「ATELIER NUK @IWATE」2016.6~2017.01 岩手での活動拠点。

画像1 この場所には、自分の祖父を中心に、家族総出で海産物の加工をしたり、煎餅屋をしたり、 様々に用途を変えながら、大切に使われてきた、小さな建物が建っていた。  思い出の詰まったその建物も、東日本大震災の被害を受け解体された。  建物の価値は、大きさや目に見える豪華さではなく、
使われる時間の中で、共有される思い出の多さが、 それぞれの価値へと繋がっているのだと思う。  この思い入れのある場所を、次の時代に引き継げるような建築を目指した。
画像2 1、日々変化のある時代の中、フレキシブルな空間で、柔軟に生きる手掛かりをつくる。2、人が生活していく上で必要最低限の性能・物質で、コンパクトな生活空間を造る。 
3「最低限の物質」について掘り下げることに責任を持つ (津波によって破壊され、そのままではゴミとされてしまうものの発掘と再利用。新たに必要となる木材は、地域の山から。木こり、製材所、加工、全ての人と関わる事。顔の見える近い人達と、コンパクトだが確かな経済活動を実践する。)多目的フリースペースから。普段は閉じている壁全体が開くように設計。
やま2 地域の山に入り、木を伐採する(間伐作業参加) 建築の歴史や技術を取り入れるのは大切であり、勉強を重ねる事は必要だ。
しかし、それ以上に 自分は、そこに関わる人の生活や、熱量、心意気、言わば、生き方を習得していきたい。 知らないことを体感し、学ぶことをしたい。

目の前に届く物体としての価値の中に、 自分の感覚としての素晴らしさを、たくさん見つけられることが喜びに繋がっている。 そう信じているからこそ、 人や、場所に関わる瞬間に生まれ得る「経験」を大切にしていきたい。
画像4 山から切り出された木材を、流通するのも大きな役割。 一つとして同じ場所がない山の形状から、重量のある木材を引き出し、 運搬することは、想像以上に、知識と、経験が必要で、代替えできない大切なものである。
画像5 重機を入れず、森を痛めることなく搬出できる「馬搬 ばはん」、
岩手県遠野市では今でも大切に伝承し続けている方がいる。(馬搬紹介:https://youtu.be/P6z7zQNYPKI
製材所 木を見極め、確かな経験から材料を木取る。
長十郎さん 製材所も機械化される中、細かな要望に答えてくれるのは、人として繋がってくれる人ならではだと思う。
 お昼休憩時は、ここの休憩所のだるまストーブで餅や、魚を焼いてご馳走してくれた。
 人生の先生は、厳しいが、深い優しさがある。
画像8 そうして繋いでいただいたものを、一本一本墨を付け、刻み、組み上げる。 生産性を追う時代では、無駄な行為のように排除されがちだが、自分にとっては、材料と、自分とじっくり向き合う大切な時間。
画像9 事務所内側より。 普段は壁として閉じる。
画像10 小屋裏スペースの空間は、天井の圧迫感を体感的に和らげるために ムクリ(上方に弓なり曲線を持たせる)をつけ、外観にも反映させた。
画像11 小屋裏スペースに高窓を配置。
・南からの採光を奥まで届ける。 ・夏の熱を、自然換気によって上方に通す。
・屋上への出入り口も兼ねる。
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画像14 屋上は母屋2階リビングからアクセス可能。
母屋との関係性を元に、共有スペースを作ることで、使用方法も広がる。
画像15 最小限のキッチン・ダイニングスペース

食をつくる大切な空間は、一つとして同じじゃなくてよい。 高さも、配置も、自分らしく、使いやすいものが一番だ。 もっともっと自由でいい。
画像16 冬の景色
画像17 生活の光が漏れることで、内と外が柔らかく繋がる。 色々な形として、人と人が繋がる場所に育てていく。

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