成層圏のからくり細工

俺は堕ちている。高度20000mの虚空から。
落下速度と共に風が勢いを増していく。びゅうびゅうと風が身体を撫でるせいで、生体部品の温度が低下し、冷え切ってしまう。壊死しない事を祈ろう。
寒さはない、俺はサイボーグだ。
8年前、ロシアを前身とした人工知能主義国が生み出した史上最大のコンピュータ『マザー』。つい先ほどまで、俺はその内部に潜入していた。
掴んだ情報は、あまりに深刻なものだった。
人類とロボットは、人類が高性能バッテリーを提供し、ロボットは労働力を提供することでパワーバランスを取っていた。
だが、ここ数年は人類側のバッテリーの出し惜しみが目立つようになってきていた。我慢の限界に達したマザーは、ある計画を実行に移そうとしている。
人類を侵略し、捕らえた人間を生体バッテリーに加工する計画だ。この計画を知っている人類は俺一人。
何としてでも生きのびて、情報を持ち帰らねばならない。

【続く】

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