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34 歳の男性。健診で胸部異常陰影を指摘され来院した。今までに胸部異常陰影を指摘されたことはなく、咳と痰の症状はない。体温 35.9℃。脈拍 64/分、整。血圧 132/84 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2 98%(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。胸部造影 CT を別に示す。
最も考えられるのはどれか。
a  胸腺腫瘍
b  胸膜中皮腫
c  成熟奇形腫
d  悪性リンパ腫
e  神経原性腫瘍

第118回医師国家試験

正解:e

解説

本症例は、健診で偶発的に発見された縦隔腫瘤である。胸部造影CTでは、右後縦隔に境界明瞭な腫瘤影を認める。椎体に接しており、脊髄神経由来の腫瘍が疑われる。胸部症状は認めておらず、無症状で経過している。これらの所見から、神経原性腫瘍が最も考えられる。
a. 胸腺腫瘍は、前縦隔に好発する縦隔腫瘍である。本症例の腫瘤は後縦隔に存在しており、胸腺腫瘍は考えにくい。
b. 胸膜中皮腫は、胸膜原発の悪性腫瘍であり、石綿曝露が主な原因である。CTでは胸膜の不整な肥厚や胸水貯留を認めることが多い。本症例では、胸膜の異常所見を認めておらず、胸膜中皮腫は考えにくい。
c. 成熟奇形腫は、三胚葉成分を含む先天性腫瘍であり、縦隔では前縦隔に好発する。CTでは脂肪、軟部組織、石灰化などの混在した像を呈する。本症例の腫瘤は後縦隔に存在し、内部は均一であり、成熟奇形腫は考えにくい。
d. 悪性リンパ腫は、リンパ組織由来の悪性腫瘍であり、縦隔にも発生しうる。CTでは軟部組織濃度の腫瘤影を呈することが多い。本症例では、リンパ節腫大や他部位の病変を認めておらず、悪性リンパ腫は考えにくい。
e. 神経原性腫瘍は、脊髄神経や交感神経由来の腫瘍であり、後縦隔に好発する。CTでは境界明瞭な腫瘤影を呈し、椎体に接することが多い。本症例の画像所見は、神経原性腫瘍に合致する。

考察

縦隔腫瘍は、縦隔に発生する腫瘍性病変の総称である。発生部位により、前縦隔、中縦隔、後縦隔に分類される。前縦隔では胸腺腫瘍、胚細胞性腫瘍、リンパ腫などが多く、中縦隔では気管支原性嚢胞、リンパ管腫などが多い。後縦隔では神経原性腫瘍が最も多く、全縦隔腫瘍の約20%を占める。神経原性腫瘍は、脊髄神経や交感神経由来の腫瘍であり、良性腫瘍と悪性腫瘍がある。良性腫瘍では、神経鞘腫、神経線維腫、神経節細胞腫などがある。悪性腫瘍では、悪性末梢神経鞘腫瘍、悪性リンパ腫などがある。神経原性腫瘍は、無症状で経過することが多く、健診や他疾患の精査中に偶発的に発見されることが多い。有症状例では、腫瘍の局在による症状(胸痛、咳嗽、呼吸困難など)や神経学的症状(放散痛、知覚障害、筋力低下など)を呈する。診断には、画像検査が有用であり、CTやMRIで特徴的な所見を呈する。確定診断には、経皮的針生検や胸腔鏡下生検による病理組織学的検査が必要となる。治療は、良性腫瘍では経過観察または外科的切除が選択される。悪性腫瘍では、外科的切除に加えて、化学療法や放射線療法が行われる。予後は、腫瘍の種類や進行度により異なるが、良性腫瘍では一般的に良好である。縦隔腫瘍は、比較的稀な疾患であるが、健診などで偶発的に発見されることがある。特に後縦隔の腫瘤では、神経原性腫瘍を考慮する必要がある。適切な画像検査と病理組織学的検査により、確実な診断と治療方針の決定が可能である。

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