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骨盤外傷を疑う患者の診察で誤っているのはどれか。
a. 血圧変化を確認する。
b. 下肢脚長差を確認する。
c. 骨盤周辺の打撲痕を確認する。
d. 外尿道口からの出血を確認する。
e. 背部の外傷は側臥位にして確認する。

第118回医師国家試験

正解:e

解説

骨盤外傷を疑う患者の診察では、全身状態の評価と局所の詳細な観察が重要である。選択肢の中で誤っているのは、「背部の外傷は側臥位にして確認する」である。
a. 血圧変化を確認する:骨盤外傷では出血による血圧低下を伴うことがあるため、バイタルサインのモニタリングが重要である。
b. 下肢脚長差を確認する:骨盤骨折では下肢の脚長差や回旋変形を伴うことがあり、これを確認することは診断の手がかりとなる。
c. 骨盤周辺の打撲痕を確認する:骨盤外傷では骨盤周囲の打撲痕や皮下出血を認めることがあり、外力の方向や強さを推測する上で重要である。
d. 外尿道口からの出血を確認する:骨盤骨折に伴う尿道損傷では、外尿道口からの出血を認めることがある。
e. 背部の外傷は側臥位にして確認する:背部の外傷を観察する際は、仰臥位のまま慎重にログロールを行い、背部を直視下に観察するのが原則である。側臥位にすると、骨盤骨折の転位を助長する恐れがある。
以上より、骨盤外傷患者の診察において、「背部の外傷は側臥位にして確認する」は誤りである。

考察

骨盤外傷は、高エネルギー外傷に伴って発生することが多い。交通事故、転落事故、圧挫事故などが主な原因である。骨盤骨折では、大量出血や臓器損傷を合併することがあり、致死率が高い。
骨盤外傷が疑われる患者では、ABCDEアプローチに基づいた初期評価と全身管理が重要である。出血性ショックに対する輸液・輸血療法、骨盤臓器損傷に対する緊急処置などを迅速に行う必要がある。また、骨盤骨折の整復と固定は、出血のコントロールと臓器損傷の予防に重要である。
診察では、全身状態の評価とともに、骨盤の視診、触診、打診を丁寧に行う。骨盤の安定性や変形、圧痛、皮下出血などを確認し、骨折の有無や病態を推測する。直腸診や膣診により、直腸・膣壁の損傷や血腫の有無を評価する。また、尿道損傷の有無を確認するため、導尿は慎重に行う。
画像検査としては、単純X線撮影、CT検査、血管造影などが用いられる。単純X線撮影では、骨盤骨折の有無や型を評価する。CT検査では、骨折の詳細や臓器損傷の有無を評価する。血管造影では、活動性出血の有無や部位を同定し、塞栓術による止血を行うことができる。
骨盤外傷の治療では、多職種による協調的アプローチが不可欠である。救急医、整形外科医、放射線科医、血管外科医などが連携し、患者の全身状態と局所の損傷に応じた適切な治療を提供する必要がある。また、リハビリテーション科や精神科とも協働し、長期的な機能回復と心理的サポートを図ることが重要である。
骨盤外傷は、初期対応が予後を大きく左右する緊急度の高い外傷である。医療者は、その病態と治療原則を十分に理解し、迅速かつ適切な診療を提供できるよう備えておく必要がある。また、予防医学の観点から、交通安全対策や労働災害対策などにも積極的に関与していくことが求められる。

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