見出し画像

1.  初夢・どうなる21世紀の経済社会


 久しぶりに初夢を見たようだ。忘れないうちに書き留めておくことにしよう。
 21世紀の最初の年が始まった。さて、これからの100年間はどうなるのだろうかーそのような問いかけに応えるには、とても困難なほど急激な変化のなかで、世紀末をかけぬけ、新世紀を迎えてしまったようだ。
 とはいえ、未来を展望するには、「温故知新」とのことわざにあるように、まず20世紀の100年間を振り返ってみよう。
 すると、二つの世界大戦の記憶はもちろんのこと、経済に関係した重大事としては、1930年代の世界大恐慌、アメリカとドルを中心にした戦後の国際通 貨・貿易体制、朝鮮戦争とその後の高度経済成長、石油危機や爆発的なインフレーション、バブルの膨張と崩壊、旧ソ連・東欧の崩壊と市場経済への移行、欧州 連合(EU)の誕生と統一通貨ユーロの導入、巨大マネーによる地球的な規模(グローバル)での投機行動と連鎖的な各国経済危機の発生、そして、ますます急 展開してきた経済のグローバル化と情報化、といった事態が想起されよう。
 いうまでもなく、日本の経済社会とて、こうした世界の出来事と無縁ではない。むしろ、経済のグローバル化と情報化・市場化は、日本の経済社会と国際社会 との相互依存と一体化をますます促進してきているし、21世紀は、こうした傾向をさらに促進する100年間になるであろう、と推察される。
 そこで、20世紀の「遺産」として継承されることになる出来事について、もうすこし簡潔に整理して、21世紀の経済社会を読み解くガイドラインとしてみよう。
 まず、恐慌や経済危機などの資本主義経済に内在的な出来事は今後どうなるか。これは、どんなに政策的・人為的に回避しようとしても、資本主義経済である 限り、「市場の失敗」から逃れることはできず、形を変えながらも、出現していくことになろう。問題は、そうなった場合のセーフティネットをどう整えておく かにある。
 つぎに、アメリカを頂点にした国際経済体制も、20世紀の遺産であるが、たぶん、21世紀には、ヨーロッパ経済圏の成長、とくに中長 期的には、アジア経済圏のおおいなる成長が見込まれ、アメリカに代わって東アジアや東南アジア諸国の経済力とその影響がいっそう強くなっていくであろう。
 21世紀の世界経済は、アジア経済圏を中心に動いていくことは間違いない。なぜならアジア経済圏は、世界のモノづくりの主要基地になり、また所得水準の向上に対応して世界市場の最大の「胃袋」になるからだ。
問題は、日本が、過去の歴史を反省し、アジア経済圏のなかで、21世紀に大きな役割を担うことができるかどうかである。21世紀の日本 経済の発展のゆくえは、この点に関わっている、といってよいであろう。
  21世紀には、経済のグローバル化と情報化は、さらに進むので、世界各国で発生した経済事件は、良いことでも、悪いことでも、一瞬にして伝播する。当面の 問題点は、巨大マネーの利殖を求めた自由移動が引き起こす世界経済の不安定化、連鎖的な経済危機(職場と生活破壊の猛威)をどう回避するかにあろう。恒例 となったサミットは、こうした回避策を国際協調のもとで達成できるかどうかが問われる。
世紀末に世界経済を席巻した「民営化」・「市場万能」・ 「規制緩和」・「大競争」の大波は、各国経済の内部において、また先進国と発展途上国とのあいだにおいて、いままで経験したことがないほどの経済格差・所 得格差・貧富の格差を拡大してきた。先進諸国の美食と飽食の宴の背後で、発展途上国では一日ほぼ四万人ほどの餓死が発生している世紀末の現実を21世紀に このまま放置できないであろう。だとすれば、どのような解決策が検討されるのかが問われる。
 21世紀の焦点になる日本の経済社会の問題もある。 たとえば、それは、いままでのような経済成長型の「企業国家」でなく、まして「軍事国家」でなく、国民多数の豊かな生活をめざした「福祉国家」や「生活大 国」のための国造りをどう実現していくのか、また国内総生産高(GDP)を超えるほどに累積してしまった巨額の財政赤字をどうするか、先進国にはふさわし からぬ消費者無視・大衆投資家無視のお粗末な  経済ルール、野放し状態の廃棄物と環境破壊をどう改善するか、といった問題である。
 初夢といっても、ことほどさように、いずれも、簡単に解決できそうな問題ではない。長期にわたる慎重かつ大胆な改革が求められているようだ。そんなわけ で、いまは正月、ちょっと昼寝をしてから気分転換に散歩にでも行ってこよう。街に行こうか、野に行こうか、なにかいいアイデアが見つかるかも知れない。
 (暮れに、拙著『これならわかる金融経済ーグローバル時代の日本経済入門ムー』大月書店、を上梓しました。御高覧、御批評のほどを)

『群馬評論』第85号、群馬評論社、2001年1月、掲載。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?