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誰のための入院か

先日、うちの施設に往診に来てくれる先生の髪が紫色になっており、突っ込んでいいのかダメなのか分からなかったのでそのままスルーしましたが、後でスタッフに「あの髪は無いよねー」って言ったら、「少なくともコッシーさんには言われたくないと思うよ」って言われました。#ロン毛の悲劇

こんにちは、コッシーです。


さて、以前のnoteでも登場したことのありますが、うちの入居者のTさんは猫の幻覚を見られることがあり、「外に猫ちゃんがいるから外出したい」とか「部屋で飼っていた猫がどっか行っちゃったから探しに行きたい」と言われ外出を希望されることがあります。

当然、そのような状態の方を1人で外出させるのはリスクがありますので、何かしら理由をつけてお断りしていました。素直に聞いてくれる場合もあれば、怒る場合もありました。

初期の頃はその対応に苦慮していましたが、偉いもので年月を重ねると段々と対応方法が分かってきます。

Tさんが「猫を探しにいきたい。外出したい」と言われたら、まず「猫は遠くにいるから1人では危ないよ」と伝えます。そうすると「あらそうなのね」と納得される時と、「放っておいたら猫が死んじゃう!」と納得されない時があります。

納得されない場合は、「娘さんに聞かないとこちらで勝手には外出許可できないんです」と伝えます。そうすると「あらそうなのね」と納得される時と、「じゃあ娘に電話して!」と納得されない時があります。

納得されない場合は、娘さんに連絡をして娘さんからTさんに外出できない事を伝えてもらいます。娘さんから言われるとほぼ納得されます。

娘さんにまで連絡が行くのは10回の外出希望に対して1回くらいで、だいたい3日に1度くらいの割合で娘さんに連絡をさせてもらっていました。

ここ最近はそのような連携方法でTさんに対応しており、Tさんも最初と比べると幾分か安定しているように思えており、何となく上手くいっているように感じていました。


そんなある日、Tさんが娘さんと一緒に精神科へ定期受診をされる時がありました。

受診前に娘さんが「先生に報告したいので生活記録の写しをください」と依頼されましたので、3カ月分の生活記録をコピーして娘さんにお渡しました。そしてTさんと娘さんはいつもの病院へ行かれました。

それからしばらく経ち、何だかいつもより帰りが遅いね、と話をしていると1本の電話がかかってきました。相手はTさんの娘さんでした。

「先生に生活記録を見せたところ、精神が不安定ということでしばらく入院することになりました。また明日にでも荷物を取りにいきます」

ここ最近は安定しているように思えたTさんが、まさか入院するとは微塵も思っていなかったため、娘さんの電話に本当に驚きました。

僕ら素人には分からない症状があったのかもしれませんが、何か腑に落ちない感じがしてモヤモヤしたため、スタッフ間で事例検討をしました。

これから記載することはあくまでこちらで話し合った推察であり、個人を非難したりする気持ちはありませんし、本当のところは分かりませんので、予めご承知ください。


Tさんの状態を考えると今は安定をしており、入院をするのであれば初期の不安定な段階だったように感じます。

初期の頃も病院には受診しており、先生には施設内での状態を報告しておりました。しかしその時点では「しばらく様子をみましょう」という判断であり入院はしませんでした。

安定してきたこの時期に入院するのは一体どういう意図があってのことでしょうか。

あるスタッフの意見としては、詳しい検査をした結果、別の異変が見つかったのではないかという意見でした。

確かに病院内でどのような検査が行われどのような判断がされたかは詳しくは分かりせんのでその可能性は否定できません。しかしそのような事が行われたのなら少なくとも娘さんから報告があるはずです。娘さんからは特にそのような報告はないため、この意見に関しては現実味がないと思いました。


またあるスタッフの意見としては、こちらが思っているよりも娘さんの負担が大きく、Tさんからの電話が辛かったのではないかという意見でした。

なるほど、それは一理あると思いました。娘さんの立場になって考えるといつ母親から電話がくるか分からないため気が休まる時がないのかもしれませんし、電話の内容は「外出したい」と言う母親を説得することです。気が重くなるのも無理はないと思いました。


さまざまな意見が飛び交う中で僕が1番しっくりした意見は、【Tさんのための入院】という意見です。もう少し噛み砕いてお話します。

Tさんは初期の段階よりもこちらの対応等が慣れてきたせいか一見安定しているように思えますが、実のところTさんの中では初期の症状とあまり変化していません。つまりずっと「猫が外にいる」「飼っていた猫がいなくなった」などの状態のままなわけです。

こちらがTさんの対応に上手くなっただけで、Tさん自身の悩みはまるで解決されていないのです。おそらくこのままうちの施設にいても、一見すると安定的に暮らしているように見えますが、ずっと同じ状態、いないはずの猫が見えている状態が続いていたと思います。

それならば入院をして、その結果Tさんが猫の幻覚を見なくなったとしたらそれはTさんにとってとても意味のある事だと思いました。

今回の入院理由は【Tさんから猫を消すため】だったのなら、個人的にはとても嬉しく感じました。


くどいようですが、実際のところは先生に確認をしておりませんので分かりません。あくまで僕らの推測であり、こうであったら良いなという願望でもあります。

いずれにせよ、今回の入院がTさんにとって良い結果をもたらしてくれることを心から願っています。


皆さんはどう思われますか?

過去にこういった事があったよという体験談や自分はこういう風に考えるなどの意見を聞かせてくれるとより今回の事案の内容が深みを増すと思います。

良かったら聞かせてください(^-^)


現場からは以上です。それではまた。

コッシー

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