地獄狩りの魔剣

地獄の門が開き、グラム王国は災禍に呑まれた。
絶対的な正義の象徴たる白銀の都市は、地獄の炎の前に溶解して崩れ落ちた。門から這い出たインプたちが、逃げ惑う市民をつかまえると、鋭いかぎ爪で目玉をえぐりぬいては、それを飴玉のように口の中で転がす。
オーガの怒張に股を裂かれて泣き叫ぶ母親の前で、ガーゴイルが赤ん坊を生きたまま喰らう。
人間の血と苦悶が捧げられ、地獄の門はさらに広がりを増す。
巨大な斧を担いだデーモンが門をくぐり、抵抗する騎士団を虫けらのようにすり潰し、蹂躙する。ヘルナイトの巨大な剣が、人間の稚拙な剣技を笑いながら傭兵をミンチに変える。
顕現した地獄によって、人間は絶望の中でもがき苦しむウジ虫以下の存在になり下がった。
その時、白銀聖堂の最深部では、一振りの魔剣が戦士によって抜かれようとしていた。忌まわしき魔剣の名は、スカージ。かつて王国を血の海に沈めた、悪魔のごとき剣だ。

【次のページ】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?