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118C63,118C64,118C65

次の文により63、64、65の問いに答えよ。
 55 歳の男性。便秘を主訴に来院した。
現病歴 : 3 か月前に会社内で配置転換があり勤務中にトイレに行きにくくなった。元々、便秘がちであり便が硬くなった。2 週間前から腹部膨満感が出現したため受診した。排便回数は 3 日に 1 回でいきむことなく排便しているが、便は兎糞状である。
既往歴 : 45 歳から高血圧症で降圧薬を服用している。今まで大腸がん検診を受けていない。
生活歴 : 喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。会社員で経理の仕事をしている。海外渡航歴はない。
家族歴 : 父が 74 歳時に大腸癌で手術。
現 症 : 意識は清明。身長 165 cm、体重 68 kg(体重の増減はない)。体温 36.4℃。脈拍 72/分、整。血圧 136/80 mmHg。呼吸数 10/分。SpO2 97%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内にアフタを認めない。甲状腺と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で腸雑音の亢進・減弱を認めない。直腸診で血液を認めず、明らかな腫瘤を触知しない。下腿に浮腫を認めない。
検査所見 : 尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球 468 万、Hb 13.9 g/dL、Ht 42%、白血球 8,300、血小板 21 万。血液生化学所見:総蛋白 7.5 g/dL、アルブミン 3.9 g/dL、総ビリルビン 0.9 mg/dL、直接ビリルビン 0.4 mg/dL、AST 22 U/L、ALT 18 U/L、LD 172 U/L(基準 124~222)、ALP 83 U/L(基準 38~113)、γ-GT 32 U/L(基準 13~64)、アミラーゼ 95 U/L(基準 44~132)、尿素窒素 12 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dL、血糖 98 mg/dL。CRP 0.2 mg/dL。胸部エックス線写真では心胸郭比 46%、肺野に異常を認めない。腹部エックス線写真で小腸ガスや鏡面像を認めない。まず便潜血反応を行うこととした。

第118回医師国家試験

118C63

この患者の大腸に何らかの病変がある検査前確率(事前確率)を 20%としたとき、便潜血反応陽性であった場合の検査後確率に最も近いのはどれか。
 ただし、便潜血反応の感度は 80%、特異度は 90%とする。
a  33%
b  53%
c  57%
d  67%
e  97%

第118回医師国家試験

正解:d

解説

  • 検査後確率は、ベイズの定理を用いて計算することができる。

  • ベイズの定理では、検査前確率、感度、特異度から、検査後確率を計算する。

  • 検査後確率 = (感度 × 検査前確率) ÷ {(感度 × 検査前確率) + (1 - 特異度) × (1 - 検査前確率)}

  • 本問題では、検査前確率 20%、感度 80%、特異度 90%が与えられている。

  • これらの値を上記の式に代入すると、検査後確率は約 66.7%となる。

  • 選択肢の中で、この値に最も近いのは d の 67%である。

考察

  • 検査前確率は、検査を行う前の時点で、ある疾患に罹患している確率を示す。

  • 検査前確率は、患者の症状や背景因子などから総合的に判断される。

  • 感度は、ある疾患に罹患している患者が検査で陽性となる確率を示す。

  • 特異度は、ある疾患に罹患していない患者が検査で陰性となる確率を示す。

  • 検査後確率は、検査結果が得られた後の時点で、ある疾患に罹患している確率を示す。

  • 検査後確率は、検査前確率、感度、特異度から計算することができる。

  • 検査後確率が高いほど、その疾患に罹患している可能性が高いことを示す。

  • 検査後確率は、検査結果の解釈や次の検査・治療方針の決定に重要な情報となる。

118C64

便潜血反応陽性であったため下部消化管内視鏡検査を行うこととした。
 この患者への検査当日の前処置で適切なのはどれか。
a  下半身を除毛する。
b  肛門周囲を消毒する。
c  腸管洗浄液を内服する。
d  バリウムを内服する。
e  ホルマリンを注腸する。

第118回医師国家試験

正解:c

解説

  • 下部消化管内視鏡検査を行う際は、腸管内を十分に洗浄し、観察の妨げとなる便汚染を除去する必要がある。

  • このため、検査前に腸管洗浄液を内服し、大腸の前処置を行う。

  • 腸管洗浄液には、ポリエチレングリコール電解質溶液やクエン酸マグネシウム溶液などがある。

  • 腸管洗浄液を内服することで、大腸内の便が排出され、内視鏡観察が容易となる。

  • 下半身の除毛や肛門周囲の消毒は、下部消化管内視鏡検査の前処置として一般的ではない。

  • バリウムやホルマリンの内服や注腸は、下部消化管内視鏡検査の前処置としては適切ではない。

考察

  • 下部消化管内視鏡検査は、大腸の観察に有用な検査法である。

  • 下部消化管内視鏡検査では、大腸癌やポリープ、炎症性腸疾患などの診断が可能である。

  • 適切な前処置を行うことで、大腸の観察が容易となり、病変の見落としを防ぐことができる。

  • 前処置が不十分な場合、便汚染により病変の観察が困難となり、再検査が必要となることがある。

  • 前処置の方法は、患者の状態や使用する腸管洗浄液の種類などにより異なる。

  • 患者に前処置の重要性を説明し、適切な方法で実施してもらうことが重要である。

  • また、前処置によっては、電解質異常や脱水などの副作用が生じる可能性がある。

  • 患者の状態に応じて、適切な腸管洗浄液の選択と副作用の予防・対処が必要である。

118C65

下部消化管内視鏡の S 状結腸像(A~D)を別に示す。
 この患者に行われた内視鏡治療はどれか。
a  異物除去術
b  ステント留置
c  静脈瘤硬化療法
d  ポリペクトミー
e  内視鏡的粘膜下層剝離術〈ESD〉

第118回医師国家試験

正解:d

解説

  • 大腸癌の治療は、病期に応じて手術療法、化学療法、放射線療法などを組み合わせて行う。

  • 本症例では、腹部造影 CT で遠隔転移を認めておらず、比較的早期の大腸癌と考えられる。

  • このような局所進行大腸癌では、手術療法が第一選択となる。

  • S状結腸癌では、S状結腸切除術が推奨される。

  • S状結腸切除術では、S状結腸を切除するとともに、リンパ節郭清を行う。

  • リンパ節郭清は、リンパ節転移の有無を評価し、転移があれば切除することで、再発リスクを低下させる。

  • 直ちに化学療法を開始することは一般的ではない。

  • 血管内治療は、大腸癌の標準治療ではない。

考察

  • 大腸癌の治療方針は、病期、腫瘍の局在、患者の全身状態などを総合的に判断して決定する。

  • 局所進行大腸癌では、手術療法が第一選択となる。

  • 手術療法では、腫瘍の局在に応じて、結腸切除術や直腸切除術などを行う。

  • リンパ節郭清は、再発リスクを低下させるために重要である。

  • 手術後の病理診断で、リンパ節転移や脈管侵襲などの所見があれば、補助化学療法を考慮する。

  • 遠隔転移を有する進行大腸癌では、化学療法が第一選択となる。

  • 大腸癌の治療では、手術療法、化学療法、放射線療法などを適切に組み合わせることが重要である。

  • 患者の全身状態や希望を考慮しつつ、最適な治療方針を選択することが求められる。

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