職住一体の暮らし 「漁師の家」 3 佐々木 幸史郎 2020年4月25日 03:56 岩手県リアス式海岸の集落。 起伏の激しい山と海のつながりを感じられる傾斜地への建築。 先祖代々、漁業を生業とする暮らしを受け継ぐご家族の住居兼作業場。 住まうことを目的とした生活空間と共に、密接に生業空間が必要となる。 2つの領域が、程よい距離を保ちながら共存し、一つの暮らしとして成り立つことを軸に、設計を進めた。 夜が明ける前から船を出し、沖合から海の幸を収穫し、港へ運ぶ。 運ばれた海産物を、湯を使った下処理作業する。 極寒の朝に、 男の熱気と、湯気で港全体が包まれる。 港で下処理をした後に、作業場へ場所を移し、近所のお母さん方の手を借りながら、一つ一つ細かな作業をする。 一階に配置される作業場は、近所の人とのコミュニケーションの場としても機能し、お茶を飲みながらの笑い声が聞こえてくる。 作業場と隣接して、奥には事務所兼・休憩場所が配置されている。 ここが、住居と、生業の場の中間領域として機能する。 段の仕事の時間と生活が、 意識的に区切れるように、一階と二階にフロアを分け、 尚且つ、室内を通って生活空間にアプローチできないように、あえて外階段とした。 ・住みやすい環境を作ること このプロジェクトのような場合、 仕事から離れ、リラックスして日々暮らせる空間をどう確保するかが大切だと感じた。 「程よい距離を、分かりやすく保つこと」 同じような観点としては、 どんなに景色の良い場所に配置しても、近所の目線が気になるからと、年中レースのカーテンを閉めている。 リビングが南側だから、明るくしたいと、大きな開口部を開けるけれど、そこは大きな幹線道路だったり、人通りの激しい道に面していたり。 開放的にするつもりが、逆効果になっているんではないかと思うような建物を目にする。 基本的に、目隠しレースのカーテンはいらない工夫をする事は設計段階で検討を重ねる。(この物件では、二階の住空間と外からの目線を、跳ね出しのデッキで遮ることとした) ・敷地形状を読み解く道しるべとした部分 ベテラン漁師である旦那さんは、毎朝その日の天候・風の動き・潮の流れ、それらを経験と勘によって読み取り、漁に出る準備を始める。 この大切な材料になるポイントが2つ。 生活の流れの中で、海を目視すること。 沖合だけではなく、船着き場の自らの船の状況も見えること(波が高い時などは最重要) この両方が見えて初めて判断材料となり得る。(生活導線との関わりを考慮した配置計画の検討を重ねた) 配置計画を進めていく中で気がついたことがあった。 目視できる設計配置であるということは、海に出る旦那さんの安全な漁を想い、祈りながら待つ、奥さんや子供達からも海が見え、安心へと繋がるということ。 これがいずれ、お子さんが大きくなり、お父さんを師匠として海に出る日が来る時には、さらに大切なことになるのではないかと思った。 世の中の職業の中で自宅の家族と、働きに出る家族が自らの目を使って繋がり、それが直接的に安心へと繋がるようなことはなかなか、ないな〜と。 命をかけた海の仕事をする家族の住まいを設計させていただくことがなかったら、考えもしなかったかもしれない。 と、改めて関わらせていただいたことに感謝した。このなんでもないようなことが、普段の生活の中に、自然に組み込めるようにシュミレーションを重ねた。 模型と図面、モックアップを作る(二階床から水平に張り出したデッキ部分が、隣地からの目隠しとなる寸法と、構造の強度のバランス確認) 大安・吉日着工〜基礎工事 基礎としては高めのコンクリート部分。 これは傾斜地特有の土留めを兼ねている。 残土処理などの無駄を最小限にすること、作業場として水を大量に使用することを考慮して、防水、排水、メンテナンス性など、多数の利点合理化を図った。 建て方 背景の緩やかな山並みと、屋根。 外部・鉄骨階段(工場から現場設置のドキドキ感.1) 1F 休憩室 2F LDK 2F 和室からLDK 家の周りを囲む回廊 #生活 #暮らし #建築 #ATELIERNUK 3 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート