いってきます

3時間経っても眠れないので観念して支度を始めた。シャワーを浴びて髪を梳き、ヘアオイルを揉み込んでドライヤーをかけ、仕上げにアイロンで整える。12歳から毎朝費やしてきたこの時間を勉強にあてていればスペイン語とか喋れたろうに、と思いながら焼けた鉄の板で毛束をはさみ込む。そのまま縦にすべらせると、天真爛漫に飛び跳ねていた髪々はジュウッと音を立てて整列した。
昨夜の暴食がたたって体が重い。でも大丈夫、冷蔵庫に飲むヨーグルトがある。ひとたび口に含めばつめたい甘さが胃に流れ落ちる端からすべての毒素が浄化され、私は数億個のビフィズス菌の乗り物になってなめらかに駆動する。行け行け、R-1プロビオ28号! というイメージを抱きつつアパートの扉を開けて夏空の下へ踊り出る。というイメージを抱きつつまだ布団の中にいる。

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