見出し画像

逢魔ヶ灯鏡「Q/A」感想


未体験の方、ネタバレ回避されたい方は5/29までアーカイブ配信が購入できますので、どうぞそちらを。以下Twitterコピペ。
【【公演生配信のお知らせ】
逢魔ヶ灯鏡ツイキャスプレミア配信にて🎭
チケットは下記URLより
15日14:00【Q公演】 https://t.co/db5WelHgTF
18:00【A公演】 https://t.co/teByQUXDck
アーカイブは公演日より2週間ご覧頂けます。
扱い希望キャストはメッセージ欄へご記入ください。
#灯鏡QA
渡邊隆義さん扱いにすると特典貰えます。
さて。
最初の言葉でした。「これは愛の物語」。
あらすじ。
近未来の世界。人はリアルな接触を持たず、本名を名乗らず素顔をマスクで隠すのが当然。素顔は個人情報として厳重に秘匿される世界。その店「マスク・ア・レイド」ではマスクを外して素顔を晒しても、個人情報が漏れない秘密倶楽部。客たちはここでだけは素顔に戻り一時の安らぎを得る。そんな場所。
その店に今宵4人の客が招かれる。店に到着すると彼らはこう告げられる。「この店のオーナー、クイーンが息を引き取りました。孤独な人でしたが晩年奇跡のような出会いによって一人の人間を愛した。相手はマスクをしていたので素性はわからないが、クイーンはその相手に莫大な遺産を残した。ここにAIによって選出された最も「アリス」たりうる人物が4名。ここで3つの質問をクリアし、アリスと認定された人物にその遺産が贈与されます」と。
一人は公務員、ダイヤのカードを持つ男。
一人は美容師とその他諸々。スペードのカードを持つドラァグクイーンの姿をしたベティ。
一人はクラブのカードを持つ女性、IT関連。
一人は男装の女性?サービス業。ハートのエース。
店内には追悼式を取り仕切るマスター、クローク係のジャック、音楽を奏でる心ある物言わぬロボット・ピアノロボ、そして素性不明、白いドレス、年齢性別不明の無言で筆談しかしない美しい人形のようなフラワーがいる。
彼らはクイーンの追悼に献杯し、その夜が始まる…。


