見出し画像

36歳の女性。右上腕の皮疹を主訴に来院した。約10年前から右上腕に長径3mmほどで平坦な皮疹が出現した。約3か月前から次第に拡大し隆起してきた。2週間前から出血するようになった。右上腕に18×16mmの褐色結節を認める。右腋窩に径1cmのリンパ節1つを触知する。右上腕の写真(A)とダーモスコピー像(B)を別に示す。
診断はどれか。
a. Bowen病
b. 悪性黒色腫
c. 色素性母斑
d. 日光角化症
e. 脂漏性角化症

第118回医師国家試験

正解:b

解説

a. Bowen病は表皮内癌の一つであり、境界明瞭な紅斑や褐色斑を呈する。悪性黒色腫との鑑別を要するが、本症例の臨床所見からは悪性黒色腫がより疑われる。
b. 本症例は36歳女性の右上腕に生じた皮疹である。10年前から存在する色素性病変が最近急速に拡大、隆起し、出血をきたしている。皮疹は18×16mmの褐色結節であり、右腋窩リンパ節腫脹を伴う。これらの所見は悪性黒色腫の特徴であり、本症例の診断として最も適切である。悪性黒色腫は、色素細胞(メラノサイト)由来の悪性腫瘍であり、急速な拡大や結節形成、出血などを呈する。リンパ行性、血行性転移をきたしやすく、早期発見、早期治療が重要である。
c. 色素性母斑は良性のメラノサイト性病変であり、一般的に経過は緩徐で急速な変化は認めない。本症例のような急速な拡大、隆起、出血などは悪性黒色腫を示唆する所見である。
d. 日光角化症は慢性的な紫外線曝露により生じる前癌病変であり、境界明瞭な紅斑や褐色斑を呈する。本症例の臨床所見からは悪性黒色腫がより疑われる。
e. 脂漏性角化症は高齢者の顔面や体幹に好発する角化性病変であり、褐色~黒色の丘疹や斑を呈する。本症例の年齢、部位、臨床所見からは悪性黒色腫がより疑われる。

考察

悪性黒色腫は早期発見、早期治療が予後を大きく左右する疾患である。既存の色素性病変の急速な拡大、隆起、色調変化、出血などは悪性黒色腫を示唆する所見であり、このような病変を認めた場合は速やかな皮膚科受診が必要である。確定診断には皮膚生検が必須であり、病理組織学的評価により診断、病期分類を行う。治療は外科的切除が中心となるが、進行例ではインターフェロンや分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などの薬物療法も行われる。皮膚科、形成外科、腫瘍内科など多職種によるチーム医療が重要である。また、悪性黒色腫の早期発見のためには、一般市民に対する啓発活動も必要不可欠である。自己検診の重要性を周知し、怪しい病変を見落とさないようにすることが肝要である。

=============================
【質問や感想、ご相談の募集について】
このブログを読んで感じたこと、質問したいこと、相談したいことなど、どんなことでも歓迎します。
特に期限は設けていませんので、過去の記事に関するものでも大丈夫です。
他の読者の方にも参考になりそうな内容を優先的に取り上げさせていただきますが、できるだけたくさんの方のお声にお応えできるよう努めます。
ご相談いただいた内容は、プライバシーに十分配慮した上で、このブログ等で紹介させていただくことがあります。
なお、ご自身の体調に関する事や医療相談はご遠慮ください。
体調に不安のある方は、医療機関の受診をおすすめします。

ご相談・ご質問はこちらのアドレスまでお寄せください。
dr.kousei.taro@gmail.com

みなさまからのメッセージをお待ちしております!

作者:厚生太郎
Twitter : https://twitter.com/kosei_taro
質問受付: dr.kousei.taro@gmail.com

=============================
【免責事項】
本ブログの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、著者及び関係者本ブログは医療行為の勧誘や医療助言を目的としたものではありません。
本ブログの情報を利用して行った医療行為等により損失が生じても、著者及び関係者は一切の責任を負いません。=============================

#医師
#医学部
#国試
#医師国家試験
#医師国家試験対策
#医師国家試験解説
#第118回医師国家試験