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118F73、118F74、118F75

次の文により73、74、75の問いに答えよ。
70 歳の男性。激しい胸痛のため家族に伴われて救急車で搬入された。
現 症 : 意識レベルは JCSⅡ-10。心拍数 104/分、整。血圧 68 mmHg(触診法)。呼吸数 26/分。SpO2 は測定不能(リザーバ付マスク 10 L/分 酸素投与下)である。心音は奔馬調律である。呼吸音は全胸部に coarse crackles を聴取する。皮膚は湿潤し、四肢末梢の著明な冷感を認める。
検査所見 : 心電図を別に示す。

第118回医師国家試験

118F73

研修医、指導医および看護師の 3 人が救急外来で夜間勤務をしていた。研修医が初期対応をおこなった。
 研修医が最も優先すべき対応はどれか。
a  家族へ予後の説明
b  家族からの病歴聴取
c  指導医への応援依頼
d  看護師と治療方針の確認
e  急変時の気管挿管の同意取得

第118回医師国家試験

正解:c

解説

本症例は、激しい胸痛、ショック状態、奔馬調律、呼吸不全の所見から、急性心筋梗塞によるポンプ失調が強く疑われる重篤な状態です。研修医単独での対応は困難であり、指導医への応援依頼を最優先すべきです。

考察

家族への予後説明や病歴聴取、看護師との治療方針の確認、気管挿管の同意取得は、いずれも重要ですが、本症例のような重篤な状態では、指導医の支援のもとで速やかに対応する必要があります。研修医単独での判断は避けるべきです。

118F74

以下の追加情報が得られた。
現病歴 : 数日前から歩行中に圧迫感をともなう胸痛があった。安静で改善するため様子をみていたが、本日就寝後に激しい胸痛が出現し持続しているため家族が救急車を要請した。
既往歴 : 糖尿病、脂質異常症、高血圧症で内服加療中である。
生活歴 : 喫煙は 30 本/日であったが、60 歳から禁煙している。飲酒は機会飲酒。
家族歴 : 兄が狭心症で冠動脈バイパス術を受けている。
検査所見 : 血液所見:赤血球 442 万、Hb 13.0 g/dL、Ht 41%、白血球 12,000、血小板 25 万。血液生化学所見:総蛋白 6.4 g/dL、アルブミン 3.3 g/dL、尿素窒素 28 mg/dL、クレアチニン 1.5 mg/dL、血糖 198 mg/dL、Na 137 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 97 mEq/L、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉832 pg/mL(基準 18.4 以下)。心筋トロポニン T 迅速検査陽性。
 引き続き心臓カテーテル検査が施行された。右冠動脈造影像(A)と左冠動脈造影像(B)を別に示す。
 この患者の血行動態の変化で正しいのはどれか。
a  心拍出量の増加
b  左室拡張末期圧の増加
c  体血管抵抗の減少
d  肺動脈楔入圧の減少
e  混合静脈血酸素飽和度の上昇

第118回医師国家試験

正解:b

解説

本症例は、急性心筋梗塞によるポンプ失調から、左室拡張末期圧の増加が最も考えられます。心筋虚血により左室のコンプライアンスが低下し、左室拡張末期圧が上昇します。これにより、肺うっ血や肺水腫をきたし、呼吸不全や低酸素血症を呈します。

考察

心拍出量は、ポンプ失調により減少します。体血管抵抗は、交感神経系の活性化により増加します。肺動脈楔入圧は、左室拡張末期圧の増加を反映して上昇します。混合静脈血酸素飽和度は、心拍出量の低下により減少します。

118F75

冠動脈造影に引き続いて、機械的補助循環下で責任病変の冠動脈に対して緊急経皮的冠動脈インターベンション〈PCI〉を実施後、心臓リハビリテーションが開始された。
 心臓リハビリテーションで適切なのはどれか。
a  退院後も継続する。
b  急性期は実施しない。
c  無酸素運動は併用しない。
d  胸部症状が増悪しても継続させる。
e  病棟では医師の同伴が必須である。

第118回医師国家試験

正解:a

解説

心臓リハビリテーションは、急性期から開始し、退院後も継続することが重要です。急性期は、病態が安定した段階で、ベッドサイドでの座位や立位、室内歩行から開始します。運動強度は、症状や血行動態をモニタリングしながら、徐々に増加させます。退院後は、外来での監視型リハビリテーションや、在宅での運動療法を継続します。

考察

急性期からリハビリテーションを開始することで、廃用症候群の予防、心機能の改善、再発予防に寄与します。無酸素運動は、レジスタンストレーニングとして併用することで、筋力の維持・向上に役立ちます。胸部症状が増悪する場合は、運動を中止し、原因検索や治療方針の再検討が必要です。病棟でのリハビリテーションは、看護師や理学療法士が中心となって実施し、医師は必要に応じて関与します。

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