118C72,118C73,118C74
118C72
正解:a
解説
「意識障害」+「著明な高血糖」から、鑑別すべきは、糖尿病性ケトアシドーシスもしくは、高血糖高浸透圧症候群(旧:非ケトン性高浸透圧昏睡)である。
高血糖高浸透圧症候群(旧:非ケトン性高浸透圧昏睡)は、ケトーシスを認めることも有り、また、昏睡を認めることは比較的稀(本問では稀な状態が出題されている)なため、病名が整理された。
病態からのメインの鑑別は、酸塩基が破綻した状態or高浸透圧による脱水という面からアプローチしたい。
本問では、軽度の発熱、心拍数上昇より、脱水を疑い、採血データも脱水と矛盾しない(ヘマトクリット高値、尿素窒素/クレアチニン比が25以上、尿酸値7mg/dl以上など)ため、主病態として捉える。
仮に糖尿病性ケトアシドーシスと診断させたいのであれば、やはり、動脈血ガス分析の結果を提示(113D23)もしくは、尿ケトン陽性の所見が必要であろう。
a. 眼球陥凹
高血糖に伴う浸透圧利尿により、脱水が生じる。眼球陥凹は脱水の身体所見の一つであり、本症例で認める可能性が高い。
b. 手指振戦
手指振戦は、甲状腺機能亢進症やパーキンソン病などで認められる症状である。
本症例では、手指振戦を示唆する所見は乏しい。
c. 下腿の圧痕性浮腫
下腿の圧痕性浮腫は、うっ血性心不全や低アルブミン血症などで認められる症状である。
本症例では、心不全や低アルブミン血症を示唆する所見は乏しい。
d. 呼気のアセトン臭
呼気のアセトン臭は、ケトアシドーシスで認められる症状である。
本症例では、尿ケトン体は陰性であり、ケトアシドーシスを示唆する所見に乏しい。
e. 足母趾基部の発赤腫脹
足母趾基部の発赤腫脹は、痛風発作で認められる症状である。
本症例では、痛風発作を示唆する所見は乏しい。
考察
治療の基本は、輸液による脱水の補正とインスリン投与による血糖コントロールである。
急激な血糖低下は避ける必要があり、輸液とインスリン投与のバランスが重要である。
意識障害を伴う場合は、気道管理や感染症の評価なども必要である。
高齢者では、症状が非典型的であることも多く、注意が必要である。
本症例のように、高血糖を放置していた患者では、感染症などを契機に高血糖高浸透圧症候群を発症することがある。
糖尿病患者では、定期的な血糖コントロールと感染症の予防が重要である。
「眼球陥凹」は、眼窩吹き抜け骨折(104A53)やHorner症候群(102B57)の徴候としては有名である。脱水による眼球陥凹は、初出題のテーマであったため、困惑した学生も多かったのではないだろうか。
少しマニアックな徴候としては、乳癌の眼窩転移も眼球陥凹が認められる。
118C73
正解:341
解説
血清浸透圧は、以下の計算式で求められる。
血清浸透圧(mOsm/L)= 2 ×Na(mEq/L)+ 血糖(mg/dL)÷ 18 + BUN(mg/dL)÷ 2.8
本症例では、Na 137 mEq/L、血糖 936 mg/dL、尿素窒素(BUN)42 mg/dLである。
これらの値を代入すると、血清浸透圧 = 2 × 137 + 936 ÷ 18 + 42 ÷ 2.8 = 341 mOsm/L となる。
高血糖による血清浸透圧の上昇は、高浸透圧血症と呼ばれる状態であり、脱水を引き起こすこともある。意識障害や痙攣などの神経症状も出る可能性があるため、治療には輸液とインスリン投与が必要である。また、脳浮腫を避けるためにはゆっくりとした血糖コントロールが求められる。
考察
血漿浸透圧の式は、古くは教科書的に2×(Na+K)と生理学の本には記載されてきた。しかし、国家試験では、2×Naを採用している。
107E69
109H35
114B3を参照されたい。
当初は計算式に、誘導が記載されていたが、受験生のレベル上昇に伴い、既知のこととして、記載が省略されるようになってきた。
他の計算問題に対しても同様の対策が必要であろう。
118C74
正解:a
解説
顕著に減少した体液量の是正,電解質の補正,および血糖の調整である.体液補正は生理食塩液から開始し,血清Na値などを指標に適宜変更しながらおおむね5~6Lの補充が必要となる.心不全や腎機能低下症例では輸液量を適宜調整する.また高浸透圧に伴い横紋筋融解症などが生じる場合など,持続緩徐式血液ろ過などが必要な場合もある.
