見出し画像

【創作大賞感想】確かに僕もいた場所

高校2年生の2学期が終わるころ、僕はサッカー部を退部しました。表向きの理由は足の怪我でしたが、本当はレギュラーどころかベンチにも入れない惨めな自分を認めたくなかったからでした。
小学生からずっと続けてきたサッカーを辞めた僕は人生の目標を見失ったかのように全てのことに対してどうでもよくなりました。冬休みが終わり学校が始まってもまともに行きませんでした。このままフェードアウトしようと僕は思っていましたが父親から説得されて、再び高校に通うことを決めました。
その決断をした時にはもう3学期も半ばを過ぎていました。正当な理由もなくただサボっていただけの生徒をすぐにみんなと同じ教室で授業を受けさせるのはいかがなものかと学校側が判断をして、僕は登校してもクラストメイトとは別の場所に行くことになりました。

そんな僕の居場所が図書室でした。

当時は先生だと思っていたましたが、図書室には司書さんが一人勤務されていました。高校をサボっていた男子生徒なんて、ともすれば近寄りがたい存在だと思います。でも図書室の先生(当時はそう呼んでいた)は全然違いました。
僕が図書室に通学する理由を知っていたかは分かりませんが、特に詮索することはせずとてもフレンドリーに話しかけてくれました。
図書室で特にやることがなく暇を持て余す僕にいろんな本を薦めてくれました。

とんねるずの自伝や松本人志さんが書かれた遺書。僕が意外とミステリー好きだと知ると赤川次郎さんの小説やそして誰もいなくなった、十角館の殺人など、先生は毎日何かしらの本を選んで僕に渡してくれました。
先生が薦めてくれた本はどれも僕好みで面白くて夢中で読みました。僕が本を読むようになったのはこの時からだったかもしれません。

結局図書室にいたのは10日ほどでしたが、それでも僕が腐らず真面目に学校に通えたのは間違いなく先生(司書さん)のおかげだと思っています。


ミーミーさんが書かれたこちらの記事を拝読して、当時のことを思い出しました。

司書さんとして中学校の図書室に勤めていたミーミーさんのある日の1日を淡々と綴られています。
いろんな事情やいろんな想いを持った本当にいろんな人たちが図書室を訪れます。そんな人たちをミーミーさんはいつも温かく迎え入れます。心に土足で踏み入れるような余計ことを聞いたりは決してせず、とても自然体に接しておられました。

きっと中学校の生徒さんや先生方はミーミーさんのことが大好きだったろうなと想像できます。
特に教室に居場所がない、かと言って家庭にもいずらい、そんな生徒たちにとってミーミーさんのいる図書室という開かれた場所が存在あることにきっと心から安心しただろうなと思います。

そんな図書室に僕も確かにいたな、と思います。

学生だった頃は、学校に図書室があって当たり前だと思っていました。けれど図書室や司書さんの存在に知らず知らずに救われていたのだなと思いました。
そしてミーミーさんが言うように全国の全学校に気軽に立ち寄れる「誰かいる場所」があればいいなと僕も思いました。


ミーミーさん、いつも素敵な記事をありがとうございます。おかげで忘れていた当時のお世話になった先生(司書さん)に感謝をすることができました。
多分、ミーミーさんのような笑顔が素敵な女性だったような気がします。いや絶対にそうだったと思います。もうミーミーさんだったと思う事にします。
#それはやめとけ


#創作大賞感想
#ミーミーさん
#誰かいる場所

この記事が参加している募集

#創作大賞感想

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?