この作品で大いに注目されるべきは、登場人物のセクシャリティー。ほぼ全員がセクシャル・マイノリティとして描かれている。
ダイヤはゲイで旦那、すなわち男性のパートナーが居る。
ベティはマスター(女性)に恋をしていたシス男性だが、マスターが男がダメと聞いて自らドラァグクイーンとして女装しているがゲイではない。シス男性、性自認男性、恋愛対象女性、性表現女性(女装)。
クラブはシス女性だがパンセクシャル、性別関わらず恋愛対象であると公言しており、アリスに恋をしている。
エース。アセクシャル(恋愛をしない性)。性自認女性、性表現男性(男装)恋愛対象なし。
そしてクイーン。性自認男性、性表現女性(女装)。恋愛対象は不明だが終了後の情報から考察するとパンセクシャルと考えられる。
彼らは所謂マジョリティーにはなれない人々であり、それぞれに愛する人を持つ持たずに関わらず、苦しんでいる。もしくは苦しみを知っている。
私が惹かれた人物はベティ。そしてダイヤ。
ベティに関してはもう、大輪の花のような生命力。相手の為に自分を変える柔軟性、勝負に打ってでる潔さと強さ、自分の気に入った相手へ示す厚い友情。デカいのに可愛い。明るいのに闇も知ってる。とても好き。仕草がとってもおしとやかで可愛い。おそらく自分で磨きに磨きあげた姿なんだと思う。
そして、ダイヤ。
公務員でサラリーマン。足が悪くゲイであるというコンプレックスを抱えている弱さ。ナイーブで繊細。片足を引きずるも機械化治療することにも踏み切れず、ゲイバレしてパワハラされて離職したのにパートナーにそれを打ち明けられない。旦那のことは愛しているけれど同性愛者に生まれたくはなかった。彼が自身の苦しみと和解し、己を許し受け入れられるまであと一歩という場所にいる。美形で弱気なくたびれたオジサンほど美味しいものはないですね。いやー、性癖に刺さる。彼のパートナーはどんな素敵な人なんだろう。
でも、この二人はある意味心配ない。大人で生きていく術もあって愛する相手がいる、友人がいる、Qが居なくなり店がなくなってもおそらくやっていけるだろう。
ダイヤにとっては店があった方が生きていくのに楽だとは思うけれど。
しかし、クラブとエースは違う。
彼らはまだ若く、抱えた傷はまだじくじくと血を滲ませ熱を持っている。クラブ=キャットは10年も前からアリスを探し続けていた。恐らくクイーンはアリスが会話するうちにアリスからその情報を得、その上で裏を取ってクラブがアリスを探し続けていたからこそ呼び寄せたのだろう。なにせ10年。少女が大人になる過程で心と体の傷を克服し愛する人と家庭を築いていたとしても不思議ではない歳月だ。アリスのスティグマとも言える彼女は、そのままアリスに拘りアリスを探していた。クイーンはアリスとキャット二人ともに愛して癒そうとしたのだろう。例えお互いに辛かったとしても、きちんと向き合うことで未来へ踏み出せるように。
クイーンはひたすら「愛する」人なのだ。
それが何故かは彼の本名と、過去作品の前世を知っていると理解できる。アサカレンジロウがこんな聖母みたいな爺になるなんてびっくりでしかないわ。
アリスはアセクシャルである自分を「特殊」であり、「愛を知らない自分はロボットと同じく心がないと同義ではないか」とキャットやクイーンの愛に応えられない自分を責める。それに対して「あなたは世界全てを平等に愛しているだけ。それに気づく人間が周囲にいなかっただけ。あなたは愛を知っている存在なのよ」とメッセージするクイーンはもうね。劇中に何故やらないのかと。(それを言うな)
場外乱闘が多すぎなのよ。
舞台上に乗りきれなかった情報がデカすぎてびっくりする。
優しい解釈だな、と思う。愛の反対は憎しみではなく無関心、だから確かに愛に苦しみ続けるアリスは世界に無関心ではあり得ない分、愛を知っていると。
誰にも恋をしないアリスだからこそ、マスクアレイドの店を任せるに相応しいと。
クイーンの愛は本当に広くて深い。
ひとつ、えーそこはどーなのー?と思ったのは。
霜月さんの配信で「ラストシーンでは全員記憶を失ってない」と言われたけれど、キャットがあのアリスに拒絶された夜の記憶を、アリスが忘れてほしいと望んだ声を無視して、記憶を残すだろうか?ということ。
ダイヤとキャットは忘れたいんじゃないかなぁ。
ベティは絶対記憶消されまいとするのはすごくわかるけど。

終わってからずっと、ダイヤのスピンオフが見たい見たいと騒いでおりました。旦那との出会いとか、恋愛とか、足の事情とか、パワハラ上司とか、すごく気になる。
そこにベティも居て欲しい。
ベティとダイヤ、親友になってくれたらいいのにな。
そんなことを思いつつ、アーカイブのアフタートークのベティ「葬ろう!」(ラリアット)で腹筋崩壊しました。
渡邊隆義、マジ最高か。
大好き。
全体を観て、秘匿HOアリのマダミスみたいだな、と思いました。情報量を整理してもう少し分かりやすくしたいところもちらほらありつつ。
でも「溢れる愛」はしっかり伝わった。
あんな店でお酒呑みたいです。