体液量補正に伴って血糖も~100mg/dL/時で低下することが多いが,顕著な高血糖も存在するためインスリンの持続静脈内投与を開始する.インスリン開始に伴って,Kの低下にも注意する.またリフィーディング症候群(長期間栄養障害が続いている患者に積極的な栄養補充を行うことにより生じる,低P,低Kなどを主体とする致死的になりうる代謝失調)のハイリスクであり,治療開始時にビタミンB1 の補充も考える必要がある.P,Mgの評価も行う.
原則,血糖は1時間ごと,電解質は2時間ごとにチェックする.
a. Na+:154 mEq/L、K+:0 mEq/L、Cl-:154 mEq/L、Lactate-:0 mEq/L、ブドウ糖:0%
いわゆる「生理食塩液」である。
高血糖高浸透圧症候群では、脱水の補正が重要であり、生理食塩液の投与が適切である。
ただし、高血糖に対してインスリンを投与するため、輸液にブドウ糖を含む必要はない。
カリウムは、インスリン投与により細胞内へ移動するため、補充が必要な場合がある。
b. Na+:84 mEq/L、K+:20 mEq/L、Cl-:66 mEq/L、Lactate-:20 mEq/L、ブドウ糖:3.2%
KCLと乳酸リンゲル液を混合した組成に近い。
高血糖高浸透圧症候群では、カリウムの補充が必要な場合があるが、この組成では濃度が高すぎる。
また、ブドウ糖濃度も高く、高血糖を助長する可能性がある。
c. Na+:35 mEq/L、K+:20 mEq/L、Cl-:35 mEq/L、Lactate-:20 mEq/L、ブドウ糖:4.3%
カリウム濃度が高く、高カリウム血症を引き起こす可能性がある。
また、ブドウ糖濃度も高く、高血糖を助長する可能性がある。
d. Na+:30 mEq/L、K+:0 mEq/L、Cl-:20 mEq/L、Lactate-:10 mEq/L、ブドウ糖:4.3%
低ナトリウム、高ブドウ糖の輸液である。
高血糖高浸透圧症候群では、ナトリウムの補充が必要であり、この組成では不適切である。
また、ブドウ糖濃度も高く、高血糖を助長する可能性がある。
e. Na+:0 mEq/L、K+:0 mEq/L、Cl-:0 mEq/L、Lactate-:0 mEq/L、ブドウ糖:5.0%
いわゆる「5%ブドウ糖液」に相当する組成である。
高血糖高浸透圧症候群では、電解質の補充が必要であり、この組成では不適切である。
また、高血糖に対してインスリンを投与するため、輸液にブドウ糖を含む必要はない。
高血糖高浸透圧症候群の初期輸液では、生理食塩液が適切である。
脱水の補正とナトリウムの補充が重要であり、生理食塩液はそれに適した組成である。
ブドウ糖を含む輸液は、高血糖を助長する可能性があるため、避けるべきである。
考察
高血糖高浸透圧症候群の治療では、輸液とインスリン投与のバランスが重要である。
輸液は、脱水の補正とナトリウムの補充を目的に行う。
一方、インスリン投与は、血糖を低下させるとともに、カリウムを細胞内へ移動させる作用がある。
そのため、輸液とインスリン投与を並行して行う際は、血糖値と電解質のモニタリングが重要である。
特に、カリウムは、インスリン投与により低下しやすいため、注意が必要である。
ただし、初期輸液では、カリウム濃度の高い輸液は避けるべきである。
カリウムの補充は、尿量が確保され、血清カリウム値を確認しながら行うのが安全である。
また、輸液とインスリン投与により、血糖値や浸透圧が急激に低下することで、脳浮腫を引き起こす可能性がある。
そのため、血糖値や浸透圧の補正は、ゆっくりと行う必要がある。
具体的には、血糖値を1時間あたり50~100 mg/dL程度、浸透圧を1日あたり10~20 mOsm/L程度の速度で低下させるのが目安である。
本症例では、生理食塩液の投与とインスリン投与を並行して行いながら、慎重にモニタリングを行うことが求められる。
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