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The outer mission Vol.1 (自称サイエンスライター、無謀にもパラレルワールドでの旅路の歌たちに寄せる)

【本日のお題】
「PARALLEL WORLD  VI 〜Fairy Story  七つノ御伽噺〜」(yucat)(※2)

○発端
「どの属性がお好き?」と、彼女は示したのは、7つのエレメントだった。
すなわち大地、雷、水、火、光、闇、風。
 ……というてもわからないですな。
まずは、このアルバム発売前の予告編、クロスフェード動画を見られよ。
この動画を見て、わたしは当初戸惑った。
天文界にあっては太陽の伝道者との自負(※3)から、太陽はどこ?と聞きかけたが、
……わかりました。わたしは雷の神Zeusどの下僕のなのでしょうと心の中で応えた。
なにしろ、ガッツンガッツンのロックは、好むところだし。

○ゼウスよ、ゼウスとなれ!?
数日後、彼女……yucatさんの発売したてのアルバムを手にした。

大地を歌うときには、息つく暇なく滔々と歌い続け、
風ノ物語では、遍歴を始める前、仲間の少女へそっと呼びかけてもいる。
そして、Zeus(雷ノ物語)では。たたみかけるように、人類へ鉄槌の稲妻を下すのである。

え?きいてないぞ?
……日頃の星空案内などで、ゼウスの言動を知った私たちには、なじみのないお姿である。
……だってさ、白鳥やワシに変化しながら、あんなことやこんなことをして(※4)、妻君のヘーラ様に怒られて、それでも懲りずにまたおうしに姿を変えて(以下略)
と「全知全能の力」を俗っぽく使い続けたと伝わる、あの人がですよ、警告の稲妻を落としてくる、とは。
しかし、ゼウスのすべてを、わたしたちは語っただろうか?
……きっと、わたしたちが断片的に、伝え聞いていたからだろう。そして、それらの物語は、日本で翻訳されたゼウスなのであって、元来神話の語るものとはちがう?

そう、Zeusは天地創生の神ではないという。
もとはといえば、オリュンポス山に住まう雷の神だった。その前半生はたたかいにあけくれ、地上の女性たちと交わりを持ち、という生い立ちがあるという。
彼が何を目指したのかは、私には見えていない。が、神の中で争い、また(おそらくは政略的な理由で)地上でヒトと交わるなかで、「知」「能」を得ていく。それゆえの悲しみ、そしてその能力をでさえ動かない何かに苛立ちは、現世でも雷鳴として稲妻として生きている。

火ノ物語を担うプロメテウスにしても、そう。彼の有名な逸話で、ヒトの文明を象徴し背負いこむこんで、今に伝わる。

アルバムジャケットある魔法陣も、そうしたいまもたぎる7つの属性を結んだ幾何模様が組み込んである(※5)

わたしは、その魔法陣に、自身の日々の思いをを写して見るのかもしれない。
それは、たぶん、ここに収められた曲を聞く、あなたもだろう。

○「天元を制せよ」の罠(かくして妄想は脱線する)
魔法陣で思い出した。
魔法陣もだし、東洋では囲碁もそうだが、盤の上を世界と見なして世界観を表したという
盤に円・正三角形・正方形、そして碁盤の等間隔の格子もそうだが、「真ん中の点」を持っていて、「星(星宿)」は真ん中だけでなく、その周囲に配置している。
世界には真ん中がある……という世界観。

ここで、例え話として囲碁の話となるのをお許し願う。人はなぜキャラを持つことになるのか、という例え話と思ってくだされ。

暦学者でもある安井算哲(二代目)という碁の名手が、
江戸城内、将軍さまの御前で、碁の家元格である本因坊家の宗主と碁を打ったことがとき、ちょっとした事件が起きた。
上下左右対称な碁盤のど真ん中(天元)、その点対称な世界の中心を、真っ先に彼は押さえたのだ
……と書けばカッコ良いい。だが、しょっぱなから余計な手をうった結果、1手遅れで打つ格好になり結局負けてしまった。囲碁は自分の石で囲い込んだ範囲の広さを競うゲーム、だから端から着手する方が効率いい。その理屈を無視したため後手に回った、というのが、わたしの印象。

ご参考……その一戦は、途中下の図のような展開だったそうです。

黒番 安井算哲、白番 本因坊道策
1670年の御城碁より(※6)

