感染源の俺と白い彼女

東京は死んだ。俺の手によって。
16歳の誕生日。俺は空気感染する殺人ウイルスを媒介するコロニーになった。感染範囲は俺から約10㎞。菌を一つでも吸い込めばアウト。
感染すれば、体中にぶつぶつが出来て、血を吐きながら死ぬ。
そんな風に人が死ぬのを、飽きるほど見てきたからよく知っている。
自衛隊や特殊部隊が俺を殺そうとしたが、俺は必至に抵抗した。
パニック状態で混乱する群衆に紛れて逃げ延び、特殊部隊は防護服の中に手を突っ込んで一人ずつ発症させて殺した。
おかげで、東京には俺以外の人間はいなくなった。酷い死体の匂いだが、一人というのは気分がいい。
ある時、俺は病院の中に入った。意味はない、興味本位だ。
病院の中に入ると、驚いたことにナースコールが鳴っていた。
生きている人間の気配にドキドキしながら、俺はその病室に向かう。
少女がベッドの上にいた。白い肌に、白い髪。この世の者とは思えないくらい美しかった。

【続く】

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