ブラックアダム見てきました【多少ネタバレ】

ロック様の映画。
とだけ言ってしまうと全部終わってしまうけど、とにかくブラックアダムが人をぽんぽん吹っ飛ばすのを楽しむ映画。
俺はアメコミのブラックアダムを知らないから、アメコミファンが今回の映画をどう思うのかを知らないけど、何も知らない俺は満足した。
そもそもロック様って、ワイスピとかランペイジとか出まくってる筋肉モリモリマッチョマンだけど、アクション映画でもなんか常人の範疇というか、シュワちゃんのコマンドーみたいに神格化されるようなアクションをすることってイマイチない気がするというか、スーパーコンボでの活躍をもっと大掛かりにしてほしいみたいな欲求があった。
今回のブラックアダムで、その自分勝手な欲求が完全に満たされたってわけです。
なんかソー・ラブ＆サンダーの冒頭みたいな恰好の奴隷集団とか、ヒーロービギンズ映画のお手本みたいなブラックアダムの過去とか、圧制されてるとか言うけどただ検問敷いてるだけでイマイチ圧制感のないカーンダックとか、そういうコマゴマした背景とか設定とかは、全てブラックアダムがひたすら人をポンポン吹っ飛ばし、電撃バリバリするための動機付けの道具すぎていっそ清々しいくらいに影が薄い。そもそも検問敷く理由薄いだろ、経済止まる方がデメリットでかいだろ。
というか、ロック様の大暴れアイデア案をとりあえず全部採用して、残った部分を補わせる感じの部品というか、とにかくブラックアダムを見ろ！みたいな。
ヒーロー集団（JSA）も、それぞれのキャラは立ってるし、それぞれ魅力的なんだけど、彼らのドラマを描く尺を全てブラックアダムに注いでるという印象。このキャラとこのキャラは付き合い長いんだな、このキャラとこのキャラはなんかいい感じの雰囲気じゃん、みたいなのはあるけど、それはもう観客の想像にぶん投げて、とにかくブラックアダム。ブラックアダムを見ろ。そういうメッセージが伝わってくる。
ヒーローたちがお互いに内面を吐き出して、絆を結び、最終決戦に挑む。という流れは、スースク２を連想させたり。
ブラックアダムは、媚びないしタフだし電気ビリビリで強いっス、子供には優しいけど単独で突っ走ってパワープレイしちゃうし、悲しい過去を背負っていてナイーブなところもあるし、根底は善性なんだけど自身の戦いに疑問をもっていて、精神力も強くて助けを求める声に応えて生身でも戦って勝つぜ……などとにかくブラックアダムを描いている。
ケントことドクターフェイトの活躍がベテランヒーローないぶし銀で、それを演じる、ピアース・ブロスナンが終始落ち着いてるおかげで、暴力バリバリ電気ビリビリなブラックアダムを、見事に際立せているのもよし。
とにかくブラックアダム！ブラックアダム！それがあまりに徹底的で、ラスボス格の敵が昔の王の祖先だとか悪魔の力を使うようんぬんは全て弁当のお新香以下のものでしかなく、とにかく強い敵に立ち向かうぜブラックアダム！という構図を作るためのセットでしかない。
ステーキ肉を牛刀でぶった切るような大味な映画なんだけど、これを作ったのがあのDCっていうのが、感慨深いものがある。
ブラックナイトのクライマックス、ジョーカーを尋問したバットマンはジョーカーに告げられる。
「選べよ、どちらか一人だぜ」
結局、バットマンは選んだ結果、全てを失い、傷ついた心を黒い鎧に隠してジョーカーと対決する。
そういう暗い、とにかく暗い過程を経て、決戦に挑むバットマンととにかく対極に位置する場面がブラックアダムにはある。そのシーンが底抜けに明るくてノリが軽いんだから笑ってしまう。
ていうか絶対それのパロでしょあのシーンは。
とにかく全編に渡って明るい映画を作りたいのがひしひしと伝わってくる。
暗いドラマに囚われていたDCが、ついにその呪いから解き放たれたとでも言うべきか。
あのスースク２も十分に明るかったんだけど、ラスト付近はなんか影がかかってるというか、傷だらけの男が鼻血だしてハアハアな感じがでちゃってたというか、もうそれがDCの持ち味なんだなと思ってたけど、今回は吹っ切れ方がすごかった。ありがとうございます、ドウェイン・ジョンソン。
この後、シャザムと戦うらしいしブラックアダムには期待しかない。
というか、脚本からしてシャザムと正反対なんですよ。
いじめっ子と辛い学校生活のミニマルな世界観の中でもがく少年が、シャザムの力を授かるけどそれでも現実の壁は厚く、他人との関係で苦しむと、ブラックアダムが国家の抑圧というデカい敵を一方的にボコボコにしちゃうのは、もはや決められたように正反対だと思う。
今の現実で苦しむ少年と、過去の記憶で苦しむ男。
老人から祝福を授かる少年と、息子から呪いを授かる男。
六人のチームと単独最強。
うわー、こりゃコトだぜ。シャザムとの戦いにますます期待がかかるな。
というか親に捨てられた少年に対してブラックアダムが本気でぶん殴れるのか分からんし、なんならアイスクリーム買ってあげて腹を割って話し合っちゃいそうだけど、それはそれで期待だぜ。
とにかくブラックアダムは、ＤＣが過去最高級にハジケて作った最強娯楽映画ってことで。