最初に打った10の十の黒石が、
どこにもつながることができず泣いている

「初手天元」というこの手……以降350年ほど、日本でも囲碁は盛んにうたれているが、プロの対局でこの手を打たれたのは、戦前までは2度しかなかったという(※7)。
世界のど真ん中に腰を据え、全ての属性(知・能・人柄……)を取り込むしては、世界は広すぎる、ということだろうか。

魔法陣でいえば、中心には常には安住できず、周囲の円(陣地)に身をおくといえるだろうか。

これは、人格の偏り?尖ったキャラを目指す……そんな戦略的なものか?……いや、他人との交わりの中では、どれかの人柄を露わにして、生きることになる。

もちろん、そのときには「こう生きたい」と選べるときもある。時には「そんなはずでは」と嘆く時もあった、とわたしなどは、遠い目で振り返ってしまう。
……ま、人生、色々あるやね〜。
と、一瞬遠い目をしそうになる、冬の彼は誰時。

いや、私のことはどうでもいいのだった。

しかし、魔法陣の中をさまよい続けても、意図してある場所を、指針を、技能を取りに行くのも、人としての特権ともいえる。
そのとき、魔法陣は、きっと、羅針盤にもなってくれる。

そう気づいて、あらためてつくり手のyucatさんの旅路へおもいをめぐらすのであった。

○終局〜地図を畳んで、卓袱台返し〜
以上、yucatさんのアルバム「parallel kingdom VI」の音楽を聞き、ジャケットを飾る魔法陣を見て、頭に思い浮かぶことを書いた。

だが、頭に浮かぶものとは違う衝動が、CDの再生ボタンをおすたび、心にあふれる。

実を言うと、このCDを受け取ったのは、去年(2022年)12/18、名古屋でのRYTHEM  x 新津由衣 x yucatの二人三組によるトライアングルコンサート(※8)だった。

そのコンサートで、生の歌唱を聴くうち、初お目見えのわたしは思わずGo go!とタテノリ状態となった。
──Don't think.Feel.という心境。
なのに、両隣の人をみると、わりに静かに聞いておられる。
「振り上げた拳のもって行き場がない」
を文字通りに再現した私。

帰宅後、あらためてCDで聞くと、
確かに、Go go!てのはちょっと違うよな、とニガワライする。
ニガワライしているそばから、それでも気づけば身体を揺らしている。
忘れてはいけない、これは、yucatさんが旅の途中に紡いだ、うたであり、おとぎ話でもあったのだ。
彼女の探し求めるものは、どこに、どんな姿であるのだろうか、
これだけ書き連ねながら、実のところ、まだ私には見えきっていない。
しばらくは、そのビートとメロディとに、心を委ねようと思う。

つまりは、その程度に、誤解と我田引水をはらむ初心者のレビューでありました。

書いてごめんなさい、です。
ということで、今後は、このアルバムにある言葉を戒めとします。まさに痛いです、耳痛いです。

The only true wisdom is knowing you know nothing.
(「雷ノ物語 Zeus」の歌詞より)
             ─ 了 ─

【引用元とか参考とかギャグ注とか】
※1 題名が聖飢魔Ⅱのアルバムタイトルを丸写し。このことからわかるように、著者は悪魔の信者でもありました。

※2 アルバムの詳細、ご購入はこちらから

※3 ただし未公認。誰に公認してもらえばいいのかもわかりません。

※4 このあたりのお話は、各地プラネタリウムの解説で出てくるはず。とりわけ、夏に彼の武勇伝(悪行三昧)はよく取り上げられますので、お楽しみに。
ただ、プラネタリウムの解説は、お子様も聞いているので、オブラートに包んである。よりディープには、「R18 大人のためのプラネタリウム」て番組で話されるのだとか。

※5 yucatどののツイート(2022/12/6 20:30)より。

※6 HP囲碁堪能院に公開されている御城碁の棋譜にならって、60手目まで並べたもの。天元の黒が孤立したままなのが、よくわかる。
ちなみに、この対局は、冲方 丁さんの小説「天地明察」で描写されているそうですが、私あいにく未読なんです。天文仲間も当時読んでいる人多かったのに、不勉強やわ。

※7 林海峰先生の著書による。10年ほど前図書館でコピーとった一節にあるのだが、著書名を控えておらず不明なんです。
そのもう一つの例が、経緯が面白く、また戦略としてもっともなものなので、別な機会があれば描きたいな。

※8 RYTHEM活動再開後、最初の有観客のホールツアー、しかも初日でした。
11年の活動休止中をまちかねてた方が、遠方からも来られてた様子。
どのようなライブだったかは、日刊エンタメクリップさんの記事から。


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