*******************************************
【追記】

ここで終わる予定でしたが、ん?
更に書きたいことあるじゃん!と気づいてしまいました。

霜月紫さんのフラワーちゃんとその演出について。
兎に角、フラワーちゃんが美しい。真っ白な衣装でふんわりカールした髪、ちょっと首を傾げる仕草、足をぶらんぶらんさせるところ。そして、時々見せるお茶目なとこ。ゲップしたり中指立ててみたり。
あ ざ と 可 愛 い。
可愛いが可愛いで可愛い。若い男子が観劇後に言ってたけど声を出すまで本気で女性だと思い込んでたらしいです。そりゃあの美しさですもんね。わかるわ。ベティは色っぽいエロい大人のオンナなんだけど、フラワーちゃんはクソ爺で幼女。お人形を可愛がったり、お花の香りを楽しんでみたり。さらさらさらとマジックで画用紙に「夜露死苦」されたときは「え?フラワーちゃん、昭和の人?」って思ってしまいました。まぁご高齢だからシカタナイネw
ラストに「葬ろう」と声を出した時は驚いた。あれはフラワーではなくクイーンとしての最後の言葉。あの時フラワーはマスターよりも確実に格が上だった。流石、女王様クイーン様フラワー様。でも個人的な好みとしては最後まで声は出さないで欲しかったかな。声が出たことで偶像が地に落ちた感がしてしまった(個人的な感想です)
柱の影のジャックを当て身で追い出したり、ちょいちょい笑わせてくれたけど、一番残ってるのはマスターの頭を抱え寄せてナデナデしてたところかしら。
クイーンを愛したマスターに最後の思い出をあげたのね、と後から見たときホロリと来た。
演出細かいな!と思うのは登場人物たちの出入りの時の芝居。各キャラクターごとに個性があって。あとは台詞の無いときのカウンターで飲んでる面々の楽しそうなとことか。
ベティとエースのじゃんけんとか。マスターのバーボンマシーンとか。入り口でドクターとダイヤが鉢合わせしたりとか。一つ一つは小さいけど積み重なることで意味が出てくる。空気感は好き。でも、あの辺の時間配分でもう少し謎を分かりやすくしといて欲しかったかな。
酒の色の違いは見えなかったし、アリスに手渡したものがなんだったのかも解説聞かないと分からなかったし、舞台だけで配信聞けなかったらわからなかったところが多過ぎてちょっと不完全燃焼。雰囲気で察してね、は演出としては不親切と感じてしまいました。板の上だけで完結してほしかった気はすごくする。
常々「舞台からお客様が受け取ったものが全て。後から色々実はこうでした、って解説するのは無粋」って言う人の舞台を見てるから余計にそう思うのかもしれないけど。誰もが後から出す情報に触れられる訳ではないから。
Q/Aで一番輝くべきは誰か、というところがブレていた。Qもベティもアリスより目立ってはダメだと思う。クライマックスはアリスの正体とその苦悩のはずなのにアリスの見せ方が弱い。この脆い世界でアリスが輝いて見えなかったらそれは戯曲の見せ方が間違ってる気がする。…個人的見解です。

キャストは素晴らしかった。特にベティという安定した存在感が中央にあることで、不安定なキャラクターたちが綺麗におさまってた。(A班はまだ見てないけど) 魅力的だったなぁ。酸いも甘い光も闇も知ってて、包容力があってセクシーで。一番好き。
泣きたいときも心で泣いて、少し悲しげに綺麗な笑顔を見せてくれるベティ。
私もそうだけど、どんなに辛くても泣けない人間っているのよね。ベティもそうなのかな。
どうしても、どうにもならなくてもどんなに辛くても笑っちゃうの。だって、私が泣いたって何にもならない。泣いたところでどうにもならないって悲しいほどに知っているから。泣かないんじゃない。泣きたくても涙が出てこないの。どんなに悲しくても。だから笑う。
ベティは少し私に似てるかも、って思った。
泣かない彼女が一番クイーンの死を悲しんでる。そんな気がしました。


Q/A ネタバレ情報ご報告。
フラワー=Qクイーン
A Ace Alice
B Bety Bernard
C Club Cat
D Diamond Dodo
で、アルファベット配置

ドードー=トウドウミツグ
ベティ=ベルナルド=タジマツトム
ジャック=カネシロユウヤ
マスター=センドウアサミ
クラブ=スズキミミ
アリス=コバヤシアイリス
クイーン=アサカレンジロウ
という本名がある。(裏設定)
はなときずの浅香憐次朗と同一人物か、別世界線かは決められてない。ドクターが35才で死んだ彼を蘇生させたのかもしれない。

Q/A
クイーン/アリス
クエスチョン/アンサー
クイア/アセクシャル

Alice=Ace+li
L= Love  I=I(私)

ドクターとLI-00は別人で二役。ピアノロボは心があってピアノが弾ける機械。
ドクターは医師で人間でLiナンバーの開発者。
ジャックはロボットではなく人間だが、ドクターのLiシリーズの実験体の一人で洗脳的な処置をされているため、LIナンバーが与えられている。
LIの意味は L=Love I=I(私)

ナノマシン入りのドリンクを全員飲んではいるが、光線照射の時に【全員が自分の意志で目を閉じている】ので、ラストシーンでは誰もあの夜を忘れていない。
だが、全員が【自分だけが目を閉じた】と思っているので自分以外にも記憶があるとは思っていない。
照射の時はフラワー以外皆、お客様に背を向けているのでお客様には目を閉じていることはわからない。

霜月さんの配信聞いてまとめました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?