーというくらいですから、中が見えないことに加えて鏡としても機能しますので、外を歩く人たちがうちの施設のマジックミラーを見て身だしなみや髪を整えたりする姿をよく拝見します。

人間とは不思議なモノでほとんどの方がマジックミラーの構造を理解されていると思いますが、自分から見て中が見えていないと逆から見られているという感覚にならないんですね。

マジックミラーで身だしなみや髪を整えてキメ顔をする人たちはその裏でニヤニヤしながら見ている人がいることを自覚した方が良いと思います。


先日の話です。うちのマジックミラーを鏡代わりに使う人たちの中で、かなりの強者が現れました。

その人は50代半ばの男性の方で、ある朝にジョギングをされていました。ゆっくりしたペースでジョギングをしてきたかと思うと、うちの施設の前でピタと止まりました。

ジッとマジックミラーを見つめており、どうやらご自身の体型をチェックされているようでした。お世辞にも締まった体型とは言い難く、少々…いやかなりプックリされていました。

まるでモデルの様に様々な角度からご自身の身体をチェックする姿に僕らは笑いを堪えるのに必死でした。ちょうど朝食時ということもあり多くの入居者が食堂におりまして、皆さんニヤニヤ…いや微笑ましくその光景を見ておりました。

ほどなくして男性は横向きの角度のままジッとミラーを見つめてストップしました。どうしたのかと思っているとお腹のシャツを両手で掴むとペロンと服をめくりポッコリした見事なお腹をさらけ出しました。

その姿はまるでダイエット広告のビフォーのように滑稽で、僕も入居者も声を出して笑ってしまいました。

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こんな感じ


自分のお腹の状態を把握されたのか、男性はポッコリお腹をシャツで被い再び走り出し去っていきました。

その日から男性は定期的にジョギングをしてはうちの施設の前で止まり、お腹をペロンと出してマジックミラーでポッコリ具合をチェックするという工程を踏むようになりました。

失礼ながら僕らは男性に「ポッコリおじさん」という不名誉なあだ名をつけさせていただき、男性が通り度に「今日もポッコリおじさんきたね」と入居者と一緒に男性をニヤニヤ…いや微笑ましく眺めていました。


しかし何日か経った頃、僕はある事に気付き始めていました。僕だけではなくスタッフのほとんども気づいていました。男性のお腹が少しずつですが締まっていくのを僕たちは確かに感じていました。

1ペロン、2ペロンくらいではその違いは全く分かりませんでしたが、10ペロンを過ぎた辺りから、目に見えて締まっていくのが分かりました。

20か30ペロンを重ねた頃でしょうか、最初はみんなが笑っていたポッコリしていたお腹は、その面影を感じさせないくらい締まったお腹になっていました。

その頃にはポッコリおじさんを笑う者は誰一人いませんでした。もうポッコリではなく普通のおじさんと言っても良いくらいです。むしろ普通じゃなくてカッコイイおじさんです。

ポッコリを卒業されたおじさんは今もジョギングは続けられていますが、うちの施設の前で立ち止まることはもうしなくなりました。おそらくお腹を確認する必要が無くなったのでしょう。


【継続は力なり】という事をおじさんは僕らに自らの姿を持って教えてくれました。そんなカッコイイおじさんを僕は本当に尊敬しておりますが、ただ余計な事をしてくれたというか、とばっちりの被害にあっているんです。

ポッコリおじさんを笑っていた僕ですが、実は僕もお腹が少々ポッコリしており以前から「痩せないとなぁ」と思っていました。うちのスタッフからも「なかなか痩せませんね」とか「ちゃんとダイエットしてますか?」と言ったようにチクリチクリと言われていました。

その都度、スタッフ達のチクリチクリをノラリクラリと交わしていましたが、今回のポッコリおじさんの見事なビフォーアフターに感化されたスタッフ達からの口撃が激しくなってしまったのです。

「コッシーさんはあのおじさんの姿を見て何とも思わないんですか!」

「痩せる痩せる言って全然痩せないじゃないですか!」

「もう二代目ポッコリおじさんを襲名するしかないですよ!」

それはもうチクリチクリというレベルを超えており、僕の心にズシンズシンと響き渡り、これをノラリクラリと交わすことは難しくて、自宅の鏡の前でペロンペロンとお腹を出してはヤセロヤセロと呪文のように唱える毎日を過ごしています。

誰か僕のお腹にマジックをかけてへコましてください。(切実)


それでは良い日曜日を。

コッシー

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