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【映画感想】お前は『ウマ娘プリティーダービー 新時代の扉』を見て勝利を渇望しろ(ネタバレ有)

俺だ、コセン・ニンジャだ。
お前は勝利を渇望しているか?
日々の生活の中で、なんでもいいから勝利を渇望しているか?
そして、その勝利の意味を考えたことがあるか?
俺は考えたこともない。
人は日々、すべきことを成し、毎日それを繰り返すだけだと考えていた。
だが、ウマ娘の映画がその認識を覆した。
確固としたストーリーライン、磨き上げられた演出、ひたすらストレートにぶん殴ってくる展開。
錆びついた闘争心に訴えかけてくる、まっすぐなメッセージ。
今日は、『ウマ娘プリティーダービー 新時代の扉』の話をしよう。

あらすじ

自由気ままなフリースタイル・レースで、
最強を目指して走り続けてきたウマ娘の少女、ポッケことジャングルポケット。
気まぐれに観戦した<トゥインクル・シリーズ>のレースで、
フジキセキの走りに衝撃を受けたポッケは、
自らも<トゥインクル・シリーズ>に挑むことを決意する。

ウマ娘たちの集う『トレセン学園』に入ったポッケは、フジキセキを育てたタナベトレーナーのもと、
一生に一度しか挑戦を許されない『クラシック三冠レース』に挑む。
そこに待ち受けていたのは、ポッケをもしのぐ実力をもつ同世代のライバルたちだった。

ひたむきな思いを胸に実直に努力を続ける、ダンツフレーム。
自分にしか見えない『お友だち』を追いかけて走る、マンハッタンカフェ。
そして、ウマ娘の可能性のその先を求めるマッドサイエンティスト、アグネスタキオン――

自らの誇りと、意地と、魂をかけて走るウマ娘たち。
熱く激しいその戦いが、新たな時代の扉を開く。
(公式ページより)

https://movie-umamusume.jp/


ウマ娘とは

この映画を見る上では必要ない。おまえは既にゲームをプレイしてるか、観た後はだいたいアプリをダウンロードしてるはずだ。
必要最低限に言うなら、競走馬の魂を持って生まれた少女型の生き物だ。
車より早く走り、100kgのバーベルを軽く持ち上げる力がある。
要するに、ウマの身体能力がヒトに宿ったような生物だ。
だが、だいたいは、元の魂の競走馬の運命に支配されている。
だから、ゲーム中や映画では史実のレース通りに事が進み、怪我とかも史実通りに起きる。
ウマ娘が、運命から逃れるのは難しい。
ネタバレ有なんてタイトルに書いてあるが、『こんな前置きなんてどうでもいいから結果だけ知りたい』とか言うやつは、帰ってWikipediaとか見て分かったフリをすればいい。
おれは、ウマ娘の本質とは、こちらの世界では決まっている結果に到達するまでの『過程』と、ウマ娘たちが抱く『意志』だと思う。
ウマ娘のことを、決められた定めに沿うだけの運命の奴隷と見るか、あるいは目の前のゴールにひたむきに走り続けるロックンローラーと見るか、それはおまえ次第だ。



どんな映画か?

『ウマ娘?の映画?オタク向けのなまっちょろいやつだろ?』おれもそう思った。だから、脳髄をガンガン叩く直感を無視して、ふて寝を決め込んだ。すると夢の中にグレートソードを担いだ騎士が現れて言った。
「おまえはロックンロールから目を背けるのか?」
おれは言った。
「既に決まった運命に意味はない」
「おまえは最後には死んで、骨になり、塵になる。それは決まった運命だ。おまえに意味はあるか?」
「おれの生きた証が残る」
「それを見る者がいなければ?」
「それは、悲しい。とても悲しい」
騎士は兜を脱いだ。その頭には、ウマの耳が生えていた。まなざしは優しかった。
「分かったか?」
そして目を覚ました。おれは映画館に行った。

一言で言えば、「こちらが参ったと言うまでストレートでぶん殴ってくる映画」だった。
ストーリーラインは簡潔で、なおかつ強度が高く、そこに溢れんばかりの演出と情緒を詰め込んでいる。
ポッケは最強になりたいと願った。から始まるストーリーは、その最強に至らんとする意志が物語を牽引し、並み居る強敵たちとのバトルへと導いていく。
バトルの中、ポッケに襲いかかる敗北の味、越えられない壁、戦う機会を奪われたライバル、鎖のような想いのしがらみはポッケの足を重くしていく。
そして、立ちはだかる世紀末覇王。
そこからどのように、ポッケは自らの意志を固め、剣を研ぎ直し、戦いの場に出陣するのか。
これはそういう物語だ。
特に秀逸だと思ったのが、中盤あたりに挟まれる清涼剤めいた夏合宿シーンで、海でバカンスしたり、夏祭りで遊ぶシーンが出てきて、観てるほうは楽しそうだな、と思うのだが、ポッケはそんな時でさえも、タキオンがいなかったダービーに縛られて、全然バカンスできてないというのが、ポッケの内心を巧く描写する材料にしていてすごいと思った。

最後に

この物語のテーマは、「想いの継承」だと思う。
フジキセキはポッケにダービーウマ娘になることを託し、タキオンはポッケにスピードの向こう側を見ることを託す。テイエムオペラオーも、頂点にいながら、ライバルたちに強敵たらんことを望むのも、その一つだと思う。
ただ、一番何かを託しそうなタナベトレーナーがあえてポッケに何も託さずに、純粋にポッケを見守り、助言を与え、フジキセキと再出発するのは印象的だった。
そして、もう一つのテーマは「勝手に想いを託して舞台を下りた気になってないで、お前もこっちに来て戦え」だと思う。
「弥生賞が膝に刺さってしまって」みたいな、常に引退戦士めいたことを言うフジキセキ。
「プランB?ああ?ねえよんなもん」と言ってやりたくなるアグネスタキオン。
お前ら勝手に舞台を下りてんじゃねえ、戦いたいって気持ちが駄々洩れなんだよ、戦いてえなら戦いてえって言えよ!!!
骨肉をすり潰すくらい走りたいなら走りたいって言えよ!!!
史実?いいだろウマ娘だぜ?そもそも世代が違う奴らが同じ学年だったりするから今更なんだよ!!!
そう思いながら映画を見続け、ラストシーンで4人がそろい踏み、あえて着順を明かさないライブを開いたところで、感極まってしまった。
良い映画だった。

『ウマ娘プリティーダービー 新時代の扉』。アプリゲームが原作のアニメだと侮るやつは全員観に行くべきだ。そして、強靭な本筋の強さと、令和アニメの演出の凄みを全身に感じながら、彼女たちの生き様を存分に味わうのだ。

ただ一つ、アヤベさんをふわふわ廃人にしたのだけは個人的に頂けなかった。ああいう要素はささやかだからこそ良いと思う。



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