パルプ・ファンタジー

大体の物語は酒場から始まる。この話の場合は、トーラスの町の一軒の酒場から始まった。
ダンとニーナはその酒場で一番安い昼食を頼んで、向かい合って食べていた。
「この肉、ひどい味だ。腐りかけじゃねえのか?」
「ちょっとダン。失礼でしょ。銅貨3枚でこれだけ食べられれば十分じゃない」
「いーや。分かってないな。全然分かってない。ドルクの街を知ってるか?」
「あの城下町の?」
「あそこには王様の食事に出されるような肉が毎日運ばれてくるんだ。黄金色に輝くような、上物の牛肉がな」
「でも、そういうのって市場には出回らないんでしょ」
「ところがな、その肉がそろそろ腐りかけってなると、城の台所から町の食堂に肉が回ってくるんだよ。だから、あの町では銅貨2枚で分厚いステーキが食えるわけさ」
「素敵じゃない」
「だからよ、こんなクズ肉出す食堂から金を奪っても良心は痛まねえよな」
「その通りね」
二人は剣を抜いて立ち上がった。

【続く